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9話 護衛役のプライド

今回はバトル回です。

 冷静に考えれば、食品が詰まっている帰り道のほうが狙われるに決まっている。


 相手から見れば餌のかたまりが動いてるようなもんだ。

 これで襲わないほうがおかしい。


 足音がして、俺たちの前に飛び出てくるものがあった。

 出てきたのはオオカミのような連中が5体。


 ただし、目が赤々と発光しているから、ミーシャの言うとおり、モンスターと表現したほうがいいだろうな。


「どう、やれる?」

 ミーシャが俺に問う。

「じゃあ、俺が三匹倒すから、ミーシャは残り二匹を頼む」

「強くなったわね、ご主人様」

 ミーシャが褒めてくれた。

 でも、褒めるのは勝ってからだな。


 敵の動きも鋭い。

 それでも俺もそれなりに鍛えてきた。


 なぎ払いの技能を使う。

 剣を弧を描くように思いきり振るう。


「喰らえっ!」

 襲いかかる二匹を同時に剣で弾き飛ばしつつ、斬った。

 致命傷にはならないだろうが、最初の攻撃としては上出来だ。


 攻撃の手をゆるめず、近くの一匹を刺し殺す。

 悪くない流れだ。


「ニャーッ!」

 その間にミーシャはあっさりとオオカミ一匹を殴殺していた。

 首の骨が折れてオオカミが沈黙する。

 世界一危ない猫パンチだと思う。


 俺も手負いになった連中を追撃しにかかる。


 対峙して、わざと剣の隙を作ると、オオカミ一匹が飛びかかってくる。

 かかったな。


 そこを足で蹴りあげる。

 こいつ、剣しか見てなかっただろ。


 蹴られた奴の姿勢が崩れる。

 あとは脳天に剣を突き刺して絶命させる。


 残り一匹は逃げようと背中を見せたところを後ろから斬り殺した。

 少し迷ったのが仇になったな。

 逃げる時は全力で逃げないとダメなんだ。


「サラリーマンから冒険者に無事転職できたかな」


 その頃にはミーシャがもう一匹も倒していた。


「やっぱりご主人様、強くなってるわね」

「まだLv10だけどな」

「多分、普通のLv10よりセンスがあるわ」


 しかし、またミーシャが険しい顔になる。

「まだ気配があるわ!」


 同時にルナリアの悲鳴が聞こえた。


 すぐに荷馬車のほうに戻る。


 どこかぬめぬめした体をした鬼のようなモンスタがーいた。

 そのくせ、手に鎌のような長い爪を伸ばしている。


 ルナリアは馬車から飛び出して逃げようとしたのだろう。

 しかし、敵に回り込まれて腰を抜かしたらしく、尻餅をついていた。

 不幸中の幸いで、まだ傷つけられてはいない。


「どうやら、沼地に住むインプみたいね。このへんで最も高位の敵」

 ミーシャがしゃべる声がルナリアに聞かれるかもしれないが、それどころではなかった。

 まあ、おそらく気が動転しているだろうから大丈夫だろうけど。


「ご主人様、気をつけて! あれは、さっきのザコとは違うわよ。知能も高いわ」

「それでもやらないと間に合わない!」


 こいつは魚じゃなくてルナリア自体を狙う気でいる!

 長い爪がルナリアに向かって振り下ろされる。


「た、助けてっ!」


 迷っている暇はなかった。


 俺は剣を持って突っこむ。

 間に合え!


「バカ! それじゃご主人様が殺されるだけよ!」

 無謀な攻撃だと思ったのか、ミーシャの声が飛ぶ。

「俺は護衛役なんだ!」


「じゃあ、私もご主人様を護衛するから!」


 ミーシャが俺の横をかすめて、俺を追い抜く。


 目で追いかけられないような速度。

 さすがのLv71。


 勢いよく跳躍すると、インプの顔に飛びつく。


 視界を突然さえぎられたインプは混乱した。

 動きが止まる。


 今だ!


 そこを胸目がけて剣を貫通させた。


 すぐに引き抜いて、さらに斬り裂く。


 がむしゃらに敵も爪を振り下ろしてくるが、これだけ近づけばどうにかなる。

 一回爪で肉をえぐられたが、たいした傷じゃない。

 その間にこちらは敵の腕を斬り落とす。


 決着はついた。

 ゆっくりとインプが倒れた。


=====

ケイジ

Lv11

職 業:戦士

体 力:96

魔 力:50

攻撃力:86

防御力:83

素早さ:90

知 力:74

技 能:刺突・なぎ払い・兜割り

その他:猫のパートナー。

=====


 あ、レベルも上がったらしい。 

 あのインプ、経験値高そうだもんな。


 ただ、ミーシャの「にゃー」という鳴き声がちょっと険のあるものだった。

 これはあとで説教される展開だな。


 でも、それより先にやらないといけないことがある。

「足や腕、痛めたりはしてない?」

 まだ倒れていたルナリアに手を差し伸べる。


「あ、ありがとうございます……」

 どうやら、ルナリアも人心地がついてきたらしい。


「怖い思いをした直後で恐縮だけど、ここは移動したほうがいい。さっきの奴みたいなのが、また来るかもしれない」

 それに馬を襲われても困るしな。

「わかりました……。私、頑張ります……」


 ルナリアも危ういと思ったのだろう、素直に従ってくれた。

 ただ、歩いている最中――

 ルナリアは俺のほうに寄りかかってきた。


「ルナリア?」

「ごめんなさい、私、怖くて、怖くて……」

 それはそうだよな。

 一歩間違えればルナリアは死んでいたんだ。

 俺はルナリアの肩をかき抱くようにした。

 こっちも恥ずかしいけど、ルナリアのためを思うと、こうするしかなかった。


「こうしていたら、少しは安心する?」

「はい、ありがとうございます……」

「悪いけど、ゆっくりでも歩くからね。じっとはできない」

「はい……」


 赤の他人じゃないし、とにかく体温を感じていれば、ルナリアも少しは落ち着くだろう。

 ただ――


 ミーシャが俺の肩に強引に乗ってきた。

 なんか、監視してるみたいだな……。

 いや、監視してるんだ、明らかに。


「ご主人様、浮気は猫パンチだからね」

 小声でミーシャがささやいた。

 Lv71の猫パンチは普通に死ぬ……。


◇ ◇ ◇


 そのあとは襲撃されることもなく、俺たちはどうにか無事に王都まで帰ってきた。

 想像はついていたけど、おかみさんに猛烈に感謝された。


「あなたの活躍は娘から聞いてるよ! 本当にありがとう!」

 おかみさんに何度もハグされた。できればルナリアにされたい。

 さすがにミーシャもこれには嫉妬しなかった。

 むしろ締め付けられすぎて、あばら骨にダメージが来そうなので止めてほしいのだが……。


「もう、宿代は今から30日タダでいいよ!」

「いや、さすがにちゃんとお金は払いますから!」


 それにちゃんと「ご褒美」はほかでもらえたのだ。


 王都にたどりついた日の夜、ルナリアが俺の部屋にやってきた。


 ちょうど、俺がミーシャから説教されていた時だった。

次回は本日夜11時頃の更新予定です!

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