113話 愛を吸って君は生きる 君の愛で僕は生きる
今日も今日とて補習である。僕は教室に残って、来たる小テストに向けて勉強をしている。
そんな僕の横でムウはすぴーと机の1つの上に寝転がって眠っていた。補習担当の先生は困っていたからそろそろ帰ってほしいけど、ここにいるのが楽しいみたいだから許そう。でもこっちに足を向けられるとスカートの中がモロに見えてるからそれだけはやめてほしい。
「あら。アストさんこんなところにいたんですの」
「あ、リーゼ」
僕を探していたのか、リーゼがここの教室に現れた。ちょうどさっき先生が席を外したところだから今話すのは構わないけれど。
「こんなところで何やってるんですの?」
「補習だよ。僕、留年しそうなんだ」
「どうして1年生の1学期ですでに留年の危機なんですの……?」
あれ。また引かれてる……。うーん。補習してる間に慣れつつあったけどやっぱり僕の今の状況って異常だよね。
補習の小テストですらギリギリ合格が続いてる始末だし、自分はいつ留年するかこれからずっと崖っぷちなのかもしれないと思うと…………ああ、考えたくない。
「どんな問題ですの?……………え」
「ど、どうしたの?」
「あ…………あ~、あ~、そこ、む、難しいですわよね~。わかりますわ~」
絶対嘘だ。顔が無理して笑ってるもん。目線も全然合わないし。口元も手で覆って苦笑いを隠そうとしている。
よっぽど僕は基礎的な部分で躓いてるんだな。その顔一発で自分の頭の悪さが把握できたよ。
「せっかくですから私が教えてあげ─」
その時、リーゼの体がぐらりと揺れた。
「リーゼ!?」
僕は慌てて席を立ち、彼女の体を抱き留める。そうするとすぐにリーゼは自分の足で立つ。
「少々立ち眩みが。失礼しましたわ」
だが、僕は異変を見て取った。吸血鬼の特有の、リーゼの金色の眼が…………赤く光っていた。
こうなるのは吸血鬼が自らの特性である血液攻撃を使う時。しかし、それ以外にこうなってしまうのを僕は知っている。
そう。それはカルナの身に起きた。
吸血鬼が生きるのに必須の栄養源としている「血液」が…………極度に不足している時だ。
「リーゼ……? 血、飲んで、ないの?」
「へ? な、なんのことですの? クスクス♪ アストさんは可笑しなことを……うっ」
突如、リーゼは吐き気を抑えるように口に手を当てる。さらに体中に激痛を感じるように蹲った。
これは。これは…………もう間違いようがない。
僕の過去が掘り返される。救えなかった少女が苦しんでいたあの光景が。
「だ、ダメだ。リーゼ!」
今は補習中だが、そんなことまったく頭に残っていなく、僕は倒れたまま動けないリーゼを抱きかかえて教室を飛び出す。
嫌だ嫌だ嫌だ。なんで、どうして悲劇は突然なんだ。
悲劇なんて起こらないでほしい。起こるのなら少しくらい予兆がほしい。それまでにいくらでも準備をするから。
そうやって嘆いたって、どうしようもないことは知っている。何も救えないことは知っている。
それでも、嘆いてしまうこの心を殴りつけてやりたい。嘆くことでこの辛さを少しでも消化しようとするこの心を怒鳴りつけてやりたい。
「アンリーさん!!!!」
僕が向かった先は保健室。そこにはアンリーさんと……ベルベットがいた。2人で談笑し合っていたところに僕が血相変えてぐったりとしたリーゼを運んできたものだから、何事かと訝しむ。
「あ、あん、り、さん……り、リーゼ、が……」
「……そこに寝かせろ。ちっ、こいつやっぱ飲んでねえのかよ。なんかデジャビュだわ……」
近くにあった保健室のベッドにリーゼを寝かせる。すぐにアンリーさんがリーゼの容態を診る。
「おい起きろこら」
アンリーさんはリーゼの頬をペシペシと乱暴に叩いて彼女を起こした。それで意識ははっきりしたが、まだ息が荒い。
「お前血飲んでないことなんで黙ってた。返答次第じゃこのまま体解剖するぞこら」
