74話 ついにレベルアップ!
「じゃあ、これはあとで王家にお返しすることにしようか。うかつに俺たちが所有してて、そのことが知られても怪しまれるし」
有用なアイテムではあるんだろうけど、そこまでの必要性は俺たちにないからな。
「そうね。地下31階層にあったってことも私たちの力を知ってる王様なら納得してくれるでしょ」
というわけでアイテムをどうするかは決まった。皮の袋に入れて、先を進む。
地下31階層はそれ以上の危機などはなくて、地下32階層への階段を見つけた。
地下32階層もやっぱり神殿みたいな雰囲気の空間だ。
やけに光が差しているが、天井のあたりに魔法がかかっているらしい。
「これ、ガートレッド王国は把握してるのかな」
「おそらくしてないんじゃないかしら。あるいは話では聞いていてもややこしいから表にはあまり出してないとか」
「だよな。これって、王国より前の国家だか文明だかの痕跡だよな」
たんなるモンスターの巣窟って場所ではない。
「もしかすると、かつての冒険者の目的はこのダンジョンの謎を解くことだったのかもな。だけど、ここまでたどりつける冒険者はほとんどいないから、だんだんその目的が忘れられたとか」
「証明のしようがないけど、ご主人様の仮説がありえないとも言えないわ」
地下32階層は床や壁になにやら文字が彫られていた。
「これ、なんて書いてるんだ? まったく読めない……」
転生した時点で王国の現代語は問題なく読めるので、読めないってことはそれ以外の言語だということだ。
「私も全然駄目だな……。おそらくだけど、これ、ずっと古代の言葉ですぜ」
レナもわからないとなると、その線が強いか。
「見た感じ、何かの警告ってわけでもないみたいだし、このまま進みましょうか」
地下32階層で最初に出会った敵は動く鎧の集団だった。
部屋に入ると、鎧が八体いて、一斉に動き出してきた。
ちなみに中身は全部からっぽだ。スケルトンすら入ってはいない。
「モンスターというより、聖域を守るガーディアンって感じだな」
「そうね。まあ、ガーディアンだろうと容赦なく叩きつぶさせてもらうけれど!」
ミーシャが即座に攻めこむ。
敵の数が多いからミーシャもメインになって戦闘に出ないといけない。
ズガアアアア!
バキイイィィ!
ミーシャの攻撃力は案の定、無茶苦茶で、一発ごとに鎧をへこませて叩きつぶす。
この調子でなら、すぐに全滅させられそうだけど、俺もいいところ見せないとな。
剣で鎧に立ち向かう。
キィィィン!
金属の鎧にぶつかった剣はどうしたって、跳ね返ってしまう。
それでもこっちの攻撃力はそれなりにあるから、ダメージにはなってるみたいなんだけど。
敵の剣の腕前もなかなかだ。この階層に潜って言うことじゃないかもしれないけど、かなりいい練習になる。
鎧を攻撃して足りないなら、その隙間ならどうだ?
首のあたりの鎧の隙間に剣を刺し入れるように突いた。
何も入ってないはずなのに、肉に刺さったような感覚があった。
「効いてる!」
まず一体をそれで倒した。
もう一体はひたすら鎧の上から剣を浴びせて、沈黙させる。
レナのほうは武器がナイフなので押されていたが、的確に攻撃をかわし続けていた。
「くそっ! こいつら、鎧のくせにけっこう速いな!」
レナは一体にじわじわ壁に追い詰められる。
これはまずいかな。加勢に入ったほうがいいか?
しかし、レナにはまだ余裕があった。
意図的に壁に寄っていたのだ。
「じゃあ、逆襲だな!」
壁を蹴ると、一気に前に突っこんで、鎧にぶつかって組み倒した。
そして、素早くナイフをぐさぐさと刺し込む。
「思い切りぶつかれば、けっこうあっさり倒れるな!」
やがて鎧は動かなくなる。
レナの頭脳戦による勝利だ。
「旦那、この階層でもまだまだ私もやれますぜ!」
ピースサインを送ってくるレナ。この世界でもピースって意味を持つんだな。
俺とレナで合計三体を倒している間に、ミーシャは五体を叩きつぶしていた。
やっぱり、反則みたいに強い。むしろ、こんなの反則だとモンスター側も思っているかもしれない。
「ふぅ、特殊能力がない敵はそんなに怖くないわね。物理で勝負すればいいだけだから」
たしかに不測の事態に陥るリスクは小さいな。
「あっ」
ミーシャが少し素っ頓狂な声を出した。
「何かあったか?」
「レベルが上がったわ!」
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ミーシャ
Lv72
職 業:大魔法使い・聖戦士
体 力:695
魔 力:662
攻撃力:774
防御力:605
素早さ:908
知 力:714
技 能:言語使用、回復(5)、毒治癒(5)、麻痺治癒(5)、幻惑(5)、洗脳(5)、炎(5)、氷(5)、風(5)、地面(5)
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「そうか、とてつもなくレベルが高いからずっと上がってなかったけど、ついにLv72になったんだな」
はっきり言って、ステータスの上がり方も卑怯なぐらい高い気がする。
職業も本来、兼ねようがないものを兼ねてるし。
「レベルアップってこんなに楽しいものなのね! 私、うれしい!」
くるくると、その場でまわってみせるミーシャ。
地下32階層での光景とは思えんな……。
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