0話 館にて
どうも私はサボリ癖があるようで、~~日置きに更新します!というのが苦手なようです。
そこで一旦全部書き上げて、完結させてから投稿してみることにしました。
予約投稿を利用して1時間ごとに更新されるはずです。全6部
薄暗い部屋。
片隅にある机の上に置かれた蝋燭の灯が部屋を照らしている。他に明かりはなく、窓らしきものもない。湿った木の嫌な臭いが床から立ちのぼっている。
女が部屋の隅で声もあげずに泣いている。
(……どうしてこんなことになっちゃったんだろう)
頑張って勉強して、東京の大学に入学できた。生まれて初めて男の人にちやほやされて、お酒を飲んだ。遊びに行くのに車が必要ない都会は刺激に満ちていて、毎日が楽しかった。
これからの私の人生は明るいものになるはずではなかったのか。
それが攫われてどこだかもわからない、不衛生な小汚い部屋に入れられて。わけもわからず泣いている。
(……コンビニなんか行くんじゃなかった)
独り暮らしを始めてすぐに、家事の面倒に辟易して、コンビニでお弁当を買って捨てるだけの生活になっていた。
パソコンで生放送の配信を見ていたら深夜になっていて、お腹が空いたのでコンビニに行くことにしたのだった。
――女の子は夜出歩かないの――母の言葉を思い出す。
危ないからという言葉が響くことはなかった、危険に出会ったことがなかったから、今日までは。
女の身体がぶるりと震える。
あの――怪物、見ただけで怖気の走るあれはいったい私をどうするつもりだろう。
私はこれからどうなってしまうんだろう。
ぺたぺたと濡れた足音が聞こえる。
この部屋へと向かっているようだ。
(……こないで)
(……おねがいだからっ)
身体の内で拳ほどもある塊がどくどくと脈動している。激しい鼓動のせいか息苦しい。
涙はとうに涸れ、顔に張りついて固まっていた。
恐怖のあまりおかしくなってしまえばいいのに、気絶して気が付いたら全部終わっていたらいいのに。
願いが届くことはない。
音が部屋の前で止まる。
薄暗い闇に蝋燭の灯が揺らめいている。
まるで悪夢のようであったが、はっきりとした感覚が現実だと伝えていた。
扉が開く。