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201話 おめでたいことだらけ

「封印する前に倒しちゃったわね。でも、倒すほうがより確実だし、いいわよね」

 ミーシャはけろりとした顔で、漆黒の魔法石を拾った。


「ボールとして転がして遊べそうね」

 ある意味、猫らしい発言だ。


「お疲れ様、みんな。これで目的達成ね」

 俺がまずミーシャのところに走っていって、抱きついた。


「よくやった! お前のおかげでこの世界は救われたぞ!」

「おおげさね。ほかのみんなでもこつこつ戦えば、きっと勝てたはずだわ。魔王っていってもパーティーで向かえばどうとでもなる次元よ」

 かといって一対一で叩きつぶせるのは、やっぱりミーシャだけだと思うが。


「姉御、お疲れ様でした!」

「素晴らしい勇姿でした」


 レナとヴェラドンナもミーシャを讃える。完全無欠の勝利と言っていいだろう。


「乾杯しようにも、ここには何もないし、とっとと王都に戻りましょう」

「お前、ほんとさばさばしてるな」

「だって、たいしたことなかったんだもん。これぐらいの敵なら、ちゃんとみんなもいつか抜けるようになるわ。みんなもかなり強くなってるわよ」


 ミーシャがいる以上、偉い態度を取ることはできないな。でも、ちょうどいいかもしれない。



 俺たちは地上に戻ると、王であるアブタールに報告を行った。

 その場には何人もの歴史家が集まってきて、ダンジョンの攻略についてなど、様子を興味津々で聞いてきた。これ、公式な記録に残さないといけないからだろうな。


 そのあと、お城の食堂などを使って、盛大なパーティーが開かれた。以前にお世話になった冒険者たちも、王都近辺にいた者たちは呼ばれて駆けつけた。


 魔物使いのリチャードや、Aランク魔導士のマルティナなんかの姿もある。

「あなたたちの話を聞いても、壮大すぎて、よくわからないわ……」

 マルティナはどう褒めていいかもわからないという顔をしていた。


 それと、リチャードのイタチがまた虚空のほうに向かって、反応していた。

 もしやと思って、ミーシャに聞いたら、やっぱりそうだった。

 冒険者の幽霊がそこにいるらしい。


「自分の記録も君たちのおかげで証明されそうだし、よかった。これでゆっくり眠れそうだ――と言ってるわ。無念の思いも少し晴れて、ここにも現れることができたらしいわね」

「先輩に負けないように、これからも精進します」

 俺は姿勢を正して、大先輩がいるほうに頭を下げた。


 豪勢な食事は出ているのだけど、話しかけてくる人間も多いので、意外と食べられない。時の人と言えなくもないし、しょうがないか。活躍したのはほぼミーシャだけど。


 ようやく、パーティーの終盤になって、ミーシャと本格的に時間をとって話せる時間がとれた。


「改めて、お疲れ様、ミーシャ」

「それはご主人様も同じでしょ」

 俺たちの間には冒険者同士といより、夫婦同士の空気が流れる。


「さてと、次は何を目標に定めようか?」

「行ってないダンジョンもまだまだあるし、そこを探索していくのもいいかもね」

 そういう、この世界をすべて塗りつぶすような楽しみ方になっちゃうかな。


 でも、ミーシャと一緒にいるのだったら、何をやっても楽しい気もする。


 と、なぜかミーシャの顔色が急に曇った。

 しかも、やけにその場でえずく。

「おい、ミーシャ、どうした? もしかして、酔っぱらったか?」

 そんなに飲んでたような気はしなかったんだけど。


 ゆっくりとミーシャは顔を上げた。

「酔ったのとは違うわ。ご主人様、よく聞いてね」

 まさか、悪い病気じゃないだろうな……。


「多分、赤ちゃんができたの。私でもご主人様の赤ちゃん、作れるんだね……」

 顔を赤らめながら、ミーシャは言った。


「や、や、やった! ミーシャ、おめでとう!」

 俺はミーシャにすぐに抱きついた。


「もう、苦しいわよ、ご主人様……」

「それぐらい我慢してくれ」


 ああ、冒険以外にも世界の楽しみ方なんていくらでもあるじゃないか。


 俺の声が大きくて、周囲も気付いたらしい。

「おっ、子供ができたのか」「聖戦士同士の子供、これは天下無双の子供になるな!」「さらにめでたいじゃないか!」


 これ、パーティーは朝になるまで終わらなそうだな……。


 そのあと、ヴェラドンナが俺のほうにやってきた。

「ミーシャ様の件、おめでとうございます」

「あ、ああ……。でも、まだ無事に生まれるまで安心はできないけどな」

「それで、実は魔王戦前だったので、黙っていたことがあるのですが」

 なんか、意味深な言い方だな。


「お嬢様にもお子さんができたようです」

「えええええっ!」

 レナは顔を赤くしてうつむいていた。


 ほんとにおめでたいことだらけになったな。

 子育てのこともしっかり勉強しないといけなくなりそうだ。

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