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4話 魔道書探し

 俺も人間になったミーシャといちゃいちゃしたくはある。

 だって、同棲生活も三年だもんな。

 相性が悪いカップルならとっくに別れてる期間を俺たちは暮らしてきた。


「まあ、それは当面の目標ってとこね。そうだ、私のステータスも教えておくわ」


 たしかにどれぐらい強いのかよくわかってなかった。


=====

ミーシャ

Lv71

職 業:猫

体 力:674

魔 力:644

攻撃力:759

防御力:590

素早さ:895

知 力:702

技 能:言語使用、回復(5)、毒治癒(5)、麻痺治癒(5)、幻惑(5)、洗脳(5)

=====


 強い……。

 そりゃ、ゴーレムも一撃で倒せるわ。


「魔法の後ろについてる(5)っていうのは段階みたいね。どうやら初級だと『回復(1)』みたいになるらしいわね」


 なにはともあれ、しばらくはミーシャに頼ってればどうにかなりそうである。


 ひとまず腹ごしらえと、ミーシャと宿屋の一階に降りてきた。

 ここの宿屋は食堂が併設されているタイプだ。どっちかというと、食堂が宿屋も営業していると考えたほうが実態に近いかもしれない。


「にゃー」

 カムフラージュのためにちゃんと鳴き声を出すミーシャ。


「あの、猫も食堂に連れてきて大丈夫でしたかね?」

 肝っ玉母さんキャラのおかみさんに聞いた。

「その子、すごくしつけがされてるみたいだからいいよ! ただし、ほかのお客さんのものを食べたりしたら、その料理は買ってもらうからね」


「わかりました。ちゃんとしつけます」

 まあ、ミーシャがそんなことするわけないので、子供と店に入るよりよほど気楽だ。


 メニュー表から追加の料理も注文できるが、宿に泊まってる人間には自動的にメシが出る。宿代が固定だからな。そんな高いものばかり頼まれても困るんだろう。


 その日の料理は鶏肉と野菜、米をまとめて炒めたものだ。

 日本で食べるチキンライスにちょっと近い。味付けはもっと別の調味料だから全然違う味だが。


「これだと栄養バランスがいいんだよ、がっはっはっは!」

 おかみさん、キャラ濃いなあ。

 彼女にはしたくないけど、落ち込んでる時に会いたいタイプだ。

「それと、こっちは猫ちゃん用ね」


 鶏肉を焼いたものが小皿に載ってやってきた。

「わざわざありがとうございます」

 これはビジネスホテルでは味わえないコミュニケーションだ。


「お客さんのペットは我が家のペットみたいなものだからね!」

 奥の厨房で無口っぽいおっちゃんがこくっとうなずいた。

 おっちゃんの分までおかみさんがしゃべってる感がある。


 さて、メシを食うだけではもったいない。

 ここは貴重な情報収集の時間だ。

「おかみさん、俺、異世界から飛ばされてきた人間なんだ。この世界のこと、聞かせてもらっていいかな」


「はははっ! どうぞ、どうぞ! 今日なら特別にタダだよ!」


 なんか東京の下町にこういうキャラいそうだな。


 まずは基礎的な情報の確認。

 ここはガートレッド王国の王都メイレーである。

 大陸に広い領土を持つ大国だ。

 そのほか、エルフやドワーフの国家など、小さな国家がいくつかあるが、戦争などはやっていない。

 どうやら、種族ごとに国家があるらしい。


 次に大陸の現状について。


 現在、魔王が復活してしまい、各地にモンスターが増えはじめている。

 王国は強い冒険者を軍隊にしようと躍起である。

 とくに召喚円から出てくる人間はステータスが高いので重宝されている。

 勇者と呼ばれるパーティーなども編制されていたりするそうだ。


 住民生活はまだとくに危機的な状況にあったりはしなくて、この王都メイレーもまずまず平和である。


 これだけのことがわかれば充分だ。

 満足したように、ミーシャも鳴いた。


 その日は疲れてもいたし、よく眠れた。

 寝ていると、ミーシャがおなかの上に載ってきた。

 天然の湯たんぽだ。


◇ ◇ ◇


 翌日、冒険者ギルドに寄る――前に、魔道書の店を探した。


 当たり前と言えば当たり前だが、宿屋のおかみさんは魔道書のことなどまったく知らないので、そんなものが売ってるのか、王都の書庫にあるのかすら知らなかった。


 まあ、日本でも「医療関係の書籍専門の店、どこですか?」と聞かれたら、たいていの人は答えられんだろう。それと同じだ。


 かなり探し回って、やっと路地裏にある店を見つけた。


 安いものでも2万ゲイン。日本円だと約10倍だから20万か……。


 店主に変化魔法に関するものがあるかと尋ねたが、


「そういうのは普通は魔導士の師匠に教えてもらうものだがな」


 と断りを入れられたうえで売り物を見せてくれた。

 ただし120万ゲインと言われた。

 ミーシャの尻尾が落ち込むように、ぴょこんと垂れた。

 かなり稼がないとこれは買えそうにない。


 冒険者ギルドは魔道書の店から割と近いところにあった。


 ドアを開けると、思った以上に広い。


 右手がいわゆるギルドの受付で、左側は併設の酒場らしい。

 たしかに飲食店がついてるなら当然広くもなるだろう。

 にぎわっているというよりは、うるさいと言ったほうが正しい。


 ミーシャもきょろきょろと周囲を見回している。

 慣れないところに連れてこられると猫は臆病になる。

 借りてきた猫みたいに、という表現があるぐらいだ。

 でも、ミーシャの場合は情報収集のためだ。


 一番右側は商品の買取などをしている場所だから、ええと、受付はあそこか。


 とくに先客もいないので、すぐに受付の子と話ができた。

 20歳にも満たないような、まだ少女といった子だ。長い髪が印象的だ。


「ギルドは初めてですよね?」

 にこやかに言われた。

「あっ、やっぱりわかりますよね……」

 正真正銘の一般人だからな。


「ギルドに加入したいのですが、先に説明を聞かせてもらっていいですか?」


次回は明日昼12時頃の更新予定です!

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