88話 パーティー最強装備
ミーシャのローブが見つかった後、俺たちはさらにいいものがないかとひたすらいいものを探した。探したといっても、探す能力があるのはレナだけだが。
その結果、さらに俺が着用できる金属製の鎧が見つかった。
これもどちらも魔法の加護がかかっていて、防御性能の面で優れていた。
ミーシャのローブみたいなチート性能ほどではなかったが、たとえば俺のものだと敵の魔法にかかりづらくなる。
これは実際に装備してステータス変化を見た時に気付いた。
さらにレナいわく、現在は使われていない特殊な合金を使用していて、冒険者の鎧としても、一流のものらしい。
「多分、かつての宗教の中でも特別な役割を果たす剣士のためのものですぜ。上等すぎて値段もつけられねえ……」
「やっぱり、この部屋、大当たりだな」
「ここまで保存状態がいいっていうことは、過去にここに来た冒険者がほとんどいなかったということね。しかも、じっくり余裕がなかったってことでしょ」
ミーシャの仮説でほぼ正解なんだろう。でなければ、こんな装備品を無視するわけがない。
「優れた装備品を手にして強くなるためには、それなりに強くないといけない。矛盾していると言えばしているわね」
「ここに来れる時点で、冒険者としては一流だからな。それより上を目指す意味ってあまりないのかもな」
「まだ地下がある以上は目指さないともったいないけど、私達って特例だし、普通は満足しちゃうのかもね」
俺とミーシャがしゃべっている間もレナは黙々と作業を続けていた。
そして、「よーし! 来た!」と声をあげた。
「今度は何が出たんだ?」
「私が着れる軽い服がありました」
レナが出したのはごく普通の布の服に見えた。大昔からほとんど変化のないオールドスタイルだと思う。
「これも加護の魔法がかかってるんで、いい効果がありますよ。あっちで着替えてきますぜ」
「ご主人様、のぞかないでね」
「いちいち言うな、ミーシャ……」
しばらく待っていると、ドヤ顔をしたレナが視界に入ってきた。
「へへっ。これ、素早さが大幅に向上するものでしたぜ」
そう言うと、すぐに俺の真後ろに移動していた。
「いつのまに後ろをとった……?」
「これ、素早さをプラスで50もする服ですな。まさに私のためにあるような服ですぜ」
ミーシャのほど強くはないが、やはり強力な装備品には違いない。
レナの素早さもだんだんと地上トップクラスになってきたな。
ミーシャがいるからトップになることはありえないのだけど。
以上、俺たちは地下34階層で大幅に武器と防具を強化したのだった。
●
地上に戻って、屋敷に帰ると無表情なヴェラドンナもちょっときょとんとしていた。
「何かすごくいいことでもありましたか? 皆さん、お顔がとても晴れやかですが」
「とてもいい収穫があったのよ。もう、ほくほくよ」
「私、王国一、幸せな盗賊になれたかな」
「盗賊って表現はややこしいから外では絶対に使うなよ……」
レナに一応釘を刺しておいた。
でも、俺も幸せだった。とくにダンジョンから出ても剣はすごく大事に扱っている。
間違って落としていないかと三分に一度は確認して歩いていたぐらいだ。
「その様子だと、ダンジョン攻略は一段落ついたのですかね。しばらくお休みになられますか?」
「いえ、攻略は別として、ダンジョンには何日も潜ることになりそうなの。国の役に立ちそうなことをしようかなと思ってね」
翌日から俺たちは地下34階層まで行っては、古い文書が入った箱を持ち出すということを繰り返した。
おそらくこの宗教に関する記録はいろいろと価値があるだろう。もしかすると、あのダンジョンの秘密もわかるかもしれない。
研究に関しては俺たちの手に負えることじゃないので、普通に王国に頼る。どのみち、これは国家に対して報告するべき次元のことだ。
俺たちは国王アブタールの元を訪れた。
こっちも王国に名を知られた冒険者パーティーなので謁見したい旨を告げれば、あっさり許可が下りた。願い出た当日の空き時間をもう指定されたぐらいだ。何日も待たされるだなんてこともなかった。
「アルスたちのパーティーよ。そなたたちに会えてうれしいぞ。それで、いったい何のようだ」
「ずばり、王国にとってとても価値のある遺産かと思います。まあ、価値に関しては歴史学者の方に決めていただくしかないのですが」
そこに俺たちの献上品を兵士たちがどんどん運んでくる。
人手がほしいことを告げたら、すぐに兵士を貸してくれたのだ。
「なにやら、大量にあるな。これだけでは何なのかよくわからんが」
「いえ、これでもごく一部なんです。ダンジョンの地下34階層で見つけた古代資料です」
その言葉にアブタールは目の色を変えた。
場合によってはそれは最重要機密に該当する恐れもある。
「それはもしかして、この王国の前の王朝に関する記録か?」
「詳しいことは俺たちではなく歴史学者の方に見てもらったほうがいいかと」
王様はすぐに城に詰めている歴史学者を呼ぶように兵士に命じた。
さて、いったいどういうことになるかな。
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