142話 側室との一夜
「じゃあ、俺が教えてやる……」
俺はそのままレナをベッドのほうに連れていった。
これで合ってるのかな……? でも、ダンジョンをさんざん攻略してた身の上で、今更二人でデートするところからはじめましょうっていうのはおかしいよな……?
「旦那様……よ、よろしくお願いいたします……」
レナがそんなことを言うから余計に照れてきた……。
「わかった……。ら、楽にしてくれてていいからな……」
レナの服は盗賊という職業柄、身軽で、つまり露出度がかなり高い。これまでは見慣れててなんとも思ってなかったけど、ベッドの上だと意識しないわけにはいかないな……。
「あの……自分の服は自分で脱ぎますから、旦那、様も、自分の服を脱いでください……」
「そ、そうだよな……! わかった……」
部屋の隅で服を脱いでから振り返ると、レナが胸を隠しながら、ベッドに座っていた。
「旦那様……はじめてなんで……教えて、ください……」
「う、うん……」
とはいえ、俺もほぼミーシャとの経験ばかりなんだけど……。
この壁、薄かったりしないよなとか余計な危惧を考えながら、そっとレナを抱き寄せた。
「あの……姉御にも面と向かって言われたんです。私が旦那様のことが好きなのは見ててわかるって……。だから、旦那様を独占することは諦めるって……」
「あいつ、そんなことを……」
ミーシャはミーシャでいろいろ考えていたんだな。
「姉御もすごく考えたうえでの結論だったらしいです。自分だけだったら旦那様も飽きるかもしれないからとか、私のためにもこうしたほうがいいとか、パーティーのためにもこすうるべきだとか……ゆっくりと言葉をしぼりながらおっしゃっていました」
その時のミーシャの表情を想像すると、胸が痛んだ。
「あいつ、そんなことにまで気をつかってたのか……。もっと猫らしく自由に振る舞えばいいのに……」
「それと……姉御、自分は猫だから子供ができないかもしれないともおっしゃってました」
レナの表情が硬くなる。
「あっ、そういうこともあるか」
ミーシャは獣人じゃなくて、獣人の姿をとっている猫だ。ライカンスロ-プという獣人のレナとはそこが異なる。だから、子供が生まれない可能性はありうる。
「あいつ、そんなこと、俺に一言も言ったことないんだけど……悩んでたのかな」
俺はミーシャがお嫁さんなだけで満足してたけど、ミーシャとしては心残りだったのかもしれない。
「猫だからこその悩みもあるんだな。ちょっと、今度ねぎらってやろう」
ミーシャも奔放に生きてるだけじゃなかった、すごくたくさんのことを考えてたんだ。
「ですから、私も妥協せずに幸せになりたいと思います。でないと、姉御にも失礼になりますし」
レナは穏やかな表情になって、そこにやわらかい笑みを浮かべた。
俺がほとんど見たことのないレナの顔だと思った。
そっか、レナって恋人にはこんな表情をするんだな。
これだけ長く旅をしていて、まだレナの知らない一面が残ってるなんて思わなかった。
「わかった。ミーシャが妬くぐらい愛してやる」
「旦那様は、私なんかでもいいんですか?」
俺は噴き出しそうになった。
「レナみたいにかわいい子、前にして、喜ばない男なんていないから安心しろ」
俺はレナの体にそっと触れた。
「ひゃ、ひゃっ……!」
レナがすごく身をよじらせて、大きな声をあげた。
「えっ……? 軽く触っただけだぞ」
「ご、ごめんなさい……やっぱり慣れてないせいですかね……」
そのあともレナは嬌声としか言えない大きな声をあげた。
途中から、ほかの部屋に漏れたら恥ずかしいなとか考えるのもばかばかしくなった。
これ、絶対に漏れ聞こえてるや……。
●
窓から差し込む朝の光で目が覚めた。
「ああ、朝か……。なんか寝足りな――わっ! レナ!」
そうだった。レナと一夜を過ごしたことをすっかり忘れていた。
隣に裸のレナがくうくうと寝息を立てていた。
もちろん、同意の上だけど、大貴族のお嬢様をキズモノにしたわけで、もし俺がどこの馬の骨かわからない冒険者だったら、本当にセルウッド家の刺客から殺されてるところだ。
「あっ、あぁ……旦那……様、おはようございます……」
レナも目を覚ましたらしい。それからすぐに顔を赤らめて、
「目を開けたら、旦那様がいるって、緊張しますね……」
「俺もまったく同意見だよ……」
俺は腕をレナの背中に伸ばした。
「愛してるぞ、レナ」
「じゃあ、姉御とどっちを愛してます?」
「お前、それは意地悪な質問すぎるだろ……」
レナもそれはわざとやったことらしくて、すぐにいたずらっぽく笑った。
「冗談ですよ、旦那、様……。まだ旦那様って呼び方、落ち着かないな……」
恥ずかしそうにしているレナを間近で見たら、またむらむらしてきてしまった……。
「レナ、キ、キスしてもいいかな……?」
「はい、旦那様……」
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