リーゼが自分の旧友だからこそ、黙っていたことに腹を立てるアンリー。しかも直近に、それで1人苦しんだ人物がいるとなれば気分のいい話ではない。
「それは………………」
リーゼは僕の方をチラリと向き、口をつぐむ。それだけ。答えは言わない。
なんだ……? 僕に聞かれちゃマズいことなのか? それなら別に席を外すけど……。
「まぁいいや。お前はカルナと違って血の抵抗はないよな? なら話は早い。…………おいベルベット。お前の血飲ませてやれよ」
「はぁ!? なんで私の血? しかもよりによってこいつに」
「あたしは患者を治すけど患者の食料になる気はねーんだよ」
ぶー、とまだベルベットは不服そうだ。そんな時にもリーゼは苦しそうにしている。
「僕からもお願い……! ベルベットの血を─」
「わかった!!!!」
僕もお願いしようとすると、ベルベットは超笑顔でブシュッ!と自分の爪で指を切って血を出した。
いや早っ! ってか切りすぎ! 血ドバドバ出てるよ!? ベルベットの方が大丈夫!?
「ほら。さっさと飲みなさいよ。あんまり多く吸わないでよ」
スッと血を流す指を出したベルベット。それを見たリーゼは少し躊躇いを見せる。
うん? 躊躇い……?
過去に血を飲むことに抵抗を見せていたリーゼ。しかし今では完全に吸血鬼となって血液を飲むことになんの抵抗もない。それなのに「躊躇い」とは……。
そんな自分の疑問は置き去り、リーゼは恐る恐るベルベットの指を小さな口で銜える。そして血を飲む。
これで解決、と思いきや。
「うっ!!!! うぇぇ!…………げほっ! げほっ!! うぷっ…………!」
リーゼは飲んだ血を吐き出す。胃の中にあった物も近くに置かれてあったバケツに全部吐き出した。まるで体が取り入れた物を強く拒絶するように。
「ちょっ、ちょいちょいちょい! いくらなんでも失礼でしょー! え……そんなに私の血ってマズいの……?」
ベルベットはリーゼの惨劇に自分の指をペロペロと舐めて確かめている。
人間か魔人かによって血の味は異なるのかもしれない。そうだとしてもまさか吐くほどの味ではあるまい。飲む度にこんなことになれば吸血鬼なんて種族はとっくに滅んでいる。
「ベルベット。お前いくらリーゼのことが嫌いだからって自分の血中に毒仕込んどくのは引くわ……。殺されかけた仕返しとはいえ用意周到すぎだろ」
「そんなことしてないわよ! つかそんなことしたら私が死ぬでしょーが!」
「いやお前のことだから毒くらいじゃ死なねえだろ。ほら解毒するからさっさと仕込んだ毒の種類吐け」
「ほんとにやってないってばー!」
「そんなことよりリーゼの状態が……!」
2人がコントみたいなやり取りしている間にもリーゼの状態は刻一刻と悪くなっていく。それにアンリーは困った顔をする。
「あ…………ちょっと待って。アンリー。こいつもしかしてあれじゃない?」
「あぁ?………………あー。マジかよ。それなら相手は一体誰…………あ~、そういうことか。今、話が繋がったわ」
なぜかベルベットとアンリーは僕を見て何か納得した顔をしている。アンリーは物珍しそうに、対してベルベットは「ぐぬぬ……」と表現しづらい顔をしている。
「アスト。今度はお前の血を飲ませてやってくれ。……あたしたちはどっか行くから。行くぞベルベット」
「ちょっとー! まだ私は許して─ぐぇ!」
首根っこを掴んでアンリーはベルベットを連れて外に出た。
んんん……。よくわからないけど、今度は僕が血を飲ませればいいんだよな。
「リーゼ。僕の血、飲める?」
「…………」
リーゼはどうしてか、真っ赤になった顔でコクリと1つ頷く。
熱……ではないと思うのだが、吸血鬼が血を不足させた場合、病にかかるのかを考えればそれでもおかしくはない。早く血を飲ませよう。
「そこ、に……寝てくださいまし」
「え? あ、うん。いいけど」
さっきまでリーゼが寝ていたベッドにゴロンと寝転がる。そこに……リーゼが跨ってきた! はい!?
