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5話 レベル上げ

 受付の子はにっこり笑ってギルドの説明をしてくれた。


「まず、ギルドはランク制です。上からS、A、B、C、D、E、Fの7段階ですね。Bランクまでは依頼を解決した時にもらえるポイントが増えていって、そのポイントがたまれば上のランクにいけます」


 まあ、妥当なシステムだ。


「SとAに行くには別に何かあるってことですね」


「一言で言うと面接や筆記試験などで検査させてもらいます。なぜかというと、このランクの冒険者は品格も問われますので」


 力が強いだけのゴロツキ崩れじゃダメってことか。


「依頼は何でも受けられるんですかね?」


「その方のランクより高いものは一つ上までですね。あと、上のランクの依頼に関しては原則、直接依頼の指名が来ることが多いです。断ることも可能ですが、あまりお断りになりますと、ランクが降格しますね」


 まあ、重要な依頼をどこの馬の骨ともわからない奴に受けさせるわけにはいかないか。


「それと、登録費と年会費がかかります。Fランクであれば合計300ゲインですね」


 CDアルバム一枚分ぐらいかなと思いながら、300ゲインを支払う。


「では、ここにお名前や職業などを詳しく書いてください。こちらから依頼を出す場合の参考にしますから。まあ、FランクやEランクはまずは実績をつけてもらうほうが先ですけれどね」


「わかります、わかります」


 ミーシャもカウンターに乗った。

 とくに文句も言われないので、そのままにしておく。


 後ろから、「あっ、猫だ」なんて声もする。

 この世界でも猫は人気者らしい。


「ああ、そうだ、ダンジョンに潜ってレベルを上げたいと思うんですが、それは依頼になりますか?」


「一応、ギルドからの依頼の扱いになってますが、皆さん、勝手に潜ってるというのが実情ですね。これまでの記録よりさらに深いところに潜らないと依頼達成にならないので」


「ええと、これまでの最高記録は何層でしたっけ」


「地下30層ですね。どうやらさらに地下への降り口があるそうですが、恐怖を感じてその冒険者さんも帰られました。ちなみにAランク冒険者の方でした。今ならSランクの可能性もあります」


 なるほど。たしか地下30層ならLv30相当のはずだから、Aランクでそんなものか。危険を感じたぐらいだから、ちょっと無理をしてLv27ぐらいでのぞんだかもしれないが。


 となると、ミーシャはすでに確実にSランク冒険者だな。

 まあ、猫では登録できないから、あまり関係ないだろう。


 というわけで、登録は済んだ。


「こちらがFランク冒険者の腕章です」


 どどめ色の濁った腕章をもらった。

 ぶっちゃけFランクなんて初心者マークみたいなものなので何の名誉にもならんが、とにかくこれで冒険者だと認識してもらえる。


「にゃー」

 よしよし、それでいいのよ、という意味の「にゃー」だな。


 最初からギルドの依頼を受ける気などない。

 ついでに言うと、地下31層に進む気もない。


 まずはダンジョンで金を稼ぐのだ!


