23話 ミーシャ、ご奉仕する
すいません、ちょっと変則的ですが、ミーシャにイライラした人も多かったようですので、少し早目にアップしときます!
ゆさゆさ。
体を揺さぶられている。
あれ、こんなことをする奴っていたっけ……?
ミーシャが俺のほうを起こしに来ることってそうそうな――
「ご主人様、起きて」
でも間違いない。
ミーシャだ。
まあ、遊んでほしいから起こしたとかそういうことだろ――
「ごはんも……私が用意したから……冷めちゃうから起きて……」
…………。
「なんだ、夢か」
「夢じゃないわよ! ちゃんと起きてよ!」
二度寝を止められた。
「だって、ミーシャが俺のために家事をするのなんてありえんだろ」
ちょっと前にしないってはっきり宣言してたし。
「私だって、そのつもりだったわよ」
すねたようにミーシャが言った。
「でも、あんな犬っころが来て、ご主人様が取られたら大変だもの……」
それから、いらっとした顔で、
「あの泥棒犬」
と言った。
そこ、普通、泥棒猫だけどな。
まあ、でも言われて意味はわかった。
つい先日、ギルドの仕事を受けた時のことだ。
◇ ◇ ◇
俺とミーシャが受けたのは、盗賊団を退治しろというものだった。
ちょうど、最近、王都近にライカンスロープの盗賊団がはびこっていたのだ。
一応、そいつらは義賊を名乗っていて、人を殺したりはしていないし、金持ちの家にしか盗みには入らないようだが。
どうも、盗むのが目的というより力比べ自体をしようとしている節があるのだ。
「ライカンスロープってことは一時的に犬になれるってことでしょ。そしたら、追っ手から逃げるのも簡単よね。セコいことするわね」
あと、どうもミーシャがそいつらにイラっとしていた。
「昔から犬は嫌いなのよ」
「ライカンスロープって犬なのかな……」
それで、俺たちはその依頼を受けたのだった。
ギルドのアリアさんが言うには、
「この依頼は盗賊団のアジトを見つけられるかどうかがカギになりますね」
ということだったが、その点については一瞬で解決した。
ミーシャが猫の姿でにおいをたどったのだ。
犬ほどではないが、猫もかなり鼻がきく。
盗賊団というぐらいだから、ライカンスロープが数人はいるはずだ。
明らかに不自然なにおいらしく、あっさりと王都にほど近い小高い山に潜んでいるのがわかった。
だが、向こうも盗賊団というだけのことはある。
猫の姿のミーシャとともにアジトに近づいたら、逆に4人に囲まれた。
獣人の連中だ。それも猫じゃなくて犬系の。
一人、若い女がいて、腕組みをしている。
髪はシニヨンみたいに丸めていた。
盗賊に長い髪は邪魔だからな。
「あんたら、ギルドの連中だね」
若い女が言った。
「義賊か何か知らないが、泥棒は泥棒だ。素直にお縄についてくれ」
「そんなことできるわけないだろ、これだけ罪科を重ねてるんだ。最初から逃げるしかないんだよ」
たしかに江戸時代もそうだけど、泥棒でもけっこう罪が重いんだよな。
「一人で来た勇気だけは買ってやるよ。痛めつけて帰ってもらう」
次の瞬間、連中がオオカミに変身した。
なるほど、ライカンスロープっていうのは本当らしい。
ただ、こいつら、勘違いしてるんだよな。
俺は一人で来てない。
猫のミーシャがちゃんといるのだ。
「ご主人様、こいつら、ぶっつぶすから」
ミーシャがはっきりと宣言した。