表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘクセンナハトの魔王  作者: 四季雅
第1章 ヴェロニカ編
115/230

109話 手に入れろ……『必殺技』!?


 日曜。今日はジョーさんとの特訓が入っていた。

 僕は今日まで練習してきていた魔力のコントロールを見せる。


 体に纏った魔力を一層厚く、大きく纏う。ジョーさんは僕の体に拳を打つが、それを耐える。纏った魔力はブレぬまま。


 今度は纏った魔力を薄く、小さく。かと思えばまたさっきのように厚く、大きく。そして通常の状態に戻り……また、厚く。



「…………よし。ちっとスピードは遅いが及第点だ。よく頑張ったなアストぉ」



 ジョーさんは笑う。それを見て僕は安堵(あんど)の息を吐いた。


 ウィザーズランドでの一件。実戦で試せたのが大きかった。あれから自信というか、コツというか。そういうのが掴めたんだ。


「いやぁ~。ちょっと前に、乗ってた観覧車のゴンドラを落とされまして。その時にこの技術を使ってみたんですよ。おかげで助かりましたっ!」


「普通はそんな目に遭わねえからな…………」


 ケロッとした顔でそう言い放ったアストにジョーは今度は苦笑いを向ける。


「ま、まぁいい。そんなことよりアスト。次の特訓に入るぞぉ」


「次の特訓ですか?」


 どうやら僕は次のステップに進んでも問題ないと判断されたらしい。それはありがたいが……次は何をするのだろうか。

 そろそろ魔力に関しては基礎がわかってきたので応用をやらされそうではあるが……。



「ふっふっふ。喜べアストぉ。次は…………お前に『必殺技』を(さず)けるぜ!」


「ひ、必殺技!?」



 なんだそれは。か、カッコイイ……! こんなこと言えば怒られるかもだがちょっとワクワクしてしまっている自分がいる。


「おっ、やっぱりお前も男かぁ。ワクワクしてんのが見えるぜ」


「うっ!」


 バレてしまっていた。気づかぬうちに顔に出てしまったか。うぐぐ、仕方ない。これは男の(さが)なのだ。必殺技を覚えると聞いて心を(おど)らせないわけがない。


「まずは、見せてやるぜ。アスト、拳を俺に打ち込んできな」


 ジョーさんは構えを取る。殴ってこいと指示されるが……



「ジョーさん、魔力が……!」



 なんとジョーさんは()()()()()()()()()()()。体の方も、おそらくガードに使うであろう腕にも魔力を1ミリも纏っていないのだ!


 そんな状態で今から僕の魔力を纏った拳を食らえばひとたまりもない。本気で殴れば骨だって普通に折れる。

 しかし、ジョーさんは集中しているのか。険しい目をこちらに向けている。まるで……全てを見逃さないというように。



(何を迷っているんだ。ジョーさんを信じろ。これじゃ僕がジョーさんを舐めてるみたいじゃないか)



 ジョーさんは僕の師匠だ。だからこそ弟子は師匠を信じて進まなければ覚えられることも覚えられない。


 それに……「男」なら、進め!


「いきます!!」


「おう…………来い」


 僕は拳に魔力を集中させ……ジョーさんに打ち込む!


 ジョーさんはその僕の拳を、魔力を纏っていない開いた手の平で受けようとして…………









(え……!?)


 次の瞬間には、アストは()()()()()()


「アスト。起きろ」


「はっ! ぼ、僕は……?」


「見事に俺が使った技を食らって気絶しちまったなぁ。必殺技─『カウンターバースト』によぉ」


 カウンター……バースト!? 僕はそれを食らったのか。


 思い返すと、ジョーさんの言ったように僕はカウンターを受けた気がする。

 僕の拳が、ジョーさんが前へ突き出してきた手のひらへ着弾した次の瞬間、ジョーさんの逆側の腕から伸びた拳が僕の意識をわずか一発で刈り取った。


 そう聞けば、なんだ、ただのごくごく普通のカウンターじゃん。という感想しか漏れないが……




(僕の拳が当たった瞬間…………僕の纏っていた魔力が全部消えた……)




 そう。自分が拳に纏わせていた魔力。そしてカウンターに備えるために基本的に常時体に纏わせている魔力。それら全てが自分の意思に反して消えたのだ。


 それだけではない。それと同時にジョーさんの方の魔力が激増した。それはまるで……僕の魔力を「()()()()()」かのように。


 結果、なにも魔力を纏っていない状態の自分に対して魔力が倍増したジョーさんの拳がカウンターとして打ち込まれ、一撃で伏した。というわけだ。


 そんなことになっても自分の骨は折れていない。これはおそらくジョーさんが手加減してくれたおかげだろう。だが、実戦ならば気絶どころでは済まなかったかもしれない。


「いったい……なんでこんなことに…………」


 僕はもう魔力を纏うことに関しては完璧……のはずだ。まさか(にぶ)ったせいで失敗した、なんてことはあるまい。しかもジョーさんに拳を当てた瞬間に。たまたま。偶然。

 僕だって気は抜かなかったから尚更失敗するわけもない。



「おもしれぇ顔してるなぁアスト」



 この謎に考えふけっているとジョーさんはくっくっく、と笑いながら手を差し出してくれる。僕はそれを手に取って立ち上がると……


「あの……さっき奇妙なことが起こったんですけど、」


「『纏っていた魔力が消えた』……か?」


「! はい、それです!!」


 もうお手上げとばかりに答えを聞こうとすると、言い当てられてしまった。自分に起きた謎の現象を。

 ジョーさんまで知っているということは、これこそが…………


「そうだ。お前に起きたその現象こそが『カウンターバースト』の真価。相手の魔力を奪い取り、尚且つこっちはその魔力を奪ったことで超強化された一撃を、魔力がなくなって無防備になった相手にぶち込む。強弱逆転、ジャイアントキリングの必殺技だぁ!!」


 強弱逆転…………!!


