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13話 スライム退治

日間5位でした! 本当にありがとうございます!

今回は一獲千金の夢をかなえに行きます!

 23層はそれまでとまた空気が違っていた。

 空気だけでなく見た目も異なる。

 壁がタイル張りなのだ。

 まるで神殿の中みたいだ。


「古代のなんらかの宗教施設の跡かもね」

「でも、地下深くに作りすぎだろ」

「それだけヤバいものがあったのかもしれないわ」

 あまり考えたくない話だ。

 邪神でも眠っていたらしゃれにならない。


「安全面を考えて、まずは袋小路を探すわ」

「わかった」

 袋小路なら俺を後ろにしていれば、ミーシャが一対一で敵と戦うことができる。


 敵に出会いたくはないが、ゴールドスライムと出会わないと目的も達成できない。

 なかなか厄介な話だ。


 たしかにゴールドスライムに遭うまでこんな危険なフロアをひたすらうろちょろするなんて、現実的じゃないな。

 やめとけと言われたのもよくわかる。


 スライムより前にレッサードラゴンに出会った。

 敵の爪が襲いかかる。

 ――ガッ!

 体が大きく動く。

 剣で防いだつもりだったが、それでも力に負けて地面に叩きつけられた。

「防いでも、けっこうなダメージだな……」


「ご主人様に何するのよ!」

 すぐにミーシャがレッサードラゴンを体当たりで吹き飛ばした。

「やっぱり、危ないわね」

 すぐにミーシャは俺に回復魔法をかけてくれた。


 本当にギリギリだ。

 でも、回復してもらえれば傷はすべてふさがる。

 まだ自分はやれる。


 戦闘が終わったあと、ミーシャは壁をきょろきょろ見ながら言った。

「あのさ」

 少しだけ気の抜けた声。

「ゴールドスライムって何を食べてると思う?」

「えっ……? 虫を食べてるとは思えないし……金を食べてるとか?」


「私もそう思うわ。おそらくゴールドスライムは地中に含まれてる金を捕食して溜め込んでる性質なんじゃないかしら。でも、それだとこんなフロアにいるのはおかしくない?」

 なんだ、謎かけか?

 そういえば、さっき、ミーシャは壁を見ていたような。


 あっ、そうか!

「こんな神殿みたいに整備された壁から、金がとれるわけないな」

 神殿の壁を削っていく金鉱なんて聞いたことがない。


「そういうことよ。つまり――」

 ミーシャが自信を持って言う。

「――このフロアのどこかにこれまでみたいな洞窟みたいな雰囲気の残ってる場所があるはず。岩肌がそのまま壁になってるような。そこにゴールドスライムはいる可能性が高い」

 そこでゴールドスライムは地中の金を食べているってことだ。


 俺とミーシャは慎重にフロアを進む。

 厄介なことに、これまでのフロアより明らかに広い気がする。


 息を殺して余計にモンスターを刺激しないように気をつける。


 そして、あるところから、神殿のような壁が途切れた。

 また洞窟らしい露出した岩肌の壁がはじまる。

 その先に少しふくらんだ小部屋状の空間があって――


 黄金色に輝いたスライムが壁にひっついていた。


「見つけたわ!」


 思わずミーシャが叫んだ。


「おい、ほかのモンスターが来ちゃうだろ!」

「ご主人様、ごめん! でも、うれしくて……」

 気持ちはわかる。

 ついに目的のものに出会えたのだ。


 あとはこいつを倒すだけだ。


 しかし、俺は単純なことを忘れていた。

 スライムの亜種だろうと、こんな地下深くにいるのだ。

 それなりに強力なモンスターに決まっている。


 ゴールドスライムが俺に飛びかかってくる。

 剣で応戦するが――想像以上に弾力性のある体で斬ることはできない。


 しかも重い!


 そのままのしかかられる!


 ダメージ自体はたいしてないが、そいつは顔に体重をかけてくる。


 まずい!

 密着されると呼吸ができなくなって窒息する!


「ご主人様から離れなさい!」


 もちろんミーシャもすぐに攻撃を開始する。


 ミーシャの攻撃力は超強力だ。

 スライムも耐えられるはずがない。

 そのはずだったのだが――


「げっ……叩いた部分が死ぬだけなの……?」


 そうか、スライムは核の部分を破壊しないと殺したことにはならないのだ。

 ほかの場所を攻撃しても、せいぜい、そこが変色して壊死するぐらいでとどまる。


「どうしよう! 早く核を探さないと、ご主人様が!」


 ミーシャも時間の猶予がないことはわかっている。明らかに焦っている。

 もちろん、俺も同じだ。


「くそっ! 喰らえ!」

 両手はスライムの密着から逃れて空いている。

 持っている剣を振り回して切りつけることもできるが、充分にダメージが入っている気はしない。


 意識が朦朧としてくる。

 それは死が近づいてきたのと同義だ。

 こんなところで死ぬのか?


 嫌だ。

 絶対に嫌だ。

 だって、俺はミーシャを幸せにするんだから。

 俺が死んだらミーシャはどうなる?

 孤独に猫のまま異世界で生きていくしかないんだぞ。


 全然、核を攻撃した感触がない。

 いったい、どこに核があるんだよ!


 待てよ。

 スライムだって生物だ、

 核は当然、攻撃されづらいところに寄せるだろう。


 最も攻撃されづらい場所ってどこだ?


 剣を振り上げる。

 そして、俺の胸に刺さりそうな角度で上から剣を振り下ろした。

「ここだっ!」


 自分自身を傷つける危険があって、剣を振れないところ――そこにスライムは核を持ってくるはず!


 何か硬いものに刺さった気がした。

 次の瞬間、スライムがやわらかくなった。

 顔のあたりの圧迫感も弱まる。


「ぷはっ!」

 俺は飛び起きて、息をした。


 剣がスライムの核を破壊していた。


「あぁ……もう!」

 状況を細かく確認する前にミーシャが俺の胸に飛びこんできた。

 俺は反射的にミーシャを抱きかかえてやる。

「ご主人様はまた死にかけてたわ……何してるのよ……」

 もうミーシャの声は涙声に変わっている。


「ごめん、たしかにこれまでの中でも危なかったな……」

「もう、こんな時にだって抱き締められないんだから、猫ってつらいわ……」


 ミーシャはぺろぺろと俺の手を舐めた。

 それが今のミーシャのできる限界だ。

 抱き合いたいけど、上手く抱き合えない。


 だから、ミーシャは人間になりたかったんだ。


「その夢、かないそうだね」

 俺はゴールドスライムの死骸のほうを見ながら言った。

 もう、スライムはさっきまでの力を失って、べたりと重力に負けて地面に倒れ臥している。

「これを持って帰れば本が買える」


 あと、もう一つうれしいことがあった。

 レベルが上がった。


=====

ケイジ

Lv15

職 業:戦士

体 力:132

魔 力: 68

攻撃力:119

防御力:118

素早さ:112

知 力: 92

技 能:刺突・なぎ払い・兜割り・力溜め

その他:猫のパートナー。

=====


 さすが地下23層のモンスターだ。

 一体あたりの経験値がかなり大きかったんだろう。

「もっと浅いところなら負けないようになってきたな」


「絶対に油断しちゃダメよ。ちょうど過信しちゃう時期なんだから」

 すぐに釘を刺された。

 たしかにゴーレムに殺