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6話 覚悟

「そろそろ厄介ごとに巻き込まれる気がするわ」


 そうミーシャは言ったが、具体的なことまでは教えてくれなかった。


 ミーシャいわく、

「杞憂なら、それにこしたことはないから」

 ということらしい。


 ダンジョンに潜りだしてから、一週間後。

 俺はLv7に上がった。


=====

ケイジ

Lv7

職 業:戦士

体 力:64

魔 力:34

攻撃力:58

防御力:57

素早さ:61

知 力:53

技 能:刺突・なぎ払い

その他:猫に飼われている。

=====


「おっ! 職業が『戦士』になった!」

 たしかに魔力が低い分、打撃系の戦闘にはまあまあ強い。

 ステータスが戦士と認めてくれたということらしい。


 まだまだ弱いが初期と比べれば、ずいぶんたくましくなった。

「そうね、そろそろ鎧を革のものから金属製にすべきかもね。金属の鎧で戦う体力もあるはずだし」

「鎧か……。廉価品の鉄の鎧でも25万円ぐらいしたよな……」

 ついつい、日本円で計算してしまう。そのほうがわかりやすいからだ。


 鎧というのはオーダーメードだと軽く200万、300万かかる。

 そうではない一般兵士向けのプレートメールの、さらに中古品でも25万はする。


 地下7層ぐらいまで来るとゾンビとか、リザードとか、もうちょっとモンスターも強くなるので、魔法石で得る金額も大きいが、それでも貯金が一気に出ていく。

「まあ、お金を稼ぐのもこつこつやるしかないな」


「ねえ、ちょっと耳を貸して」

 少し、ミーシャの表情が重い気がした。

 すぐに耳元にミーシャの口を持ってきた。

「ご主人様、あなたに覚悟を問うわ」


 ミーシャの言葉をすべて聞いたあと、俺はうなずいた。

「もちろん、それでいい。でないとミーシャまで危険に巻きこむからな」

 俺はゆっくりと地上に向けて歩き出した。


 そして、地下5層でのことだ。


 細い通路を歩いてたところで、道の両側をふさがれた。


 モンスターにではない。


 人間にだ。


 装備品からしてLv10程度の冒険者4人。


 前にいる奴二人は、にやにや笑っている。

 二十代半ばの男二人。

 一人は髪を刈り上げていて、もう一人は顔に大きな傷がある。


 もうちょっと年のいった男二人だ。性格悪いのが表情でわかる。


「いったい何の用だ?」


 少し硬い声で俺は言った。


「今日、まあまあ稼いだよな。アイテムも含めれば1万ゲインぐらいにはなるんじゃねえか。現金も持ち歩いてるなら、もっと入ってることになる」

 刈り上げてる奴が言った。

「それがどうかしたか?」

「お前を殺したら、それだけ利益が出るってことだよ」


 冒険者狩り。


 冒険者自体を殺して金品を奪う奴らだ。

 当然、違法だ。

 見つかればギルド追放どころか死刑になるおそれもある。

 なにせ殺人罪を犯してる可能性が高いわけだからな。


 それでも、そういうクズ野郎はいる。


 理由は二つ。


 まず、モンスターをちまちま殺すより効率がいい。

 日本でも、2、30万円のために強盗をする奴はいるからな。

 この世界にいてもおかしくはない。


 第二に――


「お前がもうちょっと強くなると、こっちのショバを荒らしそうなんだよ、黒猫ケイジ」

「黒猫ケイジか。二つ名までもらってたみたいだな」


 ゲームでもそうだが、レベルっていうのは上にいけばいくほど上がるペースは落ちる。

 Lv1からLv7に持っていくのは一週間でできた。

 これでもミーシャのおかげでかなり早くなってる。

 普通なら回復の余裕がないからもっと浅いところで戦うしかないし、危険が迫れば地上に戻るしかない。


 でも、Lv11をLv17にするのは相当な努力と苦労と時間がいる。

 ギルドにLv30の奴とかが全然いないけど、それも時間がかかるからだ。

 だから、Lv10ぐらいで成長を諦める奴も出てくる。


 そうなると、地下10層ぐらいでだらだらするしかない。

 そんなだらだらしてる連中は想像以上に多い。


 もちろん、既得権益の奪い合いにだってなる。

 だから、その既得権益に近づきそうな奴を事前に殺そうとする奴らも出てくる。


「まあ、半分はお前の責任だぜ、黒猫ケイジ。パーティーを組んで戦えばこんな目に遭う恐れも減ったんだ。お前一人なら口封じなんていくらでもできるからな」


 たしかに冒険者に殺された証拠なんて、そうそう残らないからな。


「一応聞くぞ、お前ら」

 俺の声は思った以上に落ち着いている。

「俺を殺そうとしてるってことは、お前たちも殺されても文句言えないってことだ。それでいいな? 俺がお前たちを殺すのは正当防衛だ」


「そんな可能性、最初からねえだろ。黒猫と一緒にぶっ殺してやる!」


 刈り上げが剣を片手に突っ込んできた。

 背後からも足音が近づいてくる。


「ミーシャ、後ろは任せた!」


 俺は叫んで、前の刈り上げの攻撃をまず受ける。

 一撃で殺されるほど俺も弱くない。


 続いて、顔に傷のある奴の斧も防御。

 よし、最初の攻撃は耐えた。


 もう、充分のはずだ。


 俺と対峙している二人が目をむいた。


 驚愕の表情だな。


「な、なな……。どうして猫なんかにあいつらが……」


 後ろを振り向くまでもない。


 ミーシャが突っこんで後ろの二人を始末したのだ。


「ご主人様が一人でダンジョンに潜ってると思った?」


 それはミーシャの声。


「残念でした。私とパーティーを組んでるのよ」


「お前、もしかして、高位の使い魔でも操ってるのか……?」


 そんな魔女的なものじゃねえよ。


 刈り上げが恐怖している間に、

 そいつの鎧の隙間めがけて、俺は刺突を放つ。


 刈り上げは回避が間に合わず、肉に少し刃が入った。

「いてえっ!」


 Lv7とはいえ、油断すれば死につながるぞ。

 まあ、全然致命傷には届いてないみたいだけどな。

 でも、勝負はもうあった。


 そこにミーシャが突っこんでいく。


 簡単に男二人が壁に打ちつけられる。

 

 どうやらミーシャは手加減したらしく、刈り上げのほうは即死には至っていない。


「た、助けて……くれ……」

 弱々しい声で刈り上げが言う。


 ミーシャが俺の顔を見る。

 俺は無言でうなずく。


 すでに覚悟を決めたと伝えていた。

「お前を殺す。なぜならお前は俺のミーシャの秘密を知ったからな」


 ミーシャがしゃべったということは生かすつもりはないということだ。


 俺は刈り上げにとどめを刺した。

次回は本日夜11時頃の更新予定です!

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