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57話 世界一危険な墓参り

 その日、朝から郵便の配達員が俺の屋敷にやってきた。


「ケイジさんですか?」

「はい。そうですけど」


 初老の配達員が馬車から降りて、俺に手紙を差し出してきた。配達員も王国の職員なので、それとわかるバッジみたいなものをつけている。


 手紙には封がしてあって、<国家重要情報>と書いてあった。


「これはご本人様が必ず開けてください。それではご多幸をお祈りいたします」


 なんで祈られるんだろうと思いながら、その場で中身を確認した。


 そこにはこんなことが書いてあった。


=====

 Aランク以上冒険者に対する召集命令


 目的:王家の墓奪還作戦


 ランセルの森にある王家の墓がモンスターたちに支配領域となり、参拝もできなくなってから、2年になる。

 それまでの間、ギルドに依頼を出し、王国の軍隊も派遣したが、高位のモンスターも多く、奪還には成功していない。


 だが、王家の墓が奪われたままというのは、国家にとっても看過できぬことである。

 そこでAランク以上の冒険者を集め、奪還に向けて動いてもらうことにした。


・なお、Aランク冒険者のパーティーであれば、Aランク未満の冒険者が中に入っていてもよい。

・Aランク冒険者にも辞退する権利はあるが、その場合、Aランク冒険者の資格を永久に失い、Bランクとする。

・参加者が失敗したことによる降格はない。

・報酬などは成功時に王から支払う。

=====


 なるほどな。


 すぐにミーシャたちのところに相談に行った。

 ちょうど、食事時だった。


「なるほどね」


 俺と同じ反応を、書状を見たミーシャは言った。


「ルール上は俺だけ参加すれば問題はないわけだけど、もちろんミーシャも来るだろ」


「当たり前でしょ。もしご主人様が危険な目に遭ったら誰が守るのよ」


 ミーシャにとっては選択肢にすらなってないらしい。


 そして、もう一人。


「私も行くぜ」


 レナはわざわざ立ち上がって宣言する。


「これは冒険者冥利に尽きる。私は冒険者としての腕を見せたいんだ。姉御に手伝ってもらってのレベリングだけじゃ、成長もわからないままだしな」


「ええ」


 ミーシャがゆっくりうなずいていた。


「あなたの人生だもの。一花咲かせてみなさい。私も応援するわ」


「ああ」


 俺もうなずく。


「レナ、一緒に行こうぜ」


「では、留守は私がしっかりとつとめますので」


 ヴェラドンナに任せておけば、泥棒の一人も入ってこれないだろう。


 じゃあ、課題は何もないな。


 本格的な長距離遠征になりそうだ。



 冒険者が王城に集まる日は10日後だった。


 割と時間に余裕があるのはメールなんて便利なものがないせいだろう。

 王国の隅のほうにいるような冒険者まで呼ぶとなると、すぐというわけにはいかない。


 ガートレッド王国の王城はシンボルの物見の塔などが城下からもよく見えたが、入るのは初めてだ。


 守備兵に手紙を見せると、すぐに奥へ通された。


 堀にかかった橋を渡ると、そこに別の兵士がいて、「ご案内いたします」と言ってきた。


 王城の中はさすがに豪壮だ。きらきらとよく光る床の上に赤絨毯が伸びている。


 進んでいくと、地下へと降りる階段があった。

 兵士もそこに入っていく。

 地下といっても、階段も広くて立派なので、隠し部屋なんてたぐいのものじゃない。


「ここです」

 ずっと無言だった兵士が口を開く。


 地下には大きなホールがあって、そこに冒険者たち20人が集まっていた。


「では、私はこれにて」

 兵士はそそくさと逃げるように階段をのぼっていった。

 こんな化け物たちと一緒にいられるかというような反応だった。


 たしかに一般の兵士からしたら、Aランク冒険者が集まっている空間なんて異常な場所なのかもしれない。


 冒険者たちも俺たち一行に目をやってくる。

 知った顔はいない。


「これ、全部Aランク冒険者なのかな」


「そんなことはないと思うわ。Aランクが一人いればパーティーは全員来れるわけだし」

 ミーシャがそう指摘する。


 そういえば、いくつかのグループに分かれて立っているように見える。

 おそらく、それぞれのパーティーにリーダー格のAランクの奴がいるんだろう。


 一方で、いかにも一匹狼的に突っ立っている老齢の男もいる。

 顔にいくつも傷があるから、熟練の冒険者なんだろう。


「なんか、ぴりぴりした空気で落ち着かないですぜ」


 レナが眉をしかめた。


「そんな空気、悪いか?」


「まあ、よくはないわね」

 ミーシャもあまり楽しそうな顔をしてはいない。

「おそらくだけど、獣人のほうが空気を察知する能力では高いのかも」


 野性が残ってるってことか。あり得ない話ではないかもしれない。


 ――と、前から兵士が出てきて、声をあげた。


「王のおなりである!」

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