3話 道
やるべきことが決まるとそれまでの暗雲が嘘のように晴れた気がしてね。
実際にはなにも変わっていないのに、進むべき道が頭の中に浮かんでくるんだ。
その道がどこに続くかなんてわからないけど、きっと良くなるだろうっていう根拠のない自信を持ってたよ。
彼女を見つけることができる、僕はヒーローとしてマスコミに取材を受けるかもなんて考えていた、ばかな話さ。
とにかく僕はコンビニで聞き込みをした、結果、一番近くのコンビニの夜勤担当が彼女を覚えていたんだ。
夜に来る女性はめずらしくて、写真を見せるとすぐにわかったらしい。
彼女はコンビニに来ていた、パスタを買ったらしい。夜食にするつもりだったんだろう。
でも彼女は家に戻っていない。
ここから家までのほんの数百メートルの間に、なにかあったのだ。
僕はコンビニから彼女の家まで実際に歩いてみた。
何度も何度も往復した、ここでなにかあった、その微かな痕跡を見逃さないように。
時刻が午前3時になったころに僕はあることに気が付いた。
その土地には門とコンクリートでできた垣根に覆われた、小さな小屋が建っていた。
道の向かいは一軒家が並んでいたが、どこにも人の住んでる気配はなかった。
この小屋と家々の間の道がやけに暗かったんだ。
東京では夜になっても真っ暗で見えない闇というものはない。
だいたい街灯が立っているし、家々の窓からも明かりが漏れていて、明るすぎて星が見えないなんて言われるほどだった。
コンビニに代表される二十四時間営業の店も煌々と明かりをつけている。
その明かりがこの道にはほとんどない。
街灯が2本離れたところにあるがそれだけで、街灯の下はよく見えたが少し明かりから離れると暗闇になっていた。
ここだ。
僕は思った、なにかあるならここしかない。
ふと視界を黒い大きなものが横切った気がした、猫のような、もっと大きいものが。
正体はわからなかった、一瞬のことだったから。
僕は彼女を探すのに夢中で、他のことなんてどうでもよくなっていた。
だからこの時の黒い影について考えるなんてしなかった。
それがどういう意味を持つかなんて、想像すらしなかった。
今でも後悔しているよ、もっとうまくやれたんじゃないかってね。
……話が逸れてしまったね、とにかく僕は現場を掴んだ。
――そして愚かにも現場を張り込むことにしたんだ。