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ヘクセンナハトの魔王  作者: 四季雅
第0章 魔法が苦手な魔法使い編
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13話 エリア探索!


「うん……?」


 僕は、目覚(めざ)めた。なんのことはない。よくある眠りからの覚醒だ。

 なのだが……起きてすぐに違和感を感じる。


 僕は机で寝ていたはずなのに、今はふかふかのベッドに寝そべっている。何を言ってるかわからないと思うけど……いや、僕にもわからないぞ???


 そこでさらなる違和感。シーツの中、僕の腕に何かフワッとした物が当たっている。ベッドにいるというだけでも不思議なこの状況。いったいシーツの中に何がいるというのか。



 …………待て。徐々に覚醒してきた頭で何かを察してしまった気がする。



 ベッドはベルベットとカナリアが使っていたはずだ。僕が今ベッドにいるということはどちらかのベッドに僕はいるということ……!


 横をチラッと見るともぬけの殻になっているベッドが1つ。あれは位置関係から見てカナリアの方のベッドだ。

 そうじゃなくても今は朝7時。しっかり朝起きることができている時点でカナリアで間違いはない。


 ということは……ということは……!!


「こら! これはベルベットの仕業…………………あれ?」


 僕はシーツを捲って腕に当たっている何者かを引っ張り上げる。それは……



「ば、バーニングベアー……お前だったのか……」



 ベルベットがリュックに入れていた寝る時のお供のヌイグルミ。熊の魔物のバーニングベアーだ。

 赤い体毛の熊の可愛らしいヌイグルミが「なんだよ」とこちらを見ている。

 フワッとしてたのはお前の自慢の体毛だったか。けっこう気持ちよかったぞお前。


 しかし思い切り掴んでしまったせいか……


「ベアー! ベアー! ベアー! ベアー!」


「うわ、なんか喋りだした! これ音声付のヌイグルミなの……? がっつり子供用のじゃん……」


 どこか変なボタンを押してしまったみたいだ。ベルベットはいつもこんなヌイグルミと一緒に寝ているというのか。ひどい冗談だ。


「って……待て待て待て」


 腕に当たる感触に気を取られていたせいで完全にわからなかった。下腹部(かふくぶ)に……何か「いる」。これはもう間違いない。

 僕は自分の体全体が見えるくらいシーツを(めく)り上げた。するとそこには、



「……むにゃ」


「………」



 やっぱりいた。金髪の幼女が。まさか変身魔法で脳の年齢まで下がったんじゃないよな……?

 ベルベットは僕の下腹部にしがみつくようにうつ伏せで寝ていた。

 しかも僕の服に噛みついてて()がそうにも()がれない。おかげでヨダレまで服についちゃってるし。赤ちゃんか。



「は~な~れ~ろ~!」


「んぐっ! あぎゅっ! むぐっ!」



 チョップチョップチョップ。


 痛そうな声は聞こえてくるのに一向に起きない。まだしがみついたまま。ちょっと軽くイライラしてきたぞ……。

 と思っているのも束の間。カラン!と何かを床に落とした音が近くで鳴った。そこを見るとコップとハミガキが落ちている。その主は……



「……あんた何してんの?」


「………カナリア、これはその……」



 当たり前だがカナリアだった。もうドン引きという感じでこちらを見ている。顔が青ざめてもいた。体もガクガク震えている。


「起きた時はボーっとしてて気づかなかったけど、なんであんたベッドにいんの? しかも……それってベルベット様よね? あんたまさかほんとにロリコ─」


「違う!……お、起きてベルベット!」


 僕は絶対に机で寝たはずだからこの奇怪な状況は全てベルベットの仕業なんだ。ベルベットが起きれば説明してくれる……はず……!


「むにゃぁ……♡」


「起きてー!!」


 僕は半泣き状態でベルベットの頭をバシバシ叩く。

 って…………絶対起きてるだろ!! 声がさっきとなんか違うぞ!!




