197話 成果を見せるゴーレム戦
城の中はいかにも屈強な魔族たちがずらずらいた。といっても、中には魔法を使うような類のもいる。
俺たちはまず分散する。敵の攻撃魔法の威力を下げるためだ。
俺が対峙した魔法使い系の魔族は雷撃を喰らわせてきた。
回避できずにビリビリしびれる。が、それほどの威力じゃない。俺もずいぶん強くなってるからな。肉を切らせて骨を断つ。そのまま強引に距離を詰めて、一気に斬り伏せた。
よし、やれる。このままやれる。
「どうも、さっきよりは強いようですね」
ヴェラドンナも正直な感想を述べていた。逆に言えば、そんなことが言える程度に余裕があるってことだ。
「そうなの? 私はあまりわからないんだけど」
ミーシャは相変わらず、ボカスカ魔族をやっつけて無双している。こんな反則みたいな奴を止められる敵はやっぱり存在しないらしい。
「ご主人様、そろそろ回復しておくわね」
ミーシャの回復魔法で、また全快した。よし、まだまだいけるな。
レナは格闘モードで敵とやりあっている。こっちも快調そうだな。
「旦那! このまま魔王まで行けそうです!」
「俺もそう思ってる。けど、油断するなよ。お前の体力、まだ知れてるからな」
「そうよ! レナとヴェラドンナは気を付けてね! ご主人様みたいに力押しすると危ないんだから!」
ミーシャも注意をしている。こういう時、戦士系ジョブは無理矢理に進めるからな。魔法使いを倒したみたいにダメージ覚悟で突っ込むということができる。
最初の階だというのに、どんどん魔族はやってくる、そりゃ、最終防衛ラインか。
とはいえ、戦うのがきついというほどじゃない。これなら問題なく、奥に進める。
ほぼ一階の敵は全滅させて、二階に進む。
そして、全員が同じフロアに立つと、階段がばたんと閉まった。
「退路を断たれたってことか」
「ちょうどいいじゃない。このまま叩き潰してやりましょうよ」
ミーシャはむしろ楽しそうだ。
ところでこの部屋、進む扉自体がないなと思ったら、部屋の四隅が開いて、巨体のゴーレムが四体出てきた。
「なるほど、殲滅してやるってことですかい」
レナまでこころなしか面白がってるような声だ。ここで、これまでの成果をすべて出せるわけだからな。悪いことじゃない。
「そうね、それじゃ、一人一殺ってことでどう?」
ミーシャがなかなかとんでもない提案をしてきた。さっき注意してきたのはそっちだろ。
「その代わり、魔王の時は極力、私と、ご主人様で戦う。リスクをとりきれないからね。でも、こいつらぐらいならどうにかできるでしょ?」
ミーシャ以外の全員がうなずいた。なかなか粋なことを考えるじゃないか。
「それじゃ、いっちょやらせてもらいますよ、姉御!」
「こんなものを倒すのは暗殺者の仕事ではないんですけどね」
ヴェラドンナとレナが飛び出る。
せっかくだし、見届けてからゴーレムと戦うかな。いや、先にぶっ倒すか。
ゴーレムはバカ正直にこちらを正面から殴ってきたので、とっとと回り込んで、ラクリ教の最強武器でガシガシ切りつける。
回転して、またこちらを捕まえようとしてきたので、その腕を斬り落としてやった。
「お前の腕ぐらい斬れるんだよ! こっちの攻撃ならな! なまくらの剣じゃないんだ!」
今度は正面から跳びかかって、前の岩を斬りつける。とどめをさせたらしく、やがてゴーレムは動けなくなった。
ちなみにミーシャは猫パンチで簡単にぶっ壊していた。ゴーレムも想定外の打撃に機能停止したらしい。それで止まらないなら岩を全部ぶっ壊すだけだろうけど。
「さて、これでレナとヴェラドンナの様子を見学できるわ」
ミーシャも二人の戦いぶりが気になっていたらしい。
今回のゴーレムの核は体のかなり上にある。なので、普通の格闘スタイルでは戦いづらいが――
レナはするすると木に登るようにゴーレムに上がっていくと、ナイフを打ち込んでいく。
腕で殴られそうになると、さっと床に着地して、また駆け上って、打つ。
一方でヴェラドンナは大きくジャンプしてゴーレムに飛び乗ると、すかさず立て続けに核のあたりに連続攻撃に出る。
そんなヴェラドンナをゴーレムの腕が後ろから叩き潰そうと迫る。
あれ、危なくないか!?
しかし ヴェラドンナはわかっていたとばかりに、すっとゴーレムの頭に飛び乗る。
そして、そのゴーレムの腕は自分の核を思い切り叩き潰した。
そのまま、ゴーレムは機能停止して沈んでいく。
「見事な作戦勝ちね」
ミーシャも見惚れているようだった。
レナのほうも、繰り返した攻撃がそろそろ効き目が出そうだ。
細いナイフが同じところを突き続けていたせいで、ついにざっくりと核にまで到達した。
ゴーレムはこれで倒れていった。
「全員無傷で倒せちゃったみたいね」
ミーシャとしては張り合いがないといった顔だ。
「これだったら、魔王も倒せちゃうだろうけど、一応安全にいきたいと思うわ。そこはよろしくね」
「そうですね、私も危なすぎる橋は渡りたくないですね」
「暗殺者も魔王とやりあう職業ではありませんので」
二人の了解はきっちり得られてるようだ。




