EXTRA3 ヴェラドンナの生活
今回はダンジョン攻略中の留守番のヴェラドンナの話です。
ヴェラドンナはケイジたちが冒険に出ている時も、普段のとおりの無表情だ。
そして、その無表情のまま、淡々と掃除をしたりする。
しかし、大きく異なる点もいくつかある。
「ら~~~~ららら~ら~~~♪」
王都で流行っている歌をヴェラドンナは歌う。普段、歌を歌いながら仕事することなんてないので、これは一人でいる時の特別だ。
「ら~~~~ららら~ら~~~♪」
ちなみに歌詞はうろ覚えなので、全部らららですませている。
実はヴェラドンナは歌が好きだった。
暗殺者をしている頃から好きだった。
かといって、暗殺者がほがらかに歌っていたら、ばれてしまうし、セルウッド家の使用人として生きるようになったあとも、やっぱり歌を歌って仕事するわけにはいかないので、ほぼずっと封印してきたのだった。
ちなみに、その歌の実力は――
すごく音痴だった。
なかなか歌う状況がないために、全然成長していないのだ。のどの奥からちっとも声も出てないし、音程もはずれまくっている。
本人もある程度の自覚はしているので、余計に人がいる時には歌うことができないのだ。
歌いながらの掃除が終わったら、昼食の時間だ。
しかし、昼食はパンだけだ。
ヴェラドンナはメイドとしてのスペックは高いが、性格は面倒くさがりである。
なので、一人だけの場合はいろんな料理を作るようなことはわざわざしないのだ。
「食べられれば、それでいいのです」
パンをかじりながら、ヴェラドンナが独り言を言った。
そして、朝食のあとは自室で昼寝をする。
「食事時間が短縮できるから余裕です」
またヴェラドンナは独り言を言う。
実はヴェラドンナは何の拘束もなかった場合、とことんのんびりしたい性格なのだった。
むしろ、メイドという仕事が生活を律しているので、ちょうどいい職業とも言えた。
一時間後、起きてきたヴェラドンナはちゃんと仕事をこなした。
夕食はヴェラドンナはパンをかじるだけですませたが、いつケイジたちが帰ってくるかわからないので、簡単な用意はしておく。
「今日、お帰りになられないなら、それはそれでいいかもしれませんね」
久しぶりにゆっくりできていいなと思ったヴェラドンナだった。
なお、その日の夜遅く、ケイジたち一行は帰ってきた。
地下33階層まで潜っていたという。
「いやあ、俺達がいない間もしっかり掃除してるんだな。さすがだ」
「ほんとね。いつでも気を抜かないなんて立派だわ」
ちゃんと掃除しつつも気を抜いているとは思ってもいない冒険者一行だった。