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7話 ギルド初仕事

日間ランキング13位になっていました! ありがとうございます!

今回は新キャラ?が出てきます。

 ミーシャが俺に問うた覚悟は、人を殺す覚悟だ。


 といっても、罪もない人間を殺める覚悟ではない。

 そこまでひどくはない。


 明らかに他人に命を狙われた場合、それを殺していいかだ。


 なぜ、そんなことを聞いてきたかといえば、俺が秘密を背負っているからだ。


 ミーシャの力が広まると、俺自身の身が無事では済まない。

 俺を殺してミーシャを手にしようとする奴が現れるおそれだってある。

 だから、ミーシャの存在は誰にも知られてはいけないのだ。


 ミーシャが変化の魔法にこだわっていたのもそういう意味では当然だ。

 獣人になるにしろ、人間になるにしろ、それなら高位の冒険者というだけだ。

 ものすごく珍しい存在ではない。猫のままよりはずっと目立たなくなる。


「ご主人様、お疲れ様」

 冒険者狩りの連中を始末したあと、ミーシャが言った。

「ほとんどミーシャの功績だろ」

「でも、人間が人間を殺すというのは、なかなか大変なことだと思うから」


 たしかに日本に住んでいたなら、まずないことだった。

 地方で働いている時にコンビニ強盗があった。

 犯人はすぐに捕まったが、数日にわたって地方のニュースではトップで扱われた。

 小さな県では殺人事件だって、そうそう起こらないのだ。

 まして今回みたいに四人も殺したなら、まず間違いなくその県で一年における最大の事件になるだろう。


「後悔はない。俺は冒険者だからな。サラリーマンじゃない」

 俺は淡々と言った。


 ミーシャだって人殺しをしたかったわけじゃない。

 でも、こうするよりなかった。

 仮に誰も殺さずに逃げ出したとしても、低レベルの冒険者一人が数人に囲まれて逃げ出したということが知れた時点で、何か秘密があるということがわかってしまう。


「今日は少し豪華な食事にしよう。おかみさんに追加注文だ」

「いいわね。魚があれば食べたいわ」

「あればいいんだけどな」

 海から遠いのか、魚料理はあんまりないんだよな。


 ちなみに魚料理をおかみさんにお願いしたけど、

「干し魚が入ってないんだよねー! ごめんねー!」

 と大きな声で言われてしまった。


◇ ◇ ◇


 その日からも俺とミーシャはひたすらダンジョンに潜り続けた。

 一つの節目であるLv10にまで到達した。


=====

ケイジ

Lv10

職 業:戦士

体 力:87

魔 力:46

攻撃力:76

防御力:75

素早さ:80

知 力:68

技 能:刺突・なぎ払い・兜割り

その他:猫のパートナー。

=====


「たしかに職業は戦士ですって言っても恥ずかしくないところまでやってきたな」

 宿屋の部屋の中でミーシャとしゃべる。

 誰も来ない密室というのは大切だ。

「そうね、このままじっくりとやっていきましょう」

 ミーシャも俺の成長を喜んでくれる。


 そして、「猫に飼われている」という言葉が「猫のパートナー」に変わっていた。

 Lv10なら一人前だろうと認められたのだ。

 正直、かなりうれしい!


 ただ、まだ圧倒的に俺のほうが弱いので多少の負い目はある。

 そんなこと言ったら、俺が勇者クラスになっても関係性は変わらないんだけどな。


「なあ、ミーシャ、退屈してないか?」

 Lv71だから地下10層とかでうろちょろしている身分じゃないのだ。

「全然。私はご主人様と一緒にいられればいいの」

 当たり前のようにミーシャはそう言ってくれる。

「むしろ、サラリーマン時代と違って、ずっと一緒だから今のほうがはるかにうれしいわ」


 なるほどな、そういう考え方もできるか。

「ただ、残念な点があるとすれば……」

 ミーシャがしゅんとする。

「ここ、ちっとも魚がないことね……。せめて干し魚でもいいからほしいわ……」


 そうなのだ、王都は内陸部の都市なので魚がなかなか出回らないのだ。

 あと、日本人みたいに魚大好き国民でもないらしく、魚の値段が相対的に安い。

 すると、魚を交易で扱うメリットも小さくなってしまう。

 結果として、余計に魚が出回らないのだ。


「海辺の町だと普通に食ってるらしいけどな。ここから二日ぐらいかかるんだよ」

「人間の足で二日でしょ。猫は大変よ」


 そりゃ、そうだよな。

 東海道を徒歩だけで行くぐらいのハードルだと思う。


 そんな話をしていたら、夕食の時間だった。

 幸い、ここの宿屋はメシが美味いのが救いだ。


「ケイジ君、Lv10に上がったかい?」

 料理を注文するより先におかみさんに聞かれた。

 もはや寮生と寮母ぐらいの近い距離感だ。


「はい、やっと上がりました」

「おめでたいねえ! もう一人前だよ! よし、お前さん、今日は二品は増やしてあげな!」

 俺としても母親の代わりみたいに思えてきてうれしい。

 まあ、俺の母親はこんなキャラじゃなかったけど。


 しかし、話はそこで終わらなかった。


「ところで、ケイジ君。ギルドの依頼はあんまり受けてないみたいだけど」

「ああ、はい、まずはレベルが上がらないとまともに依頼もこなせないですからね」


 一般人に毛が生えた次元の冒険者なら、別に近所の一般人に頼めばいいからな。

 たいていの場合、用心棒とかはある程度のレベルが必要になる。

 もちろん、なかには犬の散歩とか何でも屋的な依頼もあるが、得られるポイントは微々たるものだ。


「ということはしばらく依頼で忙しいなんてこともないんだね?」

「はい、そうですけど」

「じゃあ、買い付けの馬車の護衛を頼めるかい?」

 おかみさんが俺に顔を近づけて言った。

「Lv10なら全然無理な話じゃないからね」


「詳しく聞かせてもらっていいですか?」

「うん、うちの店は一月に一回ぐらいのペースで干し魚をたくさん買ってくるんだよ」

 ミーシャの目が見開いた。


「魚を食べたいっていう人もいることはいるからね。当然、うちの亭主だって魚料理だってできるよ。港の料理人にだって負けやしないさ」

 これは期待できる発言だ。

「毎月一回馬車にいっぱい魚を買い付けるんだけどさ、たいてい護衛をギルドで依頼して雇ってるんだよ。でも、中には荒っぽいのもいるし、勝手に干し魚をつまみ食いするのもいるしね」


 まあ、冒険者なんてアウトローの集まりに近い要素もあるからな。


「それで、どうせだったらケイジ君に頼もうかなと思ったわけさ」

 ミーシャがみゃーみゃー鳴きまくる。

 是非受けろということだ。


「いいですよ。旅をするのはおかみさんですかね?」

 旦那さんがいなくなったら料理が作れなくなるものな。

 新幹線で日帰りみたいな話じゃない。往復で4日はつぶれる。

 4日も営業しなくてかまわないって食堂はあまりないだろう。


「いや、違うよ。いつもはよその店で働いてるうちの娘に行かせるんだ。ほら、ルナリア、出てきな!」

 娘? ああ、おかみさんにも娘がいたんだな。

 といっても、きっとおかみさんの娘だから、ちゃきちゃきの江戸っ子的な――


 淡雪のようにはかなげな雰囲気の少女が出てきた。


 え、マジでおかみさんの子なの!?


次回は昼12時頃の更新予定です。

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