 さて帰るかと思ったところで、酒場のほうで大きな声がした。


「獣人だからってバカにしてるようだと痛い目見るよ!」


 どうやら冒険者同士のケンカらしい。


 怒ってるのはウサ耳の冒険者。かなり軽装だからシーフとかそういうポジションの奴だろう。同じパーティーのメンバーがなだめているが。


「ふん! そんなに薄着だから、てっきり娼婦かなと思ったんだよ! まして獣人なんだからしょうがねえだろ!」

 もう片方のヒゲ面の男もケンカの売り買いを望んでるようだ。

「なんだと! こっちはLv17なんだからな!」

「へえ、奇遇だな、こっちもLv17だぜ」


 ミーシャが床に降りて、俺のズボンをくいくいと引っ張った。


 ギルドの出入口のほうだ。

 ここにいたくないってことか。


 店を出ると、俺はミーシャを抱いて耳元に彼女の顔を持っていった。


「やっぱり獣人は差別されてるみたいね」

 少し悲しそうな声。

「私が人間になれたとしても獣人みたいな形式になるかもしれないわ」


「今から考えてもしょうがないだろ」

「ご主人様、私が獣人になっても嫌いにならないでね」

「当たり前だ」


 俺はミーシャをぎゅうっと抱き締めた。

 猫の体温は高いから、あったかかった。


◇ ◇ ◇


 翌日から俺たちはダンジョンに向かった。


 ミーシャだけならいくらでも深く潜れるが、俺のほうに限界があるので、安全面を考えて地下5層までを限度にした。


 ダンジョンは人気も少ないので、たまにミーシャが声を出して指導してくれる。


 たとえば、大サソリと対峙した時など、


「さあ、そこよ! 大丈夫! 思いきり斬りつけて!」

「そこは一度かわす!」

「毒を喰らっても私が解除できるから心配しないで!」


 こんなふうにアドバイスを始終もらって、どうにかやっつける。


「はい、よくできました。今、回復魔法をかけてあげるからね」


 たしかにミーシャは主に回復系の魔法に強いので、俺みたいなビギナーの指導には向いているかもしれない。少し負傷したら地上に戻るというのを繰り返したら効率が悪すぎるしな。


 おかげで三日でLv5までは上がった。


=====

ケイジ

Lv5

職 業:冒険者

体 力:45

魔 力:25

攻撃力:40

防御力:38

素早さ:46

知 力:39

技 能:刺突

その他:猫に飼われている。

=====


「うん、これで駆け出し冒険者ぐらいは名のれそうだな」


 一息つこうとして、違和感に気づいた。


「『猫に飼われている』になってるぞ! なんだ、これ!」


 最初は『猫を飼っている』のはずだったのに……。


「ステータスはウソをつかないみたいね」

 ミーシャに鼻で笑われた。

「あながち否定できないのがつらい……」


 あと、レベル上げと同時に最重要の課題もこなしている。


 ずばり、金稼ぎだ。


 モンスターを倒したら魔法石を死体から探して入手する。

 ゲームなら実体が消えてお金だけ残ったりするのだが、そういうことはないらしい。

 最初は血肉に手を入れるのも嫌だったが、次第に慣れた。


 もっとも、地下5層まででうろちょろしているようでは、モンスターの魔法石も小さいし、くすんでいる。

 初日は一日で3000ゲインだった。

 ミーシャの手を借りて、これだ。


 日本円でおよそ3万。日給3万ならいいじゃないかと言われそうだが、一応、命も懸かってるわけだし、ミーシャも働いてるのだ。命懸けで日当1万5000円。

 そう考えると、効率がいい仕事とは思えない。


 情報収集も兼ねて、普通の店よりギルドに行って換金するようにしているが、そこでもこういう声が聞こえてきた。


「あの人は終わったわよ。一度死にかけて、浅い階層でクズ石ばっかり拾ってるんだから」


 クズ石というのはザコモンスターから獲った魔法石ということだ。

 リスクを回避して、しょぼい仕事を続けている冒険者は蔑視の対象なのだ。


 とくに実際のレベルよりはるかに浅い階層で戦うのはダメらしい。

 理由はわかる。

 もし、高レベルの冒険者がみんな地下5層で小金稼ぎをしたら、Lv5前後の冒険者(つまりまさに俺だ)の仕事を奪うことになってしまう。


 もっとも、地下15層でゴーレムが出てきてしまったように、地下が深くなれば危険も一気に高くなる。

 モンスター一体と戦うのにも戦略が必要になってくるし、強い奴に囲まれる場合だってある。

 命惜しさに浅いところで頑張ろうって思っちゃう奴が出てきてもしょうがない、そう俺は思う。


 事実、俺には危険なんて起こってないもんな。


「それは甘いかもしれないけどね」


 ミーシャが小声で不穏なことを言った。


「そろそろ厄介ごとに巻き込まれる気がするわ」


次回は夜6時頃の更新予定です。

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