48話 攻撃魔法の大型新人
風邪を引いたのか、熱が出ていて、いつ寝落ちするかわからないのでいつもより早くアップします・・・。
ミーシャがロッドを握る。
今から火炎の魔法を実践する。
「まあ、最初は、失敗続きかもしれませんが、めげずに続けていれば――」
ぶおおおおおおおおおおおっっっ!
とてつもない威力の炎が原っぱを覆い尽くした。
「どんな威力なんですか! 私でも気合入れないとこんなの撃てませんよ!」
師匠のハンナが叫んだ。
まあ、そうだよな……。俺のあたりまで一時的に気温が上昇した気がしたし……。
「私、レベルに関してはそこそこ高いの」
「これ、高すぎますよ!」
そして、そのまま火が枯れ枝に点火したらしく、燃え出した。
「まずいですね……。発水の魔法の最大のものを……」
ハンナが手を前に突き出すと、水がぶつかっていく。
だが、炎の威力のほうが圧倒的に強くて、全然火が弱まらない。
「そんな! 王都でもトップレベルの私の魔法が効かないなんて!?」
ハンナは明らかに困惑していた。
申し訳ない、ミーシャは非常識なほどにチートなんだ……。
「あの、もしかして、これってヤバいかしら……?」
ミーシャが俺のほうを振り向いて尋ねてきた。
「うん、あんまりよくないな……」
しかも、その日はまあまあ風が強くて、火が街のほうに流れていく危険すらあった。
「これ、練習中の事故だから、私に罪はないわよね……?」
「だとしても、逃げるわけにもいかないだろ! どうしかしないと……」
Aランク冒険者には火事を消す力はないぞ……。
「わかりました、私に考えがあります」
ハンナが声を上げた。
「ミーシャさん、今から発水の魔法をお教えします! あなたの力なら、火炎を一気に止めるような水が出せるかもしれません!」
たしかにこんな炎を作った張本人ならそれを消すだけの水も作れる可能性はある。
「発水は火炎よりかなり難しいですが、なんとかなるかもしれません。いえ、なんとかしてください!」
「わかったわ。やってみます」
こくりとミーシャもうなずいた。
「時間はあまりないですが、こっちもできる限りレクチャーします!」
こうして炎を背景にしながらの緊急の魔法レッスンがはじまった。
「いいですか? 頭に水のかたまりを思い浮かべるんです。プールの水を空中に放り出したようなものを想像してください」
「うん、わかりました……」
「今度はその水がどんどんふくらんでいくところを想像してください。いいですか、大きくしってください」
「多分、できてます……」
「じゃあ、それを飛ばします。前に突き出す感じです」
「だいたい、できてきたかな……」
「じゃあ、実践してください!」
ミーシャは手を前に出すと、
「水よ、思いっきり出て!」
どこから湧いたのかというような、滝みたいな水のかたまりが炎にかかっていく。
おかげで炎は急速に小さくなって、無事に消えた。
「やりました! ミーシャさん、お見事です!」
ハンナも快哉を叫んだ。
「お手柄だ! ミーシャ!」
俺も素直にミーシャを讃える。
やっぱり攻撃魔法でもミーシャの素質は発揮されるんだ。
「ありがとう、ご主人様。これで、敵がたくさん襲ってきてもご主人様を守れるわ」
ミーシャも上機嫌だ。
問題もあったけど、終わりよければすべてよしとしよう。
だが、まだ問題があった。
「なあ、ミーシャ、お前、いつまで水出してるんだ?」
「そういえば、止め方を聞いてなかったわ」
すごく嫌な予感がした。
「ハンナさん、早く止め方を教えて下さい!」
「ええっ? 発水の魔法は水が出終わるまで出るだけなので、止め方なんてものはないんですけど……」
つまりミーシャの水の威力が強すぎるってことか。
そして、この原っぱは微妙に傾斜があって、俺たちのいるほうが低い。
つまり、水が下ってくる。
洪水になる!
「やばいぞ! ミーシャ、逃げるぞ!」
「でも、私、水が出てるの……。弱まってはきてるけど……」
しょうがない!
俺はミーシャを担ぎ上げると――
「水は奥のほうに向けてろよ!」
そのまま走り出した。
「ありがとう、ご主人様! お姫様抱っこすごくうれしいわ!」
「それどころじゃない!」
「私も置いていかないでください!」
師匠のハンナもあわてて走ってくる。
なんとか、このまま逃げ切るぞ!
◇
その後、洪水にはならなかったものの、ハンナ邸の外に出ていたガラクタが一部水につかるなどの被害が出た。
「ミーシャさん…………あなたに教えることはもう何もありません……これからも魔導士として精進してくださいね……。免許皆伝です」
疲れた顔でハンナに言われた。
免許皆伝というか限りなく破門な気がする。
とにかく、火炎と発水をミーシャが覚えたのでよしとしようか。




