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8話 ルナリアの本性

日間8位になりました! 自分の中で最高の順位です! 本当にありがとうございました!

「あっ、こんにちは、ルナリアです……」

 年のころは14、5歳だろうか。

 触ったら、それだけで崩れてしまいそうだ。

 そして、芸術作品のように美しい。むしろ、こんな子を見たら、彫刻家が自分の彫像の限界を感じて作品を壊してしまいそうだ。


「詐欺だ……」

 おかみさんから、なんでこの子が生まれたのか。

「おかみさん、昔、病弱な貴族の貴公子と駆け落ちしたとか、そういう過去ありますか?」

 失礼かもしれないが、複雑な家庭環境が想起される。


「正真正銘、私と旦那の子だよ。がっはっは!」

「あ~、こんな男勝りになるってわかってたら、結婚しなかったのにな……」

 冗談だと思うが、旦那さんも厨房から嘆いていた。


「あの、もしご迷惑でなければ私と買い付け、お願いできないでしょうか……?」

 ルナリアの声も美しい。


 ミーシャが俺のズボンを噛んで引っ張る。

 ご主人様、ぼうっとしすぎよ、とでも言いたげな目をしていた。


 お前だって魚に食いついたんだから、おあいこだろ……。

「わかりました。お受けします」

 実際、そろそろギルドの依頼もやるべきだったんだ。

 俺はもちろん同意した。


 ただし、部屋に戻ったら、ミーシャにちくちく小言を言われたが。

「結局、人間の男は若い人間の女がいいのよね」

「いや、それって、普通だろ……」

「私のこと、かわいいって何度も言ってくれたのに」

「それはウソじゃない」


 ミーシャは「は~」とため息をつく。

 そのため息自体は人間らしい。

「やっぱり、ご主人様の興味を引くには私も人間になるしかないのね」

 どうやら嫉妬されてるみたいだけど、女心は難しい。


◇ ◇ ◇


 次の日、ギルドに行って依頼を受けた。

 あくまでギルドを通してなので、店での口約束だけでというわけにはいかない。

 まあ、依頼者が俺以外の冒険者がやるというのをすべて拒否するだろうから、先に誰かに取られるということはないが。


 さらに翌日、それなりに大きな荷馬車が宿の前にあった。

「毎月、一回借りてるんだよ。まあ、ほとんど町の共有財産だね」

 おかみさんが「それじゃまかせたよ!」とまたげらげら笑った。


「あの、一応聞いておこうと思うんですけど」

 ちょっと気になったことがあった。

「冒険者の男が娘さんと旅していいんですか?」

「むしろ、浮いた話がなくて困ってんのさ。あの子は針仕事をやってるけど、女ばかりで出会いがなくてね」


 むしろ出会いの場なのか。

 あれ、じゃあ、けっこう狙い目なのか……?

「あと、もう一つの理由は出ていけばわかるよ」


 たしかに旅をしはじめたら、わかった。

「ミーシャちゃん、本当にかわいいです」

 ルナリアはミーシャを抱きながら歩いている。

 俺もルナリアも馬が疲れないように横を歩いていた。


「私、猫がすごく好きなんです。でも、町の猫はなかなかなついてくれる子がいなくて。飼い猫のこの子ならいけるかもって思って」

 なるほど。猫と一緒にちょっとした旅か。悪くはないかもしれない。

 ミーシャはしゃべるわけにもいかないので、「にゃーにゃー」とたまに愛想で鳴いた。

 ミーシャとしては俺のほうがいいんだろうけど、そこはお仕事だと思って割り切ってくれているようだ。


 目的の港町はナプールという名で、王都から南にいったところにある。

 距離としては40ナグ、キロで換算すると80キロちょっとだ。

 たしかに荷馬車を使うとなると片道2日ほどかかる。

 

 距離的に新鮮なものを届けるのはなかなか難しいのと輸送コストの問題で、魚の多くは干して王都に届けられる。日持ちもするし、軽くもなるからな。

 そういう話はルナリアから聞いた。

 もっと内気なキャラだと思っていたけど、二人で(ミーシャもいるけど)いるとけっこう気さくにしゃべってくれた。


「けど、護衛って俺だけでいいんですか?」

「王都とナプールの街道は、王都から海に一番近い幹線みたいなものなんです。治安は悪くはないですから」

 たしかに海に出る道を閉ざされたら大変だものな。


 ルナリアの言葉のとおりで、途中、荷馬車の中で一泊して、とくに問題なくナプールに着いた。

 港町のせいか、ケンカっ早そうなコワモテの男が多く歩いているが、冒険者ギルドも大差ないので、怖くはなかった。


 ここで魚を買い付けるために干物を扱っている業者のところに行った。

「いくらで買うか私が交渉するんです」

 そうルナリアは言った。

 本当に大丈夫かな……。

 海千山千の業者に高い値段をふっかけられそうだ。


 結論から言えば、何の問題もなかった。


 業者と会った途端、ルナリアの顔色が変わった。

 なんだろう、おかみさんが出てきた気がしたのだ。


「はい、ええと、こちら魚の干物が8箱で、6400ゲインですね」

 業者が値段を提示する。

「そりゃ、高すぎますね! ちょうど、今の時期はこの種類の魚は小さくて、もっと安くなきゃ買い手もつきませんよ!」

 ルナリアが声を張り上げて値切った。


「で、では、6000ゲインではどうでしょうか」

「まだ高いですね! ちょっと品物を見せてください。ああ、これ、色が悪い。形も悪い。大きくもない。こりゃ、4500ゲインが関の山ですね!」

「それでは商売になりません……。せめて5300ゲインは……」

「5000ゲイン!」

「わ……わかりました……」


 明らかに業者が押されている……。

 ていうか、ルナリアが押している……。


「ああ、あと、小魚の干物を2箱つけてください!」

「い、いくらででしょうか……?」

「次回から取引先変えましょうか?」

「わかりました……サービスでお付けします……」


 その様子を俺はミーシャを抱きながら見ていた。

「女って二面性があるのよ」

 ミーシャが小声で言った。

 ていうか、ルナリアの声が大きすぎるからどうせミーシャの声は聞こえないだろう。

「そうだな……。まあ、おかみさんの血だな、これ……」


 すべての取引がすんだあと、またどこか弱々しげなルナリアがやってきた。

「無事に終わりました。ありがとうございます……」

「ルナリアが派遣されたのがよくわかった」

「私、男の人と話すのは苦手なので緊張しました……」

 もう、ただのウソじゃん。


 さて、あとは荷馬車に干し魚を積んで帰るだけだ。

 でも、そんなに楽には行かなかった。


 夜、街道脇で、荷馬車の前で立って見張りをしていると、ミーシャが鼻をくんくんやった。

「獣の匂いだわ」

 犬ほどじゃなくても猫は鼻はかなりいい動物だ。


「野犬かな」

「モンスターの可能性のほうが高いわね」


 俺は剣を抜いた。

次回は夜6時頃の更新を予定しています。なんとか今日も三回更新ができればと思っております。

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