16話 放て、究極魔法!
「やるしか……ないわね」
僕のせいで奴との戦いはもう避けられなくなってしまった。
カナリアは【ローレライ】を握る力を強め、覚悟を決める。出口が塞がれたとなれば残る道は……奴の討伐のみ。
推奨は隙を見つけて逃げることだが、それは難しい。
グランダラスという魔物の特徴として魔物のくせに知能がそれなりに高いことが挙げられる。「逃がさない」と決めればそのように上手く立ち回ることができる魔物なのだ。
大剣という「道具」が使えるのもそのおかげである。グランダラスは相手から奪った武器でも戦える珍しい魔物。あの大剣はコールドが与えたものだろう。
だがアスト達の前に立っているグランダラスは通常の個体よりも体が異様に大きかった。
これは周りにいる他に飼っていた魔物を捕食したせいだと考えられる。しかし、そんな個体はまだ確認されていない。未確認のエラーモンスターだ。
(いくらなんでも魔物を食べて大きくなるだなんて聞いたことないわよ……。もしそうだとしても、どれだけの命を喰らってきたっていうの……?)
食べて大きくなる。これに納得ができたとしてもどれほど食べてきたんだという謎が生まれる。
魔物が魔物を食うという現象はそこまで珍しくはない。それでも体の肥大化は報告されていない事例。普通に食べているだけではこんな異常進化は起こらない。
だがすぐに答えを得た。アストが「それ」を見つける。
「カナリア…あれって、メイド服じゃ……」
「え……」
魔物の死骸、血だらけの檻、倒れている1人の女性…………以外にもこの空間にあった「それ」。
「それ」とは……元は真っ白であるはずなのに真っ赤になってボロボロに千切れていた、その倒れている女性も着ているエプロンドレスだった。
そしてその数が……30は超えている!
「まさか……このグランダラス、人間も食べていたっていうの!?」
驚愕の事実を知る。魔物だけではなく人間の大量捕食も行っていた。なんと惨たらしいことか。
人間は強い兵器を生み出すためなら平気で同族をも生贄とする。全ては勝利のため。魔人の大量殺戮さえ叶うのなら30人ほどの犠牲など大したことではないのかもしれない。
「この家に使用人がいなかったのも、そこに1人倒れてるのも、こいつの餌にされていたからってことね……!」
だとすればもう少しであの使用人の人も食われてたってことだよな。
ここに放り込まれてグランダラスの姿でも見て気を失った。それでも運良くグランダラスが他の魔物の捕食に夢中だったおかげで助かったってところか。
「そこで新しく使用人になった僕達は自分から餌になりに来たってこと?」
「まったく笑えないわ。あたし達が侵入することを想定してこいつを解放したのね。嵌められた……!」
グランダラスはズシン、ズシンと重い音を響かせて近づいてくる。
ちょうどその時、グランダラスの横にはさっきからずっと吠えている黒い狼の魔物─ブラックウルフがいた。グランダラスはそれを見た。直後、
ガシャアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!
破壊。持っていた大剣で檻を吹き飛ばす。
檻の上部が丸々消し飛び、ブラックウルフの上半身も消し飛んだ。
血が舞い散る。壁にベシャッ!と切断されたブラックウルフの上半身がへばりついた。残された下半身は静かに地に落ちる。五月蠅い声を一発で黙らせた。
グランダラスは嗤う。壊れた玩具を見て面白がるように。
(なんて力だ……!!)
暴力。この言葉が相応しい。命とはこんなに簡単に消えるものなのか。
魔物の鳴き声で満たされていたこの部屋が嘘みたいな静寂に包まれる。まだ生きている魔物も先ほどのブラックウルフの有様を見て察知したのか。
叫べば殺される、と。
グランダラスは殺したブラックウルフを捕食し、骨もバキバキと音を立てて噛み砕いていた。地獄のような光景だ。
「今がチャンスよ……! 『ファルス』!!」
捕食、それこそが好機とばかりにカナリアは走り出す。
食事の時間とはどの種族にとっても油断して隙だらけの時だ。人間だろうが魔人だろうが魔物だろうが、それは共通である。
カナリアは【ローレライ】で食事中のグランダラスの体を斬る。グランダラスにはバハムートのような硬い鱗はない。斬撃は有効な攻撃のはずだが……
「……! 抜けない!」
刃が体を通る。しかし……途中で、止まる。筋肉で止められたのだ!
