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182話 最上階に到着

「行けましたね」

 ヴェラドンナが静かに言った。


「そしたら、私も行けそうですね」

 レナはそこまで気合いを入れたふうでもないのに、ぴょーんと長い滞空時間の跳躍をして、見事に向こう岸にまでたどりついた。


 これで、残りはミーシャと俺だけか。


 さてと、ダメージを受けながらゴリ押しで進むこともできなくはないんだけど。


「ご主人様、ここは私がぶん投げるわ」

 なかなか衝撃的なことをミーシャが言った。


「投げるって、俺、腐っても大人の男だぞ。それなりに体重はあると思うぞ」

「そんなの私から見たら誤差のようなものよ。どれだけ投げられるかわからないけど、最低でも一歩ずつ歩いて痛い思いをするよりはマシじゃない?」

「言われてみればそうだな」


 落下のダメージなんて知れているだろうし。投げられるのを知っていれば、頭から落ちることもありえないだろう。


「わかった。じゃあ、やってくれ」

「はーい」


 お姫様だっこみたいな体勢でぽーんと投げられるのかな。

 でも、違った。


 俺の体が横になる。

 ミーシャは頭の上に手を上げて、両手で俺の背中を支えている。

 えっ! こんな投げ方なのか!?


「これなら、ぽーんと投げられると思うの! 行くわよ!」


 そのまま俺は岩でも投げられるように飛ばされて――ぎりぎりで向こう岸についた。

 ただし、足をちょっとくじいた。


 自分の目でどのへんに落下するかわからない姿勢だったので、割と怖かった……。痛いのよりはマシだと考えるか……。


 ちなみにミーシャは助走をつけてジャンプして、罠の床に落ちて、ちょっとダメージを受けたけど、次のはジャンプでこっち側にたどりついた。


「ふう、まあまあ痛かったわね」

「チートな体力がある奴にはこんな罠も問題ないんだな」


 そのあとのフロアはまた罠も敵もない状態が続いた。

 そして、九階に当たるフロアに着いた。


 部屋の中央にぽつんと宝箱が置いてある。


「やっぱりか。ボスがいる空気はまったくなかったから、こういうことじゃないかって思ってたんだよ」

 もしかしたら罠を解除する方法があったのかもしれないけど、それにしても魔族が使用している空気はなさすぎた。

 つまり、そびえていた城の部分は、この宝箱を守護する塔みたいなものだったんだ。


 となると、魔族はどこから出てきたんだって話だけど、上にいないなら下から来たと考えるのが自然だろう。実際、一階には魔族の数は多かったわけだし。多分、魔族もドラゴンゾンビが壁になっていて、その先に来れなかったというか、行く気がしなかったんじゃないか。


「この宝箱、罠かどうか確認しますか」

 レナが役割上聞いてきたけど、一応聞きますという感じだった。

「いや、これで罠だということは、いくらなんでもないだろ」


 とくに気にもせず、宝箱を開けた。

 出てきたのはカギだ。

 ただし、とてつもなく複雑な作りで、しかもお盆一枚分ぐらいの幅がある。


「きっと、とてつもなく重要なカギなんだろうな」

「これ、売ったらどれぐらいの値段になるんですかね?」

 もし、これがRPGのゲームだったら、このカギを売ったら攻略不可能になると思う。


 その最上階もざっと見てみたが、少なくともカギ穴とおぼしきものはどこにもなかった。レナが見てみたのだから、間違いないだろう。

 その他、俺でもわかったことがあるとしたら、これはラクリ教の建造物だということだ。様式的に確実だ。


「ここまで、あからさまにカギを置いてるんだから、そんなわかりづらいところや中途半端なところのカギってことはないと思うんですよね」

 レナの説をみんな支持した。どのみち、引き返すしかないのだ。


「それじゃ、またあの火傷する罠はご主人様をぶん投げるわね」

「あんまり楽しくないけど、しょうがないな……」


 俺たちはそのまま、一階に戻ってきた。魔族は退散したのか、姿が見えない。全滅したとは思えないので、どこかに逃げたと考えたほうがいい。


 その一階には一箇所、特徴的なところがあった。

 色が違う床があるのだ。幅二メートル四方の正方形の床が一箇所だけ青く塗られている。相当昔のものらしく、かなり剥げかかっているが。


 俺たちはとくに言葉も交わさずにその床のところにまでやってきた。


 そして、あらためて床を見ると、カギ穴らしきものがあることをレナが見つけた。

 当然、そのカギ穴にカギを入れてみる。しっかりとカギはその中にはまった。


 動かすと、床が少し動いた。

 スライド式らしく、完全に開扉すると、その下に階段が伸びている。


「ここからが真の魔王の城ということみたいね」

 ミーシャがその階段の奥を覗き込む。


「そうらしいな。気合い入れていこうか」


 俺たちは互いに顔を見合わせてから、その階段を降りていった。

 だんだんとラスボスが近づいている気がする。それとも、また地下何十階もダンジョンが続いてるのだろうか。


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