   ♦




「おはよ~」


「………」


 なんとかベルベットを起こすことに成功した。あーもー僕の服にヨダレが……。

 僕はティッシュでそれを拭いて、早速問い詰める。


「僕がベッドにいたのってベルベットがやったんだよね?」


「だって……机で寝てるの可哀想だったし……」


 しゅん……と落ち込む。それを見て許してあげようかと思ってしまったが簡単に許してしまえばそれこそロリコン疑惑が復活してしまう。


「どうやって寝てる僕をベッドまで運んだのさ」


「魔法でヒョイッと浮かせてそのままベッドインさせたの」


「インをさせないでインを! なんでそういうことをするの!」


「………ぐすっ。そこまで言わなくてもぉ……うぅぅぅ……」


 僕がツッコむように怒っているとベルベットは膝を立てて座る……人間の間では「体育座り」と呼ばれる格好で下唇を噛みながら涙を目に溜め出した。

 精神年齢まで子供になったのか……ああ違う、元からこんなんだった。


「とにかく! 朝っぱらからこんなことやってたら身が持たないよ……」


 もうこの空気に耐え切れずさっさと終わらせる。ベッドで眠れたはずなのに机で眠るより数倍近く疲れたのはなぜなんだ……。



   ♦




「さてと、今日から本格的に調査を始めるわよ!」


 この宿を拠点(きょてん)として僕達はミリアド王国で調査を始める。調査というのはもちろんこの国のどこかにいる「魔物使い」だ。

 ベルベットは時間を置いたことでちゃんと立ち直っている。実はあれから30分間泣き続けていて僕とカナリアを困らせまくっていた。


「調査っていうけど具体的にはどうするの?」


 僕が気になったのはそこだった。誰でも気になることだと思うが情報があまりにも少なすぎるのだ。



 この国のどこかにいる、「魔物使い」と呼ばれている、人間を探す、と。



 キツイ。キツすぎる。国の中からある特定の人間を探すというだけでもかなり骨が折れる話なのに相手の特徴なんかは一切判明していないときた。これ不可能に近いのでは?


「そこもちゃんと考えてあるから安心して。私の予想だけどまず『魔物使い』はこの国の『()()()()()()()』の誰かよ」


「エリアリーダー?」


 ベルベットの話によるとこの国には「エリアリーダー」と呼ばれる人間が各エリアに1人ずついるとのこと。


 第二次種族戦争で人間が魔人から世界を取り戻してからミリアド王国は自らの土地をいくつかに分けた。

 これは大きすぎる国の土地を隅から隅まで魔人による攻撃がないように監視をするのが難しいということが理由になっている。


 国を分け、それぞれにハンターの組織を置いて自治をさせる。そうすることでより細かく監視をすることに成功していた。

 どこが優れたところだとかいう話は表向きはないが実力のあるハンターがいるエリアは魔人からも「あそこは近づくな」と恐れられている。ちなみに本部はミリアド城があるエリア1だ。


 だが各エリアに「ハンター」を置いただけでは良くなかった。要はリーダー的立ち位置にあたる「象徴(しょうちょう)」がなかったのである。


 エリア1にはミリアド城という圧倒的な象徴があり民は国王の言葉に従って動けばいい。

 しかし、他のエリアは誰に従い動けばいいのか、商業をするにしても一々エリア1の城まで許可を取りに行かなければならないのか、ここの場所の土地は勝手に使っていいのか、等々そういった面で大きな問題が出てきた。


 そこで各エリアに「エリアリーダー」と呼ばれる者を配置。自分のエリアのことは全てその者に従えということになった。つまりそのエリアの「王」となる。


 エリアリーダーは普通の民とは違い貴族だ。

 そこの土地全てを所有することになり、住む民は土地を使用して商業や農業をする代わりにリーダーへ税を納める。そういった形で落ち着いた。

 つまりその自分が住む場所にあるエリアリーダーの家こそが、エリア1でいうミリアド城のような扱いとなったのだ。


「なんでエリアリーダーの誰かが魔物使いって言えるの? っていうかそのエリアリーダーって人も皆ハンターなの?」


 僕は素直に疑問を口にする。それにカナリアが(あき)れた顔をした。


「あんた何も知らないのね。そもそもリーダーに選ばれるのはハンターの名家の者達なのよ。言ってしまえばエリアリーダーはハンター組織のトップ集団みたいな奴らなんだから」


「じゃあただのお金持ってる人達ってわけじゃなくてハンターとして実力がある人の家がそうなってるってわけなんだ」


「そういうこと。だからこそ各エリアの自治ができるってもんよ。全てのエリアにハンターの組織と、優れた力を持つハンターの家をそれぞれ1つずつ配置する。そうすることで厳戒態勢(げんかいたいせい)()いているの。もしエリアの中で魔人が現れればそこにいるリーダーの指示の下、同エリアのハンター組織が動いて捕らえるっていう風にね」