「り、リーゼさん? なにを……」
「い、一定量の吸血をする場合、指からは難しいんですの。この場合は、く、く、首筋……から……」
リーゼの顔がさらに赤くなる。それでわかった。熱なんかじゃない。恥ずかしかったのか。
これでもリーゼは女の子だ。首筋から吸血するとなれば男の僕に嫌でも密着することになる。
なんで赤くなってるのなんて聞いてたらデリカシーがなかったな。危ない危ない。
僕はリーゼに従っておこう。吸血される側が変な行動を起こして吸血失敗とかになってしまえば洒落にならない。
「そ、それで……血を吸っている時は…………私の体を、だ、だ、抱きしめていて、ほしいんですの」
「はい???????」
「体を押さえておくためですわっ!! 今の私はフラフラなんですのっ! 血を吸う時にふらついてアストさんが怪我したら大変ですわっ! 大変!」
「う、うん。わか………った……」
いや、全然わかってませんけど。っていうかリーゼさんちょっと元気になってません? 言うほどフラフラしてなくない???
「じゃあ………………失礼しますわ」
リーゼはゆっくりと、僕に向けてその綺麗で華奢な体を倒してくる。僕はそれを迎えて、背中に腕を回して優しく抱きしめる。
「んむっ!」
「…………」
抱きしめた瞬間にビクッ!と体を震わせるリーゼ。
「…………ねぇ、やめようか?」
「いえっ! ちょっとビックリしただけですわっ! ぞ、続行!」
リーゼは続けろと促すので抱きしめる腕の力を少しだけ強める。リーゼが僕から離れないように。
彼女は口を開け、小さな棘を思わせる犬歯を向く。それは僕の首筋に近づいていき、
「少しだけ痛みますわよ」
つぷ…………、と僕の肌に入っていった。
「あ…………ぅ、ぁ………」
ナイフのごとき彼女の吸血鬼の歯。僕の中へ侵入したとわかる。普段感じることのない痛みに変な声まで出てしまう。
リーゼの喉がこくり、と動く。僕の血液が、彼女の喉を通っているのか。
それこそが彼女にとっての生命の泉。だが、同時にそれは僕の生命の泉でもある。
彼女に命が注がれる度、僕の命が奪われてゆく。
「血を与える」。簡単に聴こえるが、徐々に僕の意識が薄くなっていくところを見ると吸血行為とは気軽に受け入れていいものではないのかもしれない。
それでも僕はリーゼの体を強く抱きしめ続ける。この、力を入れれば折れそうなほどに細く、自分なんかが触ってもいいのかと躊躇ってしまうほどに綺麗な体を。
もう、この世界で、彼女が興奮している息と、喉を鳴らす音しか、聴こえ……
「アストさんっ!!」
リーゼが声を張り上げると、アストは意識を浮上させる。虚ろになりかけた目は明瞭になった。
「リー…………ゼ?」
「よかったですわ。少し飲みすぎたかもしれませんわね。本当に申し訳ないですわ」
アストの意識が落ちそうになる寸前でリーゼの体に十分な血が吸血され、真紅に光っていた目も元の金色に戻った。
しかし、問題はそこだけではなかった。これはリーゼが危惧していたことだが、吸血鬼には「血の渇望」がある。血を不足させた状態において、血を前にして平静を保つことはかなり難しいのだ。
故に吸血行為を中断することができるかどうか。それがリーゼにとっての一番の恐怖だった。
元々、吸血行為に相手を労わる必要などない。一滴残らず吸い尽くす方が「普通」なのだ。手加減して吸うなんてことは吸血鬼にとって経験のないことだった。
下手をすれば、いいや、十中八九アストの体から血を全て奪いかねない。リーゼはそれこそ全神経を集中して吸血行為に入っていた。彼に自分の体を抱きしめさせたのは、彼の腕の力が弱まる時にそれを身体的に感知してすぐに中断するためのものだった。気休め程度ではあったが。
それでも種族に刻まれたものは恐ろしい。今の今まで完全に我を失っていたのだから。
なんとかギリギリのところで終われたことに、深く安堵していた。
「アストさん。今傷を塞ぎますわ」
リーゼは吸血行為のために傷をつけたアストの首筋を、自分の歯で噛んで血をつけた舌でペロペロと優しく舐める。
傷ついた首筋が吸血鬼の血によって高速治癒されていく。それはむしろ心地よかった。…………舐められるという行為自体にその快感があったかもしれないが。
「リーゼは、大丈夫?」
「私はこの通り。アストさんの方が心配なくらいですわ」
「僕は平気だよ。ちょっと力が抜けた感じがするけど。休めばなんとか」
彼女を安心させるために頑張って笑みを浮かべる。リーゼの顔色は……すっかり良くなっていた。手で頬に触れて髪をかけ分けると、血色の良さもわかる。
アストのそんな突然の行動にドキリとしたのか、
「アストさん…………」
リーゼは妙に色っぽい声を出す。目もどこかうっとりとしていた。
目を瞑り、ほんの少し、口を尖らせる。起き上がろうとしていたアストを押し倒す。
「り、リーゼ? なにを……」
自分達以外誰もいない暗い保健室。男女2人一緒のベッド。
そんな場所で、美しい彼女の薄いピンクの唇が…………どんどん近づき、近づき…………とうとう2つの唇が。
「はいアウトー!」
アストのものでもない。リーゼのものでもない。第三の声。それと共にアストの顔へと倒れこもうとしていたリーゼの頭をガシリと掴む手。
その主は怒りでピクピクと顔をヒクつかせていたベルベットだった。
「ふんっ!」
片手でリーゼをぶん投げ、アンリーが使っている机に顔から突っ込ませる。
「この発情蝙蝠。そんなにムラムラしてるなら机とでも口づけしてなさい。………………アスト、変なことされてない!? 大丈夫!?」
目の前で物凄い二面性を見せてくるベルベット。ベタベタと僕の体を触りまくってくる。
その後ろにはアンリーさんもいた。若干、苦笑いを浮かべて自分の机に投げ込まれたリーゼを引っ張りあげていた。
「お前、汚れたシーツ片づけるのもあたしの仕事なんだからさ。いくらなんでも保健室でセック─」
「そんなことしようとは思ってませんわ!!」
呆れるアンリーさんに真っ赤な顔で抗議するリーゼ。
にしても……あ~ドキドキした。あのまま進んじゃってたらキスしてたんじゃなかろうか。いくら僕の血がリーゼの命を助けたとはいえ、そこまでの礼はオーバーすぎる。…………ちょ、ちょっとだけベルベットが来るのが遅かったらなぁ……とか思っちゃったりして。ははは……。
「ん? っていうかなんでベルベットの血は無理だったのに僕の血なら普通に飲めたの?」
「それはな。こいつが─」
「アストさんが人間だからですわ!!!! それ以外に理由なんてありませんの!! ええ、ありませんわ!!!!」
リーゼはアンリーさんの口を封じてそう叫ぶ。大きな声でそのこと言わないでぇ……!
ベルベットは何やらイラっとしているが……そういうことなら深くは追及しないでおこう。リーゼが言うなら他に確かめようもないし。
「じゃあ、僕はもう出るね。教室にムウ……バハムートを置いて出ちゃったからさ。それに……補習の小テスト放ってきちゃったし…………」
嫌なことを思い出して憂鬱になってきた。勉強したこと全部抜けちゃってるからこれ小テストヤバイかもしれない。
アストは急いで保健室を出た。それを確認すると、ベルベットとアンリーはリーゼの両腕をガシリと掴む。
「や~っぱりこいつそうだったわ。このクソ吸血鬼が!!」
「お前も意外と可愛いとこあるな~。なぁ、アストのどんなとこが良かったんだ?」
やはり、追及してきた。リーゼは心底ウザったい、という顔をする。
吸血鬼の体にはいくつもの厄介なルールが刻まれている。その中でもほとんどの吸血鬼に縁のない、されどとても厳しいルールがある。
それは、「人間に恋をしてしまった吸血鬼はその人間の血液しか飲めなくなる」というものだ。
噂によるとその人間以外の血液はまるでヘドロでも飲んだかのように感じてしまうらしい。現にリーゼもベルベットの血を飲んだ時にまさにそんな味がして吐いてしまった。
これは吸血鬼が人間という種を捕食し始めて、進化を繰り返すうちにこんなルールが体にできたらしい。
これが適用されてしまえば飲めるのは愛するその人間の血のみ。そうして愛された人間を早々に失血死させ、重要な捕食対象とは愛など結べないということをわからせる意味でもある。
無論、ずっと手加減して飲み続ければ問題ないが……吸血鬼にそんなことが可能かどうか怪しいところだ。ほぼ、不可能な所業である。
おそらく吸血鬼の中でも適用されること自体が珍しいこのルールにまんまとリーゼは苦しめられていた。
そしてそんな話をベルベットとアンリーが放っておくわけがない。ベルベットなら尚更。
否定したかったが……こうして実際にアストの血を飲んで助かってしまっていては否定のしようがない。
リーゼは依然として赤みが引かない顔のまま、
「クレールエンパイア、で……」
白状し始めたリーゼに2人は黙って一言一句漏らさぬと耳を立てる。
「き、『君を救う』って……言ってくれて…………」
「むむむ……」
「それで?」
ベルベットは顔を歪ませ、アンリーは続きを促す。
「君の心を、守る、とか……色々と……それが、なんだか、王子様みたいで……カッコイイなって……思ったの…………ですわ」
「お、おお……。お前見かけによらずけっこう乙女だな……ちょろっ!」
「う、うるさいですわっ! 誰だってあんなの好きになりますわよ! 色々あって私の心も弱ってたのですわ!」
リーゼは熱くなった顔をパタパタと仰ぐ。なんてことを言わされたんだ。これはしばらくこのネタで弄られると覚悟していた。
と、そこで意外にもベルベットが静かなことに気づく。
「…………よし。いける。脳内で再生できるわ……ああ……ああぁぁ……」
ベルベットは目を瞑って集中していた。リーゼが言われたというセリフを頭の中で再現しているようだ。
「こいつはこいつでキモさに拍車がかかってるな。なんかヤバイ薬でもキメてんのか……」
「まったくですわ」
さすがにアンリーもリーゼもげんなりとしていた。煩悩に集中しすぎて語彙も失っている哀れな友人にはもう声すらかけられない。
「さて、と。もう帰りますわ。騒がせましたわね」
ぽんぽんと服を払い、保健室の扉を開ける。
「じゃあなー色ボケ吸血鬼。もう恋煩いで保健室に来んなよ~。それはさすがにあたしも専門外だからな。ぷっ、くくく……」
「ぶっ殺しますわよド変態ヤブ医者」
それだけ言い残して、リーゼは自室に帰っていった。
「アスト……アスト……」
「いや、もうお前もいい加減帰れよ……」
まだ1人でトリップしていたベルベットの頭をベシンと叩いてアンリーは一件落着と一息ついた。




