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86話 装備品の部屋

 数分後、モンスターが部屋のほうにやってきた。アークデーモン――すべてのステータスがどれも平均的に高い上級モンスターだ。


「じゃあ、このナイフを使ってみますぜ」


「わかったわ。でも、一回攻撃したら、すぐに退くのよ。近くにいたら集中して狙われるから」


「私も死にたくないから、そこは注意します」


 ただ、アークデーモンはまず火炎の魔法を発してきた。


 ヤバい! アイテムの箱とかに引火する!


 しかし、ミーシャが炎の前に氷の壁を作ってくれた。

 炎はどうにかそれで打ち消せた。


「姉御、本当にありがとうございます……。心臓が止まるかと思った……」


「単純にこんなところで火事が起きたら面倒だからね。たしかにこのフロアは燃えるものが多いからこういう奴は危ないわ」


「お宝を燃やすんじゃねえよ!」


 レナがアークデーモンに新しいナイフで襲いかかる。


 ザシュッッッ!


 これも実にいい切れ味だった。

 しかも、刺したところの傷がかなり深くなっている。

 おそらく敵を殺傷するために刃の部分が複雑になっているのだ。

 まさしく殺すための武器。


 アークデーモンも想像以上の傷を受けたと思ったのか、わずかにひるんだ。


 しかし、戦闘では下がるのは悪手だ。まして、相手が素早い攻撃を繰り出すのなら、どんどん追い込まれる。


「じゃあ、もう一発行くぜ!」


 ザシュッ!


 アークデーモンはさらなる一撃にぐったりと倒れた。

 どうやら絶命したらしい。


「あれ、二回、攻撃を与えただけで勝っちまったんですかい……?」


 レナ自身が信じられないといった声を出している。


 地下34階層のモンスターをレナ一人があっさりとやっつけたわけだ。

 飛躍的な攻撃力の上昇と言っていい。


「どうだ? 俺の目利きは正しかっただろ? 武器のクオリティに関してはレナよりすごいぜ」


「いやあ……こんな劇的な変化があるだなんて思いませんでした……。このナイフは大事にとっとこう……」


「ここより下に潜る前に、この階層を徹底して調べるほうがよさそうね」


 ミーシャが腕組みしながら言った。

 ミーシャもいくらステータスがチートとはいえ、一人の冒険者だ。すぐれたアイテムがいくつも眠っているかもしれないんだったら、そちらに興味を引かれる。


「入ってくるモンスターは私が相手をするから、レナはどんどん調べていって。武器の鑑定はご主人様も手伝って」


「ああ、ミーシャ、わかった!」

「私もとことん調べますぜ!」


 結局、その部屋には俺の剣とナイフ以上の武器は見つからなかったものの、それに近いような剣やナイフ、鎌といったものがいくつか出てきた。


 そういう武器は売りに出さずに一度、俺たちで保管するということに決定した。店で出回るようになると、取り合いになる。


 けっこう時間が経ったが、もう一部屋ぐらいは調べて、地上に上がることになった。


 これまたガーゴイルが守っていたが、大幅に強化された俺たちパーティーの敵ではない。すぐに打倒して、部屋の中に入った。

 武器が多く置いてあった部屋と比べると、箱は全体的に小さいものが多い。


「ここならそう時間もかからなそうですね」


 レナはもう、ほとんど罠のチェックもなしに箱を開けていく。たしかに箱を罠にするなら、ガーゴイルは余計だろう。


「ああ、また服か」


 レナはあまり興味のなさそうな声を出す。

 宗教で使うものなのだろうが、今回はあまり派手な印象はない。むしろ、地味な黒いローブのようだ。今、ミーシャが着ているものとも大差ない。


「あれ? これ、何か魔法の加護がかかってるな。マジックアイテムか?」


 レナの態度が変わる。

 急に熱心にそのローブを調べだす。


「お前、魔法がかかってることもわかるのか。それって視覚的にわかるものじゃないだろうし、どうやって調べるんだ?」


「盗賊時代から使ってる道具の中にこういうのがあるんです」


 レナが出してきたのは木製の小さく薄い札みたいなものだ。表面には木彫りの模様がびっしり描かれている。どこかの民芸品か何かだろうか。


「これも一種のマジックアイテムで、魔法に反応すると発光するんでさ。ほら」


 その札をローブに近づけると、たしかにピンク色がその札に灯った。


「反応した色や、色の強さ、発光の仕方で効果がわかるんでさ。アイテムを買い取る立場の人間が使う、いわば業務用ですね」


「割と便利だな。値段も高そうだけど」


「高いですよ。盗賊時代、貴族の屋敷から頂戴しました」


「盗品かよ……」


「荘園の領民を締め付けて、私腹をこらしてた奴なんで、時効ってことにしといてください。これの使い道があるっていうのは盗賊の中でのステータスなんですよ」


「盗賊の中にもヒエラルキーがあるのか」


「だって、三流の盗賊はマジックアイテムがいくつもあるようなところまでたどり着けないですからね。これで調べないといけないようなものを見つけ出すのは、腕が確かって証拠なんですぜ」


 なるほど。たとえば、ダンジョンの低階層に珍しい効果のアイテムなんてない。


「説明はわかったわ。それで、そのローブはいいものなの?」


 ミーシャとしては結論のほうが気になるらしい。


「もうちょっと調べてみますが、かなりよさそうです」

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