 なんか大国だからこその事情が垣間(かいま)見えるな。どこから魔人が現れるかわからない今、大まかに全体を見回すだけではダメってことだ。現に僕達が侵入しちゃってるわけだし。



「そこまでしてるのに割とスンナリと国の中に入れたのはなんで?」


「あまり入国にキツイ制限をしても意味がないのよ。私みたいに変身魔法を使う者がいればもっと相手を(まど)わす魔法で侵入したりする者もいる。それに国自体に閉鎖的なイメージもついちゃうしね」


 ふーん。それで僕達でも簡単に入れたってわけなんだ。


「でもハンターの中には魔人か人間かを判別できる特別な異能を持っている人間がいるらしいから、ハンター組織の建物にはみだりに近づかないことね。まぁそれに対抗して自分が魔人であることを隠せる魔法も高位の魔女なら使えちゃったりするんだけど」


「あれ? そんな力を持ってる人こそ門兵に配置すればいいじゃん。魔人かどうか判別して国の中に入れられるんだし。なんで組織の中の方に配置しちゃうの?」


「あんたアホなの? 門兵なんてやらされてたら簡単に殺されちゃうでしょ? 野晒(のざら)しにされてるようなもんなんだから。人間側でもかなり貴重な異能らしいし失わないように慎重なんでしょ」


 それもそうか……。どうやら国の考え方っていうのは僕には難しすぎるみたいだ。僕の浅い考えじゃ穴だらけなのだろう。



「で、話を戻すけどなんでそのエリアリーダーが魔物使いって言えるの?」


「『魔物を飼う』ことができるほどの人物だからよ」


「?」



 ベルベットの言葉に僕は首を傾げてしまう。これにはカナリアも少しわからないみたいだ。


「知らなかったと思うけどこの国では魔物を飼うこと自体が犯罪なのよ?」


「え!? そうなの!?」


 言われてみれば街の中で魔物の姿をまだ見ていない。

 魔物とは一見獰猛(どうもう)な獣と思われるがマナダルシアではペットとして飼う者もいるのだ。

 さすがにとんでもないランクのバケモノみたいなやつは飼えないけどバーニングベアーみたいにヌイグルミになったりと愛玩(あいがん)されている種もいる。


「魔物を飼ってたら警察に捕まっちゃうの。もし魔物を操作する魔法なんか使われて街が襲われたら目も当てられないでしょ?」


「じゃあなんでそんな国に魔物使いなんていうハンターがいるのさ」


 実は魔物を使って戦うハンターというのは珍しくない。そういったハンターは「テイマータイプのハンター」と呼ばれている。

 では、なぜその中でも「魔物使い」などと呼ばれて魔人側の手配書にも()るほど警戒される人物がいるのか。

 それはミリアド王国という魔物厳禁の場所だからこそという理由があった。


「ハンター側が秘匿(ひとく)しているのよ。その魔物使いと呼ばれるハンターがこの国の中で魔物を飼っていることを。ハンターと警察っていうのは昔からずっと仲が悪いの」


「仲が悪い?」


「そう。魔人を狩るためならなんでもしようと危険な魔物でも街の中に入れちゃうハンターと、民を守るために存在する警察。衝突するのは明らか。いくら人間一丸となって魔人と戦おうって言っても限度があるだろっていうのが警察側の言い分よ。ハンターの言い分は勝てばいいんだよ勝てば!……ってところ」


「なるほどね……」


「さすがに組織の建物の中に魔物を飼うのは危険だから……リーダーの誰かが自分の家の中で魔物を飼っているわね」


「家の中!? それはハンター組織の建物内より無茶じゃ……」


 ベルベットの推理を僕が否定しようとするとカナリアは何かに気づいた顔をする。



「まさか……()()ですか?」


「正解よ。自分の家の下に地下施設を造ってそこで魔物を飼っている。それで警察からも国民の目からも隠しているはず」



 そんなバカな。地下施設だって……?