「ルルルルゥ?」
蠅でも止まったか? と、ジロリと下を見た。
取るに足らない捕食対象。僕達を前にして食事をしていたのはそもそも敵として見ていなかったからだ。
「カナリア!!!!」
「ルラアアアアアアァァァ!!」
僕は助けに行こうとするが、もう遅い。
グランダラスの豪腕から生み出される薙ぎ払い。
1秒にも満たない暴力がカナリアの華奢な体を襲った。
♦
「グランダラス?」
「そうだ! この私が何年もかけて育て上げた兵器。あれを成長させるのは苦労したよ。魔物を餌にするのは大変でねぇ……。捕まえてきてもすぐに平らげてしまう」
コールドはベルベットの前でやれやれ……と困った顔をしてみせる。
「そこで……使用人を餌にしてみたのだよ。するとどうだ? グランダラスの体はモリモリと急成長! 餌の調達も簡単で栄養も豊富ときた。最高だったよ」
「とんでもない外道ね」
「全てはお前ら魔人を全滅させるためだ。餌になったあの子達も栄誉なことだったろう。力ない者でもこうして対魔人兵器の力の一部として役立てたのならな」
心底気持ち悪いと顔に表すベルベットはもういい加減ウンザリしていた。
「で、その兵器もあなたもここで終わりなわけだけど。っていうかあなた1人で私の相手できるの? 助けでも呼んだら?」
「お前を殺すのはこの私だぁ……! 誰にもこの手柄、取らせはせん。グランダラスの『食事』が終われば次はお前の番だぞ? それがわかっていないようだな」
「ぷっ。雑魚がなにか言ってるわね」
「笑うなぁ!!」
コールドは鞭を床に3回ほど打つ。これは怒りを表しているわけではなく……。
家のあちこちからその音を聞きつけたのかゾロゾロと様々な魔物が寄ってきた。魔物は地下だけなく家の中にも隠れていた。コールドは夜になると戦闘に備えて地下から数体の魔物を引っ張り上げていたのだ。
「私の異能は『調教者』。効果は魔物の隷属及び強化だ」
「異能」……それはこの世界に突如現れた神という存在が人間に与えた力。
「魔法」とは違って魔力を使わずに発動する。代わりに人間の「精神力」という生命エネルギーのようなものを使って発動するので使いすぎると気を失ったりする危険性はあるものの魔法と比べても勝るとも劣らない力を持っていた。
異能は魔法の人間verという考え方で問題はなく効果も魔法と非常に似てるところがあるのだが厄介な点として気づかれにくいことが挙げられる。
魔法は発動に杖などの魔法をサポートする魔法道具があったり、魔法陣が発生したりと視覚的に発動の予兆がわかる。属性魔法なんかは見られればそれが得意な魔法なんだとバレてしまう。
異能は種類にもよるが発動がわかりづらい。最悪、知らない間に使われていたなんていう事態もあったりする。
魔法陣なんか出ないし魔法道具も使ったりしないし詠唱もないせいで気づけば術中にハマっていることもあるのだ。
「なんかベラベラ喋っちゃってるけど自分の異能バラしちゃっていいの?」
「言っても変わらん。魔物使いとバレている以上そういう異能だと知られているも同じだ。……いけっ!」
たくさんの黒い狼「ブラックウルフ」。
赤い体毛の熊「バーニングベアー」。
強大に膨れ上がった腕を持つゴリラの魔物「ハンマーコング」。
人間と同じ大きさになった火を吹く蜥蜴の魔物「フレイリザード」。
それらがベルベットをグルリと囲み……次々に襲い来る!
