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177話 門を突破せよ

 そして、敵の攻勢をある程度止めたというか、撃退した頃、ついに魔王の城がはっきりと見えはじめた。


 周囲に町みたいなものはない。ただ、その分、城が異常にデカい。明らかに王国の城よりもふたまわりは大きい。


「魔族が住める環境は限られているので、あそこにすべてを集約したのでしょうね。あそこに魔王もきっといるはずです」

 ヴェラドンナもその城の威容を見ると、感無量という様子で少し足を止めていた。


「この景色を見た者はほとんどいないですからね。苦労してきた甲斐があります」

「でも、その城を攻略に行くんだけどな」


 一方でミーシャはマイペースのようで、あくびをしていた。


「もっと近くに移転してくれたらよかったのに。でも、あのお城にはきっといいベッドもあるわよね?」

「お前の価値観、ちょっとずれてるぞ。でも、強さはちょっとどころじゃなくずれてるからいいけど」


「魔王なんてすぐにやっつけてやるわ。これまでの敵もあっさりやつけられたんだから問題ないわ」

 なるほど、そりゃそう考えて当然だよな。


 城のあたりは少し丘陵地になっている。ただ、濠とか柵とかをあまり作ってはいない。ただ、大きい門で外部と内部をはっきりと分けていた。


「空を飛ぶ魔族も多いので濠は無駄だと思ってるんでしょうね。どっちかというと、弓矢か炎かが飛んできて翼ある奴を撃ち落とすシステムでもあるんだと思いますよ」


 レナの解説が正しいだろう。そもそも人間に攻撃されることより、魔族同士での抗争のほうを心配してると思う。まさかこんなところまで人間が来るなんてこと、まずないだろうからな。


 さて、それで城の中に入らないといけないのだが――

 十数メートルは高さのある金属製の門をどうやって開けたものか。


「ゲームならまさか閉まってて入れないなんてことは絶対にないんだけどな」

 いわゆる普通に籠城されている状態だ。壁も石造りの頑強なものだから、これをよじのぼるのはかなりきつい。

 矢を射かけてくるわけでもないし、声も聞こえない。本当に中に誰かいるのかと思うほどだ。


「どうってことはないわよ」

 あえてミーシャが挑発的なことを言った。


「だって、この世界で私より強力な火炎の魔法はないんだから。その熱で溶かしてあげるわ」

 余裕綽々だったけれど、ミーシャの顔は真剣そのものだ。

 あっさりどうにかできるとまではミーシャも思っていないのだろう。

 あと、これまで能力が高すぎて、本気にならないといけない局面も少なかったのかもしれない。


 ふぅーっと深呼吸を一度する。

「見ていてね。私の力を魔族に思い知らせてあげるわ」


 目を閉じ、心を落ち着けるミーシャ。


 そして、ぱっとその大きな瞳を見開いた。


「はあぁーっ!」


 出てきた火球は決して大きなものではなかった。せいぜい野球ボールよりひとまわり大きい程度のものだろう。

 けど、その熱はとんでもないものだった。

 火球のぶつかった門はどろどろとその周囲から溶けていく。


 結局二メートルほどの高さの穴がそこに生まれた。


 その穴の奥で、あわててどこかに報告に行く魔族の姿が見えた。


「やったー!」

 どこか呑気な声をあげながら、ミーシャはジャンプして喜んでいる。さっきの集中は何だったのかと思うぐらい、落差がある。


「まさか、穴を空けられるとは思ってなかったようね。してやったりだわ」

「ミーシャ、やっぱり化け物だな。むしろ、化け猫か」

 レナは呆然とその穴を見つめていた。そりゃ、ちょっとありえないよな。しかも、門がまた分厚いのだ。こんなのどうやって奥まで貫通させられるんだ。


「ご主人様、その言い方はひどいわ。それに御主人様への想いはもっと高温のつもりよ」

「骨すら溶かされそうだ……」

 命を保てないほどの想いはちょっと勘弁してほしい。


「これで先に進めますね。いよいよ、最後の戦いとなります」

 ヴェラドンナも気合いが入っているようだ。いつもより顔が厳しい。


「最後かどうかなんてわからないわ。私はいつまでもご主人様と戦うつもりでいるから。ただ、魔族のトップがここにいるだけのことよ」

 ミーシャの訂正にヴェラドンナも少し顔をゆるめて、うなずいた。


「然りですね。外形的な要因で自分の可能性を決めてしまうべきではありません」


「とにかく、こつこつとやっていこうぜ。私は親への土産代わりに魔王を倒したって実績がほしいな」

 ものすごく贅沢な願いをレナは言ってるはずだけど、夢物語でもなんでもない。


 魔王を倒して、王国に平和をプレゼントしてやろうじゃないか。Sランク冒険者にしかできないことだ。


「よし、せっかくだし、手を合わせるか」

 俺たちはそれぞれ右手を出して中央で一つに重ねた。


「行くぞー!」

 まず、俺が声をかける。

「「おおーっ!」」


 声が門の前で一つになる。

 まさか、敵もこんなこと、門の前でやられるとは思ってないだろうな。


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