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190話 石壁パンチ

 地下3階層もほとんど無人に近い有様で、俺たちはどんどん先に先に向かう。かえって、不気味なぐらいだ。

「もうちょっと、モンスターとエンカウントするものだと思ってたんだけどな」

「ご主人様、ゲームだとそうかもしれないけど、効率を考えるとどこか一箇所で防いだほうがいいでしょ? ほら地上1階はかなり魔族の数が多かったじゃない。あそこが、第一の防衛ラインだったんだと思うわ」


 ミーシャがそう説明した。なるほど。その仮説で、かなり正しいだろう。


「だとしたら、次はまたどこかに魔族が集中して固まってるってことか」

「そうなんじゃない? 魔王まで、もう何もないってことはないでしょ」


 そのミーシャの言葉はすぐに形になった。


 目の前に不自然な石の壁がある。

 石の壁なんて周囲にずっとあったのだが、その石の壁は一言で言うと、道を封鎖しているように見えるのだ。


「おかしいですね……。地図を作りながら移動してますけど、ここが最初から壁だったとすると通れる道がどこにもないことになります」

 レナが首をかしげながら、自作の地図を見ている。移動しながらの殴り書きなので、かなり汚いけど、だいたいの作りはわかる。


 ちょうど、ダンジョンの首にあたりそうなところがほかと色合いが違う石壁で覆われている。


「ここ、いかにもふさいでますって印象あるよな。しかも、ふさいでるとしたら、こっち側に魔族が全然いないのも説明がつくし」


「実は動く扉かもしれませんし、ひとまず確認してみましょうか」

 ヴェラドンナが少し無防備に扉に触れたが、まったく動く様子はない。押してもダメだし、スライドさせることもできない。


 そのあと、ミーシャが壁を殴ったりなどしたが、それでも壁がすぐに粉々になるということはなかった。


「魔族のやつ、道をふさいで防衛したつもりか……」

 やり口がセコいなと思うが、実はかなり効果的かもしれない。ミサイル撃ってぶっ壊すわけにもいかないしな。


「なあに、旦那、たいしたことじゃないですぜ」

 レナは思ったより楽天的な顔をしていた。


「宝探しをしている時は、これぐらいは日常茶飯事なんでさ。なんとしても守りたい財宝なら、こういう石壁を作るようなこともします」

「日常茶飯事ってことはちゃんと打開策もあるってことでいいのか?」


「はい、そうです、そうです」

 にこりとレナは答えた。ノミでちょっとずつ石を割っていくとでも答えるんだろうか。


「ずばり、火薬を使って爆破しちゃうんですよ。岩なら、それで粉々にできますから」

 思ったよりも近代的な方法だったが、その分、理論上はどうとでもなりそうだ。

 問題があるとすれば――


「お前、火薬なんて持ってるのか?」

「ないです。なので、王都に戻って取ってこないといけませんね」

 そうなんだよな。その戻る作業が面倒ではある。しかし、遠路はるばる魔王の城に来たことを思えば、引き返せる距離かな。ダンジョンをひたすら上に戻っていけばいいだけだ。


「そんな手間をかけるの嫌だわ」

 その案を否定して、ミーシャは壁の前にやってきた。


「私がこの石壁をぶっ壊すから。物理的に。全力で殴っていけば、壊せるはずよ。私の攻撃力はこの世界でもトップレベルなんだから」

「理屈としてはわかるけど、手が痛いんじゃないか……?」


 しかし、もうミーシャは腕まくりをしている。


「そこは我慢するわ。少なくとも火薬の用意を持ってくるのよりマシよ」

 そして、ミーシャは「いっせーのーでっ!」と振りかぶって、石壁に思いきり正拳突きを食らわした。


 ごんっ!


 鈍い音がしたが、表面上、石に変化はない。一方、ミーシャは「痛いっ! けっこう痛いわっ!」と手をぶんぶん振っている。そりゃ、どんなにステータス上、強くてもそうだろう。


 これはやめさせたほうがいいかな。

「おい、ミーシャ、これ、お前が痛いだけだろ」


 しかし、ミーシャは、いかにもやる気という顔で、俺のほうを見返した。

「痛いのさえ耐えれば、先に進めるわ。ご主人様、ここは地道にやりましょ」


 なんていうか、ミーシャに諭されたような形になった。

「わかった……。お前がそう言うなら……」


「みんなには迷惑かけないから、もうちょっとだけ待ってて」

 そして、また壁の同じところを殴りだした。


 俺たちは後ろで見るしかない。見ていても痛々しいんだけど、ミーシャのやる気を殺ぐのも違うと思うし、黙って見守ることにした。


「痛かったら回復魔法かけろよ」

「ダメージというほどではないから、まだ大丈夫よ」


 しかし七回ぐらいパンチを当てた時だっただろうか。

 大きなヒビが石の壁に入った。


「ねっ、どうやらいけそうでしょ?」

 したり顔でミーシャがこっちを振り返った。


「みたいだな。もう、このままやってくれ」

 そして、次のパンチで、石が崩れていって、人間が一歩奥に入れる程度の幅の陥没ができた。このままパンチで穴を空けていけそうだ。


「世の中には無理なこともたくさんあるけど、何度か試すと、そのうちどうにかなることもかなり多いのよね」

すでに一部書店でチート猫2巻が出回っているようです! よろしくお願いいたします!!!

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