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91話 グループで仕事

「皆さん、今回は集まっていただきありがとうございます」

 まずは丁寧に礼をする。

「すでにお話もアブタール陛下からお聞きかと思いますが、この地下34階層近辺に極めて重要な遺跡と資料があることがわかりました。元々、俺達だけでそこの資料を地上に運んでいましたが、地下が深くて能率が上がりません」


 一同を見てみると、かなりやる気でいてくれているらしい。よかった、よかった。


「そこで俺達は地下20階層まで荷物を運びますので、それを皆さんに地上まで持っていってもらいたいんです。よろしくお願いします」


 マルティナのパーティーのリーダー格の剣士ライコーがうなずいた。年齢は俺と同じぐらいか。

「王国のプロジェクトですから、しっかりと働かせていただきますよ」


「はい、よろしくお願いします。これで能率が倍以上になるはずです。これは信頼できで、なおかつ強い冒険者の方にしかお願いできないことなんで」


「わかっています。あなた達のパーティーの要請とあらば喜んでお受けしますよ」


 ちょっと賞讃の言葉がむずがゆいぐらいだな。


「では、俺達は地下34階層に向かいますので!」


 これで荷物を運んで移動する時間が俺達に限って言えば半分以下に短縮された。時間が半分以下になるということは疲労も抑えられるから、ペースはさらに速くなる。


「これなら、25階層ぐらいに詰所を置いたほうがよかったんじゃない? そしたらさらに楽になったたわ」

「ミーシャの言うことももっともだけど、俺達が依頼する手前、危険が伴う階層まで降りてきてもらうわけにはいかないからな。どう考えても安全だろというのが、20階層あたりだった」


 俺達が強すぎるのでたまに勘違いしそうになるが、地下25階層なんてところにひょいひょい下りてこられるパーティーはほぼいないのだ。


 到達はできてもそこで呑気に時間をつぶしていられる連中は本当に上澄みの層に限られる。

 というか、今回協力を頼んだパーティーですら25階層で同じ仕事を頼まれたら、二の足を踏むんじゃないだろうか。パーティー全員が安全というラインで考えると、20階層あたりが落としどころになった。


 ペースが早くなったおかげで十日も作業を続けると、文字資料と思われる部分はすべて回収できた。

 逆に言うと、それほどまでに大量の紙やら石板やらが置いてあったのだ。

 こんなところに立ち寄る人間はずっといなかったから奇跡的にほぼ完璧に残ったわけだ。それは装備品などがきれいに残っていたことからも想像がつく。


 ただ、文字資料が終わっても、法具と思われるものなど宗教的なアイテムは無数にある。これも運んでいく。


「これ、すべて個別に売りさばいたら、とてつもない額になるのにな……」

 レナはマジで寂しそうだった。

 三人がかりで服が入った箱を運んでいる時もずっと嘆いていた。大好きなおもちゃをとりあげられた子供みたいだと思った。

 盗賊にとったら、それぐらいのことなんだろうな……。

「王国一の盗賊として名を残すことになるかもしれないんだけどな……」


「それって、おかしくない?」

 ミーシャは何か違和感を覚えたらしい。

「盗賊が名を残すには盗んだことがどこかで明るみにならないといけないでしょ。それって、盗賊としては失敗してるじゃない。だから、あなたの言ってることはどこか変よ」


「そう言われるとそうかもしれないですね……。で、でも、お宝は盗賊のロマンなんですよ!」

「でも、これで公式に歴史に名を残せるはずよ。遺跡を発見したも同然なんだから。これまでは存在を知ってる冒険者がいたとっしても、そこを発掘することはできなかったわけよ」

「それはそうですけど、王国公認だとロマンがないんですよ……。姉御にはこの気持ちわかってもらえないかな……」


「なっ……まるで私にはロマンを解する心がないみたいじゃない……」


 俺が言うとかえって火種になりそうなので黙っていた。

 ちなみに俺としてはどっちの言いたいことも割とわかるつもりだ。レナの言ってることが矛盾してるだろというのもわかるし、ミーシャがリアリストすぎるという意味もわかる。


 そもそもだけど、猫ってどちらかというとリアリストなのだと思う。自分が楽しいことをいかに最大化できるかと考えて生きている。家猫でも野良猫でもそこは変わらないはずだ。


「じゃあ、ご主人様は私とレナ、どっちの味方をしてくれるの?」

「どう答えても気まずくなるようなことを聞くなよ……」

 なんだ、味方って表現。じゃあ、もう片方の敵なのかよ……。


「じゃあ、私にロマンがあるかないかって話でもいいわよ」

「ミーシャにはいいところがたくさんあるぞ。かわいいし」

「ちょっと! 思いっきり話そらしてない!?」

 そのやりとりにレナが笑っていた。


「ご主人様にロマンがないって言われたわ。ご主人様とレナを置いて走って逃げようかしら」

「やめろ! こっちの死活問題だ!」

「そうよね。冒険者はダンジョンで生き残ることのほうが大事で、ロマンは二の次よね」

 なんだか上手くミーシャがまとめた。

「そうだな。だから、俺もロマンなんてものはないんだよ」


 これ、しばらくはミーシャにロマンのことでいじられそうだな……。


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