「お前も餌になれぇ!!」
敵に囲まれているこの状況。誰もがピンチだと思うが……彼女は表情をまったく崩していなかった。
「これでリーダーか~。とんだ雑魚の部類だったわね」
ベルベットは杖を構え、詠唱を開始する。
「刻印を刻みし全ての者へ」
ベルベットは詠唱と共に魔物の群れの攻撃をヒラリヒラリと避ける。
その合間に魔物の体へ杖の先をポン、ポンと当てていった。そこに刻印─小さな魔法陣が刻まれていく。
「罪を焼き消す灼熱」
美しい演舞。敵でない者が見たならばそう表現しただろう。魔物の攻撃は1つも当たらない。コールドも鞭を振るって攻撃するがそれも避けられる。
「今、断罪の時」
ベルベットが杖を掲げた。詠唱中に杖に触れ、魔法陣を刻まれた全ての相手を対象に魔法を発動させる!
「『チェイン・エクスプロージョン』!!」
発動。その直後、詠唱中最初に杖に触れた魔物の体が爆発した!
さらに次は2番目に杖に触れた魔物が爆発。次は3番目に杖に触れた魔物……と爆発が連鎖していく。
これは杖に触れて魔法陣を刻まれた者を連鎖的に爆発させていく魔法。「爆発魔法」という属性魔法にあたる。
実はこの魔法は宿で対魔物使い用にベルベットが作成していた魔法だった。
別にベルベットは魔物使いに対しての対策が必要だったわけではない。ただの暇つぶしだ。
「なっ……!? 私の魔物達が次々に……!」
コールドは体を爆発させて臓物を散らしていく自分のペット達を見て唖然としていた。
決してこれでベルベットに勝てると思っていたわけではない。グランダラスの食事が終わるまでの時間稼ぎにはなるかと思っていたのだ。
それは間違いだった。まったく時間稼ぎにならずに全ての魔物がバラバラになって床に転がっている。
さらには……コールドの体からも『チェイン・エクスプロージョン』の魔法陣が発光して現れる!
「なに!? いつだ……!? いつの間にやられた……!?」
「あれ? 自分にも刻印が刻まれてたってこと気づいてなかったの?」
ベルベットは悪魔の笑みを浮かべた。
もう対象となる相手が自分しかいない。つまり次に爆発するのは……
「があああああああああああぁぁあああぁああぁがががああぁ!!!」
コールドの体が爆発する。両脚が吹き飛んだ。ゴロゴロと血を噴き出しながら床を転がる。
「ぐ、がぁ……ぐ、ぐ、ぬ……」
「あーあ。これじゃあなたが餌になっちゃうわね」
ベルベットは小さい欠伸をして転がったコールドを見やる。もうどう見ても戦闘行為は不可能だろう。
「も、勝った……あ……気、いる……のか? うっああ、あ………ま、まだ、終わっ……ぐぐ……が……て、ない、ぞ……!」
「まだなにかあるの?…………………ん?」
つまらなそうに腕組みして聞いていたベルベットはコールドがそう言いながら手にしていた物に目の色を変えた。
コールドは何やら赤色に着色された注射器のような小型の機械を持っていた。
「見せて……やろう……。人間……はッ!! ここま……で、進歩したのだッ!!!!」
コールドはそう叫ぶとそれについていた小さなスイッチをカチッと押す。
「解放宣言……!!」
『認証 マジックトリガー・アクティブモード 「No.1 フレイム」』
コールドがそう発声するとその注射器のような機械からジャキンッ!と針が飛び出した。
そしてそれを……体に突き刺した。
コールドの体はドクン!と1つ跳ねると……変化が訪れる。
「あれは……!」
コールドの体から炎が燃え盛る! 炎は脚の形を取り、それでコールドは自立した。
炎は徐々に強まっていき体を覆いつくしていく。今や炎の魔人と化したコールドはニヤリと笑った。
「あれは…………魔法!? 人間が、魔法を使った!?」
「そうだ! 人間は度重なる研究の末にとうとう……『魔法』を使う方法を手に入れた。これこそが数百年の研究の結晶。その名も『マジックトリガー』だ!!」
先ほど使用した注射器のような機械を見せびらかす。マジックトリガーと呼ばれたそれはベルベットでも知らない道具だった。
「まだごくわずかのハンターにしか認知されていない、数も少ない、貴重な代物だがな。私は裏ルートで手に入れた。針を通して魔力を体に注入し、このトリガーに記録されている特定の魔法が誰でも使えるようになるアイテムだ。これに記録されている魔法は見てわかるように『炎魔法』! はははは! 素晴らしい! 素晴らしいぞお前らが使う『魔法』というものは!!」
「へー。随分面白いもん作ってるじゃない。いったいどれだけの同胞が実験材料になったのかしらね……」
なんの研究材料もなしに魔法を知ることができるわけない。この結果からわかることは多くの魔法使いが捕獲され実験に使われたということだ。
しかし、今まではそれでも人間に魔法や魔力を理解する方法がなかった。一体何をどうやってそれを解決したのかは知らないが……。
「人間が我らハンターの力の糧となることは栄誉なことだ。だが魔人などどれだけ消費しても構わんだろう。所詮、ゴミ同然の存在なのだからなぁ!!」
コールドは手のひらをベルベットに向ける。
「我が敵を焼け 火炎の吐息 『ブレイドファイア』!!」
コールドは2節の詠唱を唱え、両手から炎を噴射。2つの灼熱の火炎放射がベルベットに向けられる。
魔法の詠唱文などコールドが知るはずない。だが、この「マジックトリガー」には詠唱文もセットで記録されており使用者は元から知っていたかのように詠唱を唱えることができるのだ。
ベルベットは跳躍してその炎を回避。
「空中では避けられまい!」
火炎放射の標準が上空へ変わる。炎熱地獄がベルベットに迫る。
それに対しベルベットは虚空から新たな杖を出現させ、それを一振り。
すると火炎放射はベルベットの体を避けていくように曲がる。急降下するように進んだ炎は飾ってあったマリーゴールドの花に直撃してその一帯を炎上させた。
使ったのは「風魔法」。風を操作して火炎放射を曲げたのだ。これにはコールドも気づいていた。
出現させた杖も風魔法をサポートしてくれる風魔法専用の杖─【ウィスプロッド】。緑色で翼の文様が杖に刻まれている。
「なるほど。お前が属性魔法を複数使えるという話は本当だったか」
「そんなことより今からもっと面白い物見せてあげるわよ。風でバラバラに切り刻まれるのと、氷漬けになるのと、また体が盛大に爆発するの……どれがいい?」
そう言うとベルベットは【ウィスプロッド】とは別にもう2本の杖を出現させる。
1本はオレンジ色でさっきも使っていた爆発魔法をサポートしてくれる専用の杖【イグニッション】。
もう1本は水色で氷魔法をサポートしてくれる専用の杖【ダイダロス】。
「ふはは! お前が燃え尽きる方が先だ!!」
コールドは全身から炎を発生させ、さっきとは比べものにならないほどの大きさの火炎放射を繰り出す。紅蓮の火炎旋風がベルベットを飲み込まんと口を開ける。
「じゃあ、まだ使ってないし氷魔法にしよっと」
【ダイダロス】を手に持ち、一振り。
たったそれだけ。
「…………………え」
コールドの口からなんとも間抜けな声が出た。無理もない。自分の放った渾身の火炎放射が全て凍りついていたのだから。
詠唱有りの上位魔法を使ったのならわかる。だがベルベットがしたことは魔力を使って冷気を発生させただけ。ごく簡単な氷魔法の初歩。
ただそれだけで自分の全力の炎を凍てつかせた。
「天より極寒の風が吹きすさぶ」
今度はベルベットの詠唱が始まった。
コールドにとってそれは自分へ向けられたどんな殺意のある言葉よりも恐ろしいもの。今から発動する魔法はヤバイ、と脳が危険信号を点滅させる。
「世界全てを凍てつかせよ 聖なる炎でさえ氷像と化す」
花弁のような唇から発せられる「終わりの一撃」。
今こそ攻撃して詠唱を阻止すべきなのにコールドの頭にはもう攻撃する思考など存在していない。
「死ぬ、死ぬ、死ぬ」と2文字が羅列する。
マジックトリガーという秘密のアイテムさえも使用してあれほどベルベットを殺すと息まいていたのが今では絶望一色に染まっている。
「鳴り響く破滅の鐘 命よ眠りにつきたまえ 絶対の樹氷となりたまえ 時が止まったこの場所で もう来ぬ覚醒の時を永遠に待ちたまえ」
ベルベットの頭上に巨大な蒼い魔法陣が出現する。
「その目で世界の終わりを刮目せよ 終焉の冬」
ベルベットは10節にもおよぶ詠唱を唱えた。
10節、この数でコールドは恐怖の極限へと達する。
「ひいいぃぃあ、あ、ああああああああ!! う、嘘だ! きゅ、きゅ、究極魔法ぉぉ!?!?」
「究極魔法」─それは属性魔法を突き詰めていくと最後に到達する最終の魔法にして究極の破壊魔法。
使用には手練れの魔女数十人が魔力を共有して詠唱を唱える必要があるほどの超魔法で前例を見てもこれを使用するには50人くらいの一流の魔女が投入されていた。
逆に言ってしまえばそれだけの数の魔女が「究極魔法を使おう」と賛同しなければ発動できない危険な魔法でもある。
この場にいる魔女はベルベットだけ。しかし、そんなことは関係のないことだった。
ベルベットの魔力の量と魔法の技量は魔女の中でも頂点に君臨する。それも他の追随を許さぬレベルで。
そんな実力を持っているベルベットはたった1人で究極魔法を行使できる力を持っていたのだ。
「究極氷魔法─『フィンブル・ヴェト』!!!!」
言葉のトリガーを引く。蒼の魔法陣から吹雪が吹き荒れる。
バキキキキキ!と大広間が瞬時に氷獄と化していく。
「が……………………………」
コールドが発することができた言葉はたった1文字。
至近距離にいたこともあって『フィンブル・ヴェト』発動から息つく間もなく凍り付く。巨大な氷柱がそこには建っていた。
発動地点の大広間だけでなく全部屋がその被害に遭っている。それどころか……外では雪が降っていた。
コールド邸のみを凍らせるように威力を調整したのだが、それでも雪を降らせてしまったのは究極魔法なら仕方ないことでもあった。
「くしゅんっ! さっむ! この魔法すっっっごく疲れるし超寒いからあんまり好きじゃないのよね……」
ベルベットはくしゃみをしてブルブルと体を震わせる。
「あ………トイレ使えなくなっちゃったかも」
トイレに行きたかったのだが当然そこも『フィンブル・ヴェト』で凍っている。
ベルベットは泣く泣くトイレを我慢することにした。これでも女なのでトイレでもないところでそういうことをしてしまうほど恥を知らないわけではない。
「それよりも……あったあった。これが『マジックトリガー』ね」
ベルベットはトイレのことよりもコールドが使っていた謎のアイテムのことが気になっていた。
人間でも魔法が使えるようになるアイテムが出たとなればすぐに報告しなければいけないことである。
といってもベルベットはこれをどこかに提出するつもりも教えるつもりもない。私物にして自分1人だけで研究するつもりだ。
「これ、全部で何個あるんだろ~」
ベルベットはマジックトリガーをポケットに入れた。もし集められる個数なら全て回収したい。それほどにこのアイテムはベルベットの好奇心をくすぐったものだった。
(よし。それじゃアスト達を助けにいきますか……。さ~て、どうなってるかな)
氷獄と化した空間を踏み歩き、ベルベットはキッチンへと向かった……。




