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33話 武術大会3

レビューを書いてもらえました。ありがとうございます!

 控え室で戻ってきたレナと話をした。

 メイド服が与える違和感にも慣れてきた。

 間違いなく、大会で一番の有名人だろう。


「出るのなら言ってくれよ。応援席にいないから、ちょっとがっかりした。がっかり損だ」

「悪かったぜ、旦那。姉御と一緒に驚かせてやろうって話をしてたんだ。大会中はできるだけ会わないようにしてた」

「そういうことみたいだな」

「ほら、私もたまには冒険者としての腕を見せたいと思ってさ。どっちかというと、血の気が多いタチだしな」


 まあ、わからなくもない。


 とくに冒険者同士の戦いなんてケンカを除けば、こんな機会ぐらいしかないはずだ。

「姉御の話だと、私の実力は実際のレベルよりも高いだろうってことでさ。昔やってた仕事はかなり緊張感のあるものだったから、攻撃をかわし続ければ上にいけるんじゃないかって」

「お前の場合は攻撃の回避ができるからな」


 ミーシャの読みは当たっていると思う。盗賊は一撃一撃をかわすことに全力を注ぐ。防御力も低いから、気をつかうだろう。

 それはモンスターを倒して得られる経験値以上の経験になっているのかもしれない。


「話を旦那に移すけどさ、旦那も本当に強くなってたな」

 身近な人間に褒めてもらえると、ちょっとむずがゆい。

「強くなってるような気はしてたけど、それを確かめるためにも大会はちょうどよかった」

「本当に優勝狙えるかもしれないですぜ」

「まあ、そうなることを期待したい」


 そこに関しては運の要素もあるし。

「それと、これは高望みかもしれないですけど」

 レナが、にっとどこか挑発的な笑みを浮かべた。

「できることなら、決勝で旦那と当たりたいな」

「そしたら、賞金がどっちみち俺の家に来るからありがたいな」


 冗談で返したけど、少なくとも決勝に行くつもりでやらないとは思った。

 レナにも恥ずかしい姿見せられないし、先に負けてがっかりされるのも嫌だ。


 そこで気合いが入りなおしたのがよかったのか、俺は順調に勝ち進んだ。

 深い階層のモンスターと戦っていたのがよかったのか、敵の動きがとてもはっきりと見える。

 あと、敵の動きが読める。


 相手が次にどう動くのか。どこに狙いを定めているのか。

 直感的にそれがわかる。

 これも戦闘を繰り返してきたから、気配みたいなものを昔よりよく察知できてるせいなんだろう。


 敵の攻撃に合わせて、ちゃんと剣で防御ができる。

 その防御が間に合う。

「なっ……!? 防がれた!?」

 なかには驚愕の表情を浮かべる奴もいたが、俺にしてみたら不思議でも何でもない。


 深い階層のモンスターは一撃でも喰らうとかなりデカいダメージになる。

 だから相手の攻撃を止めよう、見極めようと真剣になる。

 はっきり言って、十五階ぐらいの敵との戦いはまだ惰性でやれている。油断しても致命傷になることはあまりない。


 俺は浅いところで戦ってる奴より、質的に強くなってる。


 おかげで戦闘に勝つだけでなくて、ほとんど攻撃を受けずに終わらせることができた。


 二回戦は相手が一方的に攻撃を受けたせいで、負けを認めて試合放棄。


 準々決勝は頭に剣を叩きつけてダウンさせて、KO勝ち。


 準決勝は少し大変だった。

 相手もLv25の実力者だったからだ。


「ケイジと言ったか、昔はもっと甘い戦い方をしていたと思ったがな」

 控え室で相手が話しかけてきた。


 シルヴァーン、なかなか高名な長髪とヒゲが目立つ戦士だ。

 俺も名前ぐらいは知っている。

 準決勝まで来ると、ギルドの有名人が残るな。


「そっちこそ、もっと高いランクの冒険者になればいいんじゃないか」

 Lv25もあればAランク冒険者になるのも容易のはずだ。


「それは御免こうむる。Aランクともなると、国の依頼がいくつも入って国の軍人と変わりがなくなる。俺はあくまでも自由な冒険者でいたいんだ。お前もその気持ちはわかるだろう?」

「まあ、俺はさすがに低すぎるから上げに来たんだけどな」


 たいていの冒険者は自分の名誉のためにも、それなりに強くなればAランク冒険者を目指す。それが一種の冒険者としてのあがりだからだ。


 相撲で言えば、大関とか関脇みたいなものだ。

 横綱とまでなると、いろんなめぐり合わせも必要だ。冒険者でいくと、Sランクに上がれるかどうかというのに近い。功績を残せるような仕事がやってこないことにはSランクと認められようがないからな。


「この俺は純粋に冒険者としての強さを求めて生きてきた。そしたらこのレベルにまでなったということだ。同類のお前に説明するまでもないがな」

「ぶっちゃけ、わかるぜ」


 俺もシルヴァーンも例外の側だ。

「けど、あんたはBランクだろ。これでAランクになっちまうな。だから、あんたはAになってもいいって思ってるってことだ」

 俺に見抜かれたと思ったのか、少しシルヴァーンは顔をしかめた。


「Bランクで経験できることは、あらかたやってしまったし、次のフィールドにいってもそれはそれでいいかと考えるようになってきた」

 シルヴァーンの年齢は30なかばぐらいか。ここから体も衰えてくるかもしれないし、引退までの間にやれるだけのことをやっておこうってことだろう。


 そして、俺たちが試合に呼ばれた。


 絶対に負けたくない。


 なにせ、まだレナがここまで勝ち残ってるんだ。


 どうせなら決勝でやるぞ。

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