 まさに、まさに、自分にピッタリの技じゃないか。

 今まで魔力がないことにどれだけ苦労したことか。はっきり言って不利なんてどころの話じゃなかった。戦いの土俵に上がることすら許されないなんてことは一度だけではない。それこそ瞬殺されてきた記憶ばかり蘇る。

 しかし、だ。今度はそれを相手に押し付けることが可能だというわけか。なんて恐ろしい技だ。



「おいおい……ちょっと都合のいい解釈をしてねえかぁ?」


「へ?」


「この技は言った通りの効果を持っているが、その仕組みを知ればこれの難度、使う状況、そこに至るまでの苦労をとことん知ることになるぞ」



 何やら言葉の端々から「そんな便利なもんじゃねえぞ」というものを感じる。どうしてだろうか。こんなもの覚えてしまえばポンポン使っていってバンバン相手を倒していけると思うけれども。


「教えてやるか。仕組みを」


 頭をボリボリと掻いてジョーさんは、僕にレクチャーしてくれる。『カウンターバースト』を。

 そしてその仕組みを聞くと……



「ええええええぇぇぇぇ!?!?!?!?!?!? そんなこと無理ですって! 僕の魔力コントロールってまだ初心者に毛が生えた程度ですよ!? いや、上達したとしてもそんなこと可能なんですか!?」


「だから言ったろ。この技はめっちゃ強いが、覚えるのも難しい、使う状況だって難しい。難しいことだらけの必殺技だ」


 ぐ……! 世の中甘いことだけじゃないというのを先程された説明から味わった。


「とりあえず、練習あるのみだ」


「そうですね…………」


 結局、今回もひたすら練習か。長い道のりになりそうだ。

 『カウンターバースト』。自分が身に付けられるのかはまだわからないけど、とにかくガムシャラに進むだけだ。


「もう『カウンターバースト』の仕組みからお前がやる練習はわかっただろ?」


「はい。自分以外の、『他の人の魔力をよく観察すること』。さらに『瞬時に、纏った魔力の強さを変化できるようになること』。……そうですね?」


「当たりだ」


 今回、技を会得(えとく)するのに必要なのはそれらの要素。「自分の魔力」だけでなく「相手の魔力」も今回の重要な鍵になってくるのだ。


 つまり…………


「僕もそろそろ『魔力感知』ができないといけないわけですね」


「おう。『魔力感知』は必須のスキルだ。相手の力量を測るのにも必要だからな。これを機に覚えてもらう」


「はい!」


 これは大変になりそうだ。しかし、これを乗り越えた僕はもっと強くなっている。


 絶対に……習得してやるっ!!



 ジョーさんとこれからの練習メニューを確認。そして軽い練習をして今日の特訓は終了した。




   ♦




「先輩! マジ頼んますよ……」


 学院のとある場所。そこで1年生と2年生が秘密の話し合いをしていた。

 1年生はつい先日の魔法戦闘の時間でアレンに痛い目を見せられたボルゴ。もう1人の2年生はデカい図体に筋肉の鎧を纏った、見るだけで人を威圧するような目をした男だった。


 この男も魔法騎士コースであり、学院ではとある行いで有名な者だった。


 その行いとは……「弱い者イジメ」。


 この男、名を「グールス」という者は自分よりも下にいる者をイジメ、パシらせることを日常的に行っていた。

 それだけでなく逆らった者には暴力をも振るう。はっきり言って周りからの評価も悪い生徒であった。


 しかし、それは全てこの生徒が1組だからこそ成り立っていることである。2年の2組と3組の生徒の数人ほどはグールスからのイジメに屈服している。

 そんな荒くれ者に、ボルゴは頼み事があった。


「俺と同じ学年に調子乗ってる奴がいるんです。名前はアスト・ローゼン。3組のクズですよ。いつもの先輩のやり方で痛い目見せてやってください」


 ボルゴの目的はアスト。先日の魔法戦闘で受けた屈辱を倍にして返してやろうと画策していた。


「あぁ……? めんどくせぇなぁ~」


 ボルゴとグールスは昔からの付き合いもあり、こうしてボルゴの頼みを聞くことは一度や二度ではなかったが、どうして自分が違う学年の、知らない奴をわざわざ出向いてイジメなければならないのか。


「まぁ聞いてくださいよ。こいつ、珍しく同部屋のパートナーが女なんですよ」


「ほう?」


「もし、こいつをうまく丸め込むことができれば…………ねぇ?」


 ボルゴはニヤリと嫌な笑みを作る。それに応じてグールスも同じ笑みを作った。

 考えることは同じか。最低な考えを巡らせる。

 

「そうだなぁ……。そういうのも面白いなぁ」


 グールスは了承ともとれる、同調を返事と共に見せる。


「くく、俺の暴力に屈服したアスト・ローゼンくんにはぜひともパートナーちゃんの普段見えない写真でも撮ってきてもらおうかねぇ」


「へへへ、なんすか先輩。その普段見えない写真っつーのは……」


「わかってるくせによ。……ま、裸の1つや2つ同部屋なら簡単だろ」


 グールスとボルゴは大きく笑った。その毒牙はアストの知らないところで鋭く研がれていく……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