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72話 地下31階層

 地下31階層は空気がこれまでと根本的に違った。


 雰囲気という意味ではなく、文字通り空気のにおいが違う。

 洞窟を流れるにおいではなく、まるで貴族の屋敷を歩いているみたいな感じなのだ。


 壁の装飾なども職人に描かせたのだろうか、花の絵があったりする。


 しかも天井もこれまでと比べるとかなり高い。ホールの中を歩いているみたいだ。


「いったいこんなところ、誰が作ったんですかね?」


 レナが不思議そうに言った。


「かつては今より進んだ文明でもあったんじゃないかな。あるいは腕に自信のある冒険者しか来れないところに何か作る必要があったか」


 もちろん、すべては仮定だが。

 間違いないのは何者かの手がここに入っているってことだ。


「あまり景色に気をとられてると危ないわよ。モンスターの質も上がってるはずだから」


 ミーシャの注意のとおりになった。


 前からやってきたのは、明らかにドラゴンの類だった。

 緑色の体にウロコが並んでいる。


 ドラゴンが豪炎を吐く。


 こちらの通路が途端に火の海になる。


 かわせずに俺もレナもダメージを負った。


「まだやれそう?」


 ミーシャが確認する。


「俺のほうは大丈夫だ! ちょっと攻撃してみる!」


 ドラゴンに近寄って斬りつける。


 肉を多少は斬ったが、これまでのモンスターと比べると防御力が全然違う気がする。


 ドラゴンがこちらを蹴りつけてくる。


 このダメージも鎧で軽減できてはいるが、それなりに重い。


「ここは私がやるわ!」


 ミーシャが近づいて、ドラゴンを殴り飛ばす!


 ズシャア!


 その一撃でドラゴンは息絶えた。


 やっぱり、ミーシャの実力はとんでもないな……。


「はい、すぐに回復、回復」


 ミーシャが俺とレナに回復魔法をかける。俺たちはひと息ついた。


「敵が強いというか、大きい気がしやしたぜ。そういや、ここのフロア、広いもんな」


 レナが感想を述べる。

 たしかに大きなモンスターもここなら活動できる気がする。


「そうね。天井にもデカいのがいるようだし」


 ミーシャが顔を見上げる。


 そこには体長3メートルはありそうなクモがいた。


「やっぱり、このへんの連中はスケールが違うな……」


 大きければその分強いと決まっているわけではないが、それでも傾向としてはがたいの大きな奴のほうが凶悪感はある。


「でも、あんな高いところにいるんじゃ倒しづらいわね」


 シューッ!


 大クモは糸を天井から吐き出してきた。


 もちろん、そんなものを受けたらシャレにならないから、回避する。


 素早さはこちらも相当に上がっているから回避は間に合った。

 ただ、頭上からの攻撃は距離感がつかみづらいから、けっこうぎりぎりになった。


 シャッ! シャーッ!


 クモも接近すると危ないとわかっているのか、天井に陣取ったまま、糸を吐き続ける。


 盗賊のレナも、最初からチートのミーシャもクモの攻撃はかわしているが、かといって攻撃に転じづらい。


「ああっ! 安全なところから攻撃ってことね! 性格の悪い奴ね!」


「ミーシャ、火炎の魔法は使えないのか?」


「天井は高いって言っても、ここは地下よ。加減の出来ない炎を使うのは危険が伴うわ」


 たしかにクモを倒しても、こちらが巻き添えを食ったりすれば意味がない。


 さて、どうやって攻勢に転じるべきか。


「このあたりまで来ると、モンスターも知的になってるわね」


 ミーシャは冷静だが、まだ対処法は思いついてないようだ。


「降りてこないなら、こちらが上に行くしかねえですな!」


 レナが何か覚悟を決めたようにうなずいた。


「上に行くって、どうするんだよ!?」


 いくらレナでも、これだけの高さを跳び上がるだなんてことはできないだろう。 


 レナはぱんぱんと壁を叩いた。


「壁にはわずかに凹凸がありますぜ! これを使えばどうにかできる!」


 レナは足を壁にかけると、するするとよじのぼる――いや、壁を駆け上がる。


 そして、クモに届きそうなところまで来ると――


 クモに向かって跳びかかって――


「喰らいやがれ!」


 ナイフをぐさりと刺しこんだ。


 ただ、刺すだけじゃない。

 そのナイフを引っ掛けるようにして、クモの体を引き裂いていく。


 そして、壁にもたれかかるようにして、床に下りてくる。


 俺ならその高さから落ちるだけでケガするだろう。


「よっしゃ! なかなか、いい一撃が決まりやしたぜ!」


 ガッツポーズを決めるレナ。


 たしかに、見事な一撃だ。


「でも、一撃だけじゃこの階層のモンスターには勝てないだろ」


 これだけのことを繰り返すのは楽じゃないはずだ。


「いや、それがそうでもないんですぜ」


 にやりとレナは笑う。


 それから、俺にナイフを見せ付けるように出した。


 こころなしか、柄のデザインなんかが緑色で毒々しい。


「これは、なかなか強力な毒が入っているんです。毒蛾のナイフってやつですな。クモも毒はあるかもしれませんが、毒には毒をってやつですぜ」


 そういえば、クモの動きが止まってきたような。

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