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178話 魔王城1階

 俺たちは穴の空いた門から中に侵入した。

 当然、魔族だらけのはず――のつもりだったけど、ほとんど、魔族の姿はない。

 残っている連中の動きを見ればわかる。ここにいた連中は門に穴が空いたことを見ているのだ。それで恐れをなして逃げ出してしまっている。


「そりゃ、そうですよね。あんな火の玉喰らったら、タダじゃすみませんもん。みんな逃げますよ」

 レナがうんうんとうなずいていた。


「な~んだ。私もそろそろ次のレベルアップをしたいと思ってたのに、全然戦ってくれないのね」

 ミーシャはつまらなそうに城の敷地内をきょろきょろと見ている。


 ひとまず、正面に本体とも言える大きな建造物がそびえているので、これを攻略することになるだろう。


「旦那、私は生まれてからここまで高い建物を見たことはないです……」

 レナが見上げながらつぶやく。だいたい、八階建てぐらいだろうか。


「日本だとこの数倍の高さのビルはいくらでもあったわよね」

「それは文明が違うからな。でも、ミーシャもそんな高層建築のぼったことないだろ」

「そうね、エレベーターってちょっと気持ち悪いし……」


 そんな台詞を聞いていたレナが「旦那たち、とんでもないところから来たんだな……」と呆然としていた。


 ヴェラドンナは壁に手を当てて、なにやら確かめているようだった。


「この壁なら登れないこともないですね。途中の窓から潜入すれば一気に三階や四階から攻略するということも可能ですが」


 なんか、また裏技みたいなことを言い出したな……。


「そこはほら……危険もあるし、確実にフロアを一つずつクリアしていくべきじゃないかな……?」


「私はご主人様に賛成するわ。だって、これはラスボスの城よ。そんなズルをしたら流儀に反するわ。正々堂々とすべての宝箱を開けた上でボスを倒さないと」

「いや、さすがに宝箱はないと思うけどな」


 それはゲーム的な仕様だろう。だって、人間が来ることなんてまず想定してないところに、ずっと宝箱を置いてたら間抜けすぎるぞ。そんなおもてなしみたいなことをしても、しょうがないし。


「え~、宝箱ないの? じゃあ、どうでもいいわ。五階ぐらいから行こっか。開いてない宝箱見るとテンション上がるのに」

 おい、言ってることが変わってるぞ!

「姉御、よくわかりますよ! 宝箱あってこそのダンジョンですよね! 宝箱ないダンジョンなんて入る意味もないです!」

 盗賊のレナがそういう感想を抱くのもわかるんだけど……ここは正攻法で行こう。


 なお、城に入る入口も閉ざされていたが、また火の玉で溶かして、潜入した。


 さすがに城内には魔族がごろごろいる。

 姿でよく見るのはリザードマンとかミノタウロスとかドラゴニュートとか。


 一言で言うと、二足歩行で人間に近い連中ばかりだ。


「まさか、ここまで来るとはな!」「全力で防げ! これ以上中に入れるな!」


 敵も気合いが入っているらしいけど、ミーシャが突っ込んで、前にいる数人を片付けると、途端に顔色が悪くなった。


『「さあ、次は誰が猫パンチを受けるつもりかしら?」

 ぶんぶんと手を振ってみせるミーシャ。

 おそらく、敵も自分たちが刃向かってはいけない者と対峙していることを思い知っているだろう。


 とはいえ、ミーシャだけに任せてはいられないので、俺たちも戦う。

 敵の実力がこれまでと比べると、上がっていると思った。

 こっちの攻撃を盾で防いできたり、剣だけでなく武道みたいなのを見せてくる奴もいる。


 なんていうか、本格的な冒険者と戦っている感覚がある。

 これは気を抜くとケガぐらいはするな。レナの顔なんかも自然と真剣なものになっている。


「地下三十階層ぐらいの敵って感じがあるな。それよりさらに強いかも」

「わかりますよ! こいつら、さすがの精鋭揃いですぜ!」


 装備品がダンジョンの地下深くで大幅にバージョンアップする前だったら苦戦したかもしれない。ラクリ教装備のおかげで俺たちは結果的に冒険者として次のステージに立った。


 敵の一瞬の隙を突いて、そこを剣で叩き斬る。

 ヴェラドンナは毒針を打ち込む。

 レナは背後に回って、首を斬る。


 集中力は要するが、ミーシャなしでもちゃんと戦えていた。戦えない数ってほどじゃない。


「なんだ、みんな、よくやってるじゃない」

 ミーシャもよそ見しながら感心していた。逆に言えば、よそ見する余裕がミーシャにはあるのだ。

「これでもSランク冒険者ではあるからな。魔王のところまでたどりつくぞ」


 一階を探索していると、一箇所、色が違う床がある。あからさまに怪しいけど、ミーシャが踏んでも何の反応もなかった。


「ていうか、何かわからないのに、いきなり踏むなよ……」

「こんなわかりやすい罠があるわけないでしょ。そもそも、ここに敵が来ることがほぼ想定されてないだろうし」

 それもそうか。でも、何か意味があるものではあるんだろうな。


 そうこうしているうちに二階へ進む階段があった。

 まずは上に進んでいくべきなんだろうな。

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