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156話 王都の図書館へ

 朝食中、レナもものすごく赤い顔をしていた。むしろ、昨日の夜よりも恥ずかしがっているぐらいだった。


「き、昨日はお疲れ様でした……旦那……」

「いや、そのあいさつ絶対におかしいだろ……」

 かといって、どういうあいさつが正しいのかと言われると、なかなか迷うところではあるけれど。


「昨晩は楽しかったわ。愛し合えて、もう大満足!」

「ミーシャ、お前は少し遠慮を覚えろよ!」


 屈託なく言いすぎだろ。


「だって、ご主人様と愛を確かめあう時間って、とっても特別なものなのよ。Sランク冒険者になるとか、魔王を倒すとか、そんなことよりもっと大事だから」


 そんなに堂々と言われると、もう何も言えないな……。


「ご主人様、私はあくまでも猫なんだから。王国の将来とかより、ご主人様と一緒にいられることのほうが優先されるのはしょうがないでしょ」

「まあ、わかるけどさ、そういうこと、王様の前で言うなよ……」

「そこは大丈夫よ。言葉でもこういうでしょ。借りてきた猫みたいって。人の前ではもうちょっと行儀よくするから」


 たしかにいつも野性味あふれてるキャラだったら生活も難しかったよな。むしろ、異世界で生き抜く計画を最初にたててくれたのはミーシャだったわけだし。


「ちなみに皆さんはどんなことをされたんでしょうか?」

「おい、ヴェラドンナ、せっかく話題が変わりそうだったのに聞くな!」


「ええとね、まずね、ご主人様を――」

「ミーシャも嬉々として説明するな!」


 久しぶりの家での朝食はだいぶバタバタしたけど、ある意味、俺たちらしかったのかもしれない。ミーシャは王都に向かう途中、パンの残りを持ち歩いて、野良猫にあげたりしていた。


「みんな、元気に生きるのよ」

 そういう姿を見ると、ミーシャのやさしさに触れられた気がして、俺の心もなごむ。

 あんまり優等生っぽい発言はしないけど、ちゃんと慈愛の心も持ってるんだよな、ミーシャは。


 俺たちは王城に向かうと、国王に話したいことがあると伝えた。

 普通は、そんなのいきなり行っても門前払いされるか、ものすごく後日の日程を告げられるかの二択だけど(実際、数日後でもいいやとこっちも思っていた)、Sランク冒険者の称号のおかげか、十分待っただけで通された。


 Sランク冒険者に認定したのは王国なわけだから、それはそうか。これで粗雑に扱うと、Sランク冒険者の価値を自分で下げてしまうことになる。


 国王アブタールは今日もなかなか精悍な顔つきをしていた。国が安定しているのは、やり手の王がその座にあるからというのも一因だろう。王制というのは、王の気まぐれでけっこう左右されるからな。


「おお、久しぶりだな。なんでも地方を旅しているとかいった話だが。風の噂では、魔王の眷属と戦っていたとか」


 王国の土地でも魔族退治はしていたから、その話が伝わっていてもおかしくない。


「はい、魔王の詳しい計画を、敵方の将から聞き出しましたので、それをお伝えに参りました」


 俺の話を聞くと、国王もその周囲にいた大臣たちも驚愕の表情を浮かべていた。


「――以上が俺からの報告です」

「もし、君たちでなければこんな話はすぐには信じなかったかもしれないが、本当なのだろうな……。すでに北の都市からも君たちの英雄的行為について伺っているし……」

「解放した土地はありますので、そこで事実かどうかをご確認いただければ、魔族と戦ったことは信じていただけるかと」


 アブタールはあっさりうなずいた。こういう理解者が上にいてくれると、こっちもやりやすい。


「それで魔王の本拠地ははるか北方の土地です。途中、谷や沼地があるという話なのですが、それについて図書館に情報があれば参照したいなと」


「わかった。図書館長にその旨を伝えよう。少し待っていてくれ」


 しばらくすると、杖をついた老人が王の前にやってきた。

 ただ、目だけは夢を抱いている若者みたいに輝いているので、どこか異様な印象を受けた。


「ワシが図書館長のカイルザですじゃ。図書館を把握している者はほとんどおりませぬ、迷わぬようについてきてくだされ」

「はい、よろしくお願いします。ところで王都の図書館ってどこにあるんですかね?」


 俺は一度も足を踏み込んだことがないので、よくわからない。剣士に図書館ってあまり関係ない場所だからしょうがない。


 ちなみに、図書館といっても一般人が自由に借りられるようなものではない。本は貴重だから、書庫といったほうが正しいか。


 カイルザさんは杖で、こつこつと床を叩いた。

 ん? どういうことだろう?


「この城の地下に収蔵しておりますのじゃ。火事で焼ける危険を減らすための策ですな。専用の地下階段から降りますので、ついてきてくだされ。もし迷ってしまったらとにかく上へ上へと上がっていくことですじゃ」


 俺たちは王城の裏手のようなところに歩いていき、そこに口を開けている大きな階段を見つけた。

「こんなところがあったのね。こっちまで来たことなかったわ」

 ミーシャは階段の奥に首を入れて、のぞきこむ。

今年最後の更新です。2017年もよろしくお願いいたします! 書籍2巻も発売が決まりましたので、こちらの準備も進めていきたいと思います! ヴェラドンナのキャラデザ、すごく楽しみです!

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