193話 中ボスとの戦い
「ちっ! ちょこまかと!」
また、中ボスバルドネが攻撃魔法を唱えようとする。
だが、その前にミーシャが魔法を使った。
「氷を喰らいなさい!」
氷の鋭い刃がビュンビュン、バルドネに突っ込んでいく。
バルドネも回避を試みようとしたが、なにせ刃の本数が多い。数からすると、二十ぐらいはある。これがミーシャの本気だ。
かわしきれずに、腕や足、腹にどんどん氷が刺さった。
「なっ! こんな威力の魔法、聞いたことがない……」
ああ、ミーシャの魔法の威力は装備品の関係で世界最強クラスなんだ。
おかげで、バルドネの動きが止まりかけた。いや、攻撃に移れなくなったらしい。
どうも回復魔法にあたるものを唱えようとしている。
でも、その間に俺は接近している。
「聖戦士の力、見せてやるよ!」
力任せに剣で斬りつける。
確実にダメージが入った感触があった。俺の攻撃は魔族にダメージが増える。聖戦士のボーナスみたいなものだ。
「喰らえ、喰らえ!」
敵が回復に手間取っている間に、続けて攻撃を行う。
俺も回復させまいと必死だ。このまま押し切ってやる。
「くそっ! なんでこんなに威力があるっ!? 魔法の集中ができん!」
バルドネはもうパニックになっている。
やれる。こっちの力を過小評価したのが運の尽きだ。俺たちはきっとこの世界はじまって以来の最強パーティーだからな!
そして、俺はここぞとばかりに技能を使う。
――急所突きだ。
お前の残りの体力すべて削りとってやる!
「これで終わりだっ!」
俺は剣を一気に敵に突き立てる。
びくんとバルドネの体がはねたようになったあと、だらんと腕の力が抜けた。
「まさか……私がこんな簡単に……」
そのまま、バルドネは倒れて、絶命した。
すごい経験値が入ったのか、俺のレベルも上がった。
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ケイジ
Lv33
職 業:聖戦士
体 力:359
魔 力:160
攻撃力:317
防御力:310
素早さ:260
知 力:174
技 能:刺突・なぎ払い・兜割り・力溜め・二刀流・鑑定(剣)・毒耐性・マヒ耐性・早期回復・急所突き・聖戦士のオーラ・魔族に対してダメージアップ
その他:猫の考えがある程度わかる・猫の嫁がいる・超長命
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「ご主人様、おめでとう! やったわね! ものすごく強かったわ!」
ミーシャが思いっきり抱きついてきたので、俺もそれにこたえた。
「ミーシャの魔法で、敵は想像以上にダメージが入ってどうしていいかわからなくなったな。回復魔法が使えたようだけど、すぐに回復に入らないといけないっていうのは、すでに負けパターンだし、ヤバいと思ったんだろ」
「でも、そこであのまま仕留められたのはご主人様が強くなったからよ! ほんとにすごい冒険者になったわね!」
「まっ、ミーシャにはまだまだだけどな」
ちなみにレナは中ボスから魔法石を取りに向かっていた。そういうところで死体に臆することなく近づけるのは、さすが盗賊だと思う。
「これは、ある意味、お宝だな……」
レナの手には、漆黒のひし形の石がある。
これまでの魔法石とは雰囲気が全然違った。
「美しいけど、どこか不気味だな……。不吉な美しさっていうか……」
「まさに悪の元凶みたいなのを生み出してるわけだからな。ちっとも不思議はない」
「これ、特別なものすぎて、もう値段がつけられないですね。そういう意味では宝としてはすごいけど、すごさを表現できないかもしれない。魔法石ってみんな、わかるかも怪しいし」
そっか、魔王の中ボスまで来ると、そういう次元になっちゃうんだな。
「それは一族の宝にでもすれば、ご両親もお喜びになるかと思いますよ」
ヴェラドンナがそう提案した。たしかにセルウッド家最高のお宝になるだろうな。
しばらく、レナは考えていたが――
「それだったら、しばらく私が持っとこうかな」
と、自分で所有することに決めた。あるいは、ここで親にプレゼントするとか言うのが恥ずかしかったのかもしれないけど。
さて、もうボスへの道も見えてきたけど――
「ねえ、ご主人様、ここは一度引き返して、ゆっくり休まない?」
ミーシャがそう提案した。
「ノリノリで進めそうな気もするけど、だからこそ、このまま深追いするのは危ない気もするの。石の壁や中ボスが復活することは多分ないだろうし、一回退いても問題はないわ」
ここで慎重策を考えられるところが、やっぱりミーシャはすごいと思う。
「わかった。ここは戻ろう」
レナとヴェラドンナもその提案にすぐに応じてくれた。なんだかんだで魔王のダンジョンということで、精神力を使っている。
帰り、俺たちは温泉で汗を流してから、ゆっくりと地上に戻った。
戻った日は、みんなで昼近くまで寝て、体力を回復させた。命のせんたくだな。
こんなことができるのもラクリ教の魔法陣のおかげだ。感謝しなきゃな。