 じゃあどこかのエリアの地下に魔物が何体も眠っているということなのか?ここの人達はそれを知らずに過ごしていると。なんて恐ろしいことなんだ。


「しかもそんなとこで飼うとなると相当ヤバイ魔物がいるってことよ……飼われてる魔物の解放……一筋縄じゃいかなそうね」


 カナリアは腕を組んで溜息を落とす。そうだった。僕とカナリアの仕事は捕まっている魔物の解放だったんだ。


「魔物の解放って言うけど大丈夫なの? 地上に出てきたりとか……」


「檻や鎖から出さなくてもいいわ。まとめてどこかの森とかに魔法で転送するし。ただアスト達にお願いしたいのは檻から出ちゃってる魔物がいないか確認してほしいの。後で転送漏れなんかがあると困るし」


「もしも………………出ているやつがいたら?」


捕獲(ほかく)。それが無理なら…………討伐(とうばつ)ね」


 予想通りだ。このクエスト、多分それが想定の内に入っている。

 ハンターとの戦闘があるからかもしれないがそれ以外にもかなり獰猛(どうもう)な魔物が飼われていて、それらとの戦闘が加味(かみ)されてるからこのクエストはレベルBなんだ。

 僕は討伐(とうばつ)というワードが飛んでくると体が震えてきた。



「アスト? あんた大丈夫?」



 僕の様子をカナリアが心配してくる。


 今、僕の脳裏(のうり)にあるのは入学試験の時のことだ。バハムートとの戦闘のこと。

 僕はあの試験で間違いなく死んでいた。体の肉を裂く爪の一撃。身をすくませる咆哮(ほうこう)。絶望を感じさせる悪魔のような黒い大きな体躯(たいく)。全てが恐怖を(にじ)ませるものだった。



(あの時の、体から命が消えていく感覚……思い出すだけで寒気がしてくる……)



 血まみれになって横たわり死を待っていたあの時間。あれだけは思い出したくなかったが……それが想起(そうき)されてしまった。

 僕の中にある魔王の力のおかげなのか知らないけど今は傷痕(きずあと)なんてどこにもないくらいに完治している。


 でも、次はどうなるかわからない。一撃で即死するかもしれない。体から内臓をぶちまけて回復なんか不可能なくらいグチャグチャに痛めつけられるかもしれない。体を丸のみにされて胃で消化され跡形もなくなってしまうかもしれない。



 そう考えるとまた恐怖が容赦なく襲い掛かってくる……!



「大丈夫……。ちょっと気分悪くてさ」


「……ふーん。早めに治しなさいよ。いつ魔物使いが見つかるかわからないんだから」


「うん……」


 弱音を吐いてはいけない。士気を落とすし魔法騎士になる者が何を言っているんだという話だ。

 僕は吐き気のように込み上げてくる弱音をグッと飲み込んだ。


 それが見て見ぬふりということにこの時の自分は気づいていなかった。




   ♦




「エリア1にリーダーの家はない。……私はエリア2にいくからカナリアはエリア3、アストはエリア4をお願い。午後5時になったら皆エリア4に集合ということで」


「わかりました」


「わかった」


 手分けして魔物使いを探すことにした。僕は一緒に探した方が良いんじゃないかと提案したんだが(いちじる)しく効率が下がるとのことで却下。

 ただでさえエリア1を除いてエリアは9つあるからな。どれもメチャクチャ広いし。


 エリア間の移動は人間が使っているタクシーという乗り物を使って外壁近くまで行き、そこにいる門兵に話して壁を通らせてもらうという形になる。基本的にエリア移動もこの国に入る時とあまり変わらないのだ。

 こういったところに人間と魔人の暮らしの違いが見えてくるのだが魔人の暮らしにはタクシーという乗り物はない。それはもちろん魔法があるから。


 このように魔法を暮らしに適用させている魔人の生活は人間のものより何段階も便利な生活をしている。

 逆に人間側には魔人に対抗する魔法とよく似た力の「異能」を生活に適用するほどには至っていないためまだまだ生活レベルは魔人と比べて平凡なものだ。



 と、そんなこんなもあり僕はエリア4に来た。



 エリアは1~9まで、上から見るとミリアド王国の外周をぐるっと回るように形成されていて、その全てに通じている真ん中にはエリア10が配置されている。

 エリア1の左右には2と9があり、エリア4の場所は2の左にある3のさらに左だ。つまり1から4に行くにはエリア移動を3回も行わなければいけない。


 ここで真ん中に位置しているエリア10からならばどのエリアにも移動できるじゃないか、なぜそこを経由しないんだ、と誰でも思うだろう。


 だがベルベットの話によるとエリア10はある特定の人物しか入れない特別区域らしいので平民は一々何度もエリア移動しなければ離れているエリアに行けないのだ。ベルベットなら変身魔法で入れそうだけどね。


