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59話 王家の墓へ

「どうか、お気をつけて行ってらっしゃいませ!」


 ヴェラドンナは屋敷の外まで出て俺たち三人を見送る。


 表情はまた仏頂面だけど、だからって別にヴェラドンナに感情がないわけじゃない。


 きっと、俺たち、とくにレナのことが心配で心配でたまらないんだろう。


「ちゃんと元気に帰ってくるからな! 心配しなくていいんだぜ!」


 勢いよく、レナも手を振って返した。


 王城の前に行くと、荷物を積んだ馬車がいくつも並んでいた。


 冒険者が乗る馬車もあるので、そこに乗り込む。


 人数も揃ったので移動開始。


 俺たちの乗っている馬車にはほかのパーティーも一組乗っていた。


 馬車みたいに狭い空間だと、俺も空気の違いがわかる。

 ギルドにいるようなパーティーとは質が別だ。かなりの実力者であることが容易にわかる。


 その中の、いかにも魔導士ですといった雰囲気の華奢な女性がこっちにやってきた。


「よろしく。私の名前はマルティナ。Aランク冒険者よ」


 マルティナと名乗った女性が手を伸ばしてくる。

 俺も手を出して握手する。マルティナは同じようにミーシャとレナのほうにも手を出した。


「多分、こういう王国からの依頼クエストは初だと思うから、ちょっとアドバイスをしておこうと思って」


「ありがとうございます」


 こちらに好意的にしてくれるだけでありがたい。

 馬車の中で敵意むきだしにされたりすると、それだけで息が詰まるからな。


「王国からの依頼はどれも危険の高いものばかりってことはわかるわよね。今回も熟練の冒険者しか参加してないわ」


「ええ、それはわかります」

 これはミーシャの言葉だ。自然とマルティナを囲んで車座になっている。


「じゃあ、こういう時、最も気をつけないといけないのは何だと思う?」


 なんだろう、何とでも言えそうだしな。


「チームワーク……ですか?」


「それも大事だろうけど、もっと根本的なことよ」


「確実に依頼を達成すること?」


 マルティナは首を横に振る。


「正解はね、絶対に死なない範囲を見極めること、つまり生き残ることよ」


 マルティナの顔も目も真剣だ。

 後輩のことを考えてくれているのは間違いない。


「王家の依頼クエストはとにかく難易度が高いわ。Aランク冒険者だとしても、かなりのリスクが伴ってる。当然、戦死することもある」


 こくこくとレナはうなずいている。


「逆に言えば、生きるか死ぬかっていうような戦い方をしていれば、そのうち絶対に死んでしまうわ。そしたら、Aランク冒険者でも何でもなく、ただの死者よ」


 マルティナが少し早口になる。気持ちが入っているらしい。


「いい? 依頼が未達成だろうと何だろうと、まずは生き残ること。ここにいるメンバーはいわば、命を守ることに関するスペシャリストなの。正しく臆病であることこそ、Aランク冒険者の資格なの」


「わかりました。命を大事にしたいと思います」


 ミーシャがうなずく。


「なので、無理をしなくていいからね。Aランクになりたての人はとくに活躍しようとして無理をしがちだから」


 マルティナはいい話ができたと思ったのか、したり顔だ。


「できるだけ後方にいなさい。前に行く必要はないから。怖くてふるえてるぐらいのほうが、長続きするものよ」


 マルティナは話を終えて、元のパーティーのいる場所に戻っていった。


「なかなかいい話だったわね」

 ミーシャがあまり表情に出さずに小声で言った。


「なあ、ミーシャ、お前、戦闘で怖くてふるえたことってあるか?」

「いいえ」


 まあ、そうだよな。

 多分だけど、ありがたい話もミーシャにはあまり意味をなさない。


「でも、ご主人様はそれなりに気をつけてね。土ドラゴンに押しつぶされたら、即死の危険もなくはないかも」


 そしたら、回復もできないもんな。


「わかった、肝に銘じておく」


「私もつぶれないようにするぜ……」


 防御力が低いレナはとくに覚悟をしていた。


「生きていさえすれば、私が絶対に回復させるから安心してて」


 そして馬車はとくにアクシデントもなく、王家の墓の入口についた。


 真ん前にうっそうと茂る森が広がっている。


 この中に王家の墓がある。


 一応、石畳の広い道が通ってはいるが、逆に言うとその両側は暗い森だ。


「いかにもモンスターが住み着いていそうだな」


「なかなか胸が躍るわ。攻撃魔法を実戦でとことん使いたかったの」

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