96話 プロローグ 【エピソード4 完全理想の支配と救世の竜神】
ええと……「漆黒の竜と勇気の花」に「電導する旋律と聖なる星」に「真紅の女王と盟約の鎮魂歌」は話したから……これでもう4ページ目か。そろそろ彼にも大きな試練が……。次は「竜魔争乱」か。
ん? ああ……ごめん。ちょっと考え事をしていたよ。
そうだね……今日は「魔王の力」について話そうかな。
「魔王の力」とは魔王が人々に与えた力。
「魔法」や「異能」には属さない力で、その力は「支配」や……おっと、まだ「支配」しか出てなかったね。危ない危ない。
……え? 「禁呪」の魔王? あれ……話した記憶はないんだけど……。まぁいいや。
「魔王後継者」に選ばれる基準はその者の運命にある。決して凡人が手に入れられる力なんかじゃない。特別な力を手にする者もまた特別な運命を有する者でなければ。
魔王はどこからそれを見て、それを判断しているのかまではわからないけどね。
魔王後継者が死んだ場合、その能力はまた別の誰かに受け継がれる。「いつ」、「誰が」っていうのは魔王のみぞ知るってところだ。
わかりやすく言うとアスト・ローゼンが死ねばまたいつかの誰かに「魔王の心臓」の力が渡されるってこと。
「魔王の力」は魔王の娯楽目的で人々に与えられたことになってるけど……こんなシステムまで用意されてるってことは本当にそうなんだろうか? それだけじゃない気もするよね。
魔王後継者となった者は魔王が創り出した魔物─『眷属』と「契約」することができる。
その魔物はこの世界とはまた別の世界に存在する「別次元の魔物」。その魔物を自分の配下とすることができるのだ。
『眷属』っていうのは……ああ……これはまだ言っちゃいけなかったっけ。ゼオン・イグナティスが使ってたからもう明らかになってたと思ったんだけど……。
え? ミーティア・メイザスの時にもう聞いたって? う~ん。彼女のことも話した記憶はないんだけどなぁ……。いったいどこで彼女のことを知ったんだい?
ダメだ。今日はどうも『語り部』としての仕事が全然できてないね。これ以上は喋らない方がいいか。
というのも、今はちょっと忙しくてね。やらなきゃいけないこともあるから今日だけは勘弁してくれないかな。
それじゃあ……魔王の少年の次なるページを見てみようか。
アスト・ローゼン。今回は……大きな、とても大きな試練が君を待っているよ。
君がどうやってその試練を潜り抜けるか。
実に楽しみだ。
♦
「僕はヒーローになりたい!」
どこかの子供はそんなことを言った。
テレビの前で少年は確かな意思ではなく好奇心をその胸に携える。
少年が見ていたのはよくあるヒーロー物のアニメだった。正義のヒーローが悪を倒して世界を平和にする。それが鉄板だが少年の心に刺さるには申し分ない。
自分も世界を救ってみたい。そんな大きなことが少年にとっては身近な目標程度のハードルにしか感じない。これも子供の特権だ。
いつか、いつかでいい。自分もこんな風にキラキラ輝く、正義のヒーローになりたい。世界を救いたい。
少年はその日に誓った。
「……ん」
朝。睡眠からの覚醒。
なんだか懐かしい夢を見ていたような気がする。子供の頃……のことだろうか。どうも夢を詳細に思い出すことは難しい。
朝日に照らされ、眩しそうに目を細める。まだボンヤリした思考を叩き起こす。すぐにやることがあるからいつまでもボーっとしていられない。
完全に体を目覚めさせ、立ち上がる。さっき見た夢はなんだっけ?
「そうだ。僕は、ヒーローになりたかったんだ」
ようやく夢の内容を思い出した。懐かしい。遥か、遥か昔のこと。あの頃の想いはまだ胸の中。
「僕は世界を救う。悪を決して許しはしない」
それが今の想い。子供の頃から変わらずの想い。「遥か昔」にも誓った想い。
この狂った世界を変えるために。自分は立ち上がったのだ。
そう。全てを救うために。
それは、12個のマジックトリガー、そしてたった1人のとある少女を巡るアスト、ベルベットの戦い。
ってことで、ようやく第1章「ヴェロニカ編」開幕です。ここから「ヘクセンナハトの魔王」本編が始動します。いつもと変わらぬ駄文ですがお付き合いくださればありがたいです。面白いと思ってくれればこれ以上の喜びはありませんので…………では、今回もよろしく!