 非常に面倒くさいしお金と時間もかかる。あとここまででエリアエリア言いすぎて頭おかしくなりそうだ。



「エリア10に魔物使いがいたら僕達は入れないしこのクエスト失敗じゃないか……?」



 それだけはやめてくれよと祈りながら僕はエリア4を探索(たんさく)する。


 ここは見たところ武器がたくさん売られている場所みたいだ。あちこちに武具を売っている店がある……ん? そればっかりか?

 ちゃんと食事をする場所や宿屋等々そういう店もちゃんとあるが明らかに武器屋が多い。なんだここは。



「おう、そこの坊主! 剣だけじゃ物足りねえだろ! 盾でも持っとけよ」



 エリア1の時のリンゴよろしくここの店は盾を勧めてきた。エリア4は物騒なエリアだな……。


「あの……なんでここのエリアは武器ばっかり売ってるんですか? あまりにも多すぎません?」


 ちょうどよかったので盾を勧めてきたガタイのいいお兄さんに聞いてみた。


「んあ? そりゃここが武器と戦いの街エリア4だからに決まってんだろ! 別名『死のエリア』よ!」


 死て……()とかけてるってこと? 誰が名付けたんだそんな……その……ちょっと恥ずかしい名前。


「腕っぷしに自信があるやつは皆ここに来るんだ。ここのハンターも皆筋肉バカだしエリアリーダーも筋肉バカだぜ!」


 バカばっかじゃないか! それもう死のエリアどころか筋肉バカエリアなのでは……? という言葉はさすがに飲み込んでおいた。


 おっと……? しかし、今捨ててはおけないワードが出たような。



「エリアリーダーの家ってどこにあるんですか?」


「あ~『アルモス家』か。そんならここからあっちに3kmくらい進んだとこにあるぞ。ほら見えんだろ? あそこにでっけぇ家があんの」


「あ! 確かに。……あれか」


 ()された方を見ると並んでいる家の中にどう見ても一際背が高い家があった。大きさも他のより5倍はあるぞ。いかにも金持ちってやつだ。


「俺らのリーダーに何か用でもあるのか?」


「実際に用があるわけじゃないんですけど……ちょっと気になることがありまして。そのアルモスさんって人は強いハンターなんですか?」


「そりゃリーダーに選ばれてんだから当たり前だろ! この前なんか街に襲い掛かってきた魔物をぶん殴って倒したんだからよ! しかも素手でな!!」


「うわぁ……メチャクチャですね」


 魔物を素手でぶん殴って倒すハンターって何者だよ。魔力を纏ってない僕よりアホじゃないのか。

 もうなんかこのエリアにずっといると頭が悪くなりそうだ。すごく失礼だけど。ベルベットと変われば良かったかも。


 あ、でもあれ以上アホになられたらそれはそれで困ることだよな……。無視とかしたら「なんで構ってくれないのーっ!」って鉄拳制裁するようになりそうだ。うわっ! 想像しただけでウザっ。


 けど、さっきの情報は決定的じゃないか? このエリアのリーダー「アルモス家」は魔物使いではないという理由に。


 魔物使い……つまりテイマータイプのハンターなら体術を極める必要がない。


 そりゃある程度は必要だろうけど魔物を素手で殴り倒すまで鍛えなくたっていいに決まってる。カモフラージュと言われればそれまでだけど。



「さすがに魔物も従えて体術も最強ってバケモノすぎるよね……」



 その線はないと願いたい。こればっかりは調査を初めてすぐのエリアだからなんとも言えない。


 とりあえずエリア4は違うかな……っと。

 僕はそう決めて時間までは観光することにした。

 何遊んでんだよって思われるかもしれないけどこれも地を知り、いつかここで戦う時のための知識とするためだ。 


 決して早々に結果が出て暇だから時間を潰そうだとか考えているわけではない。決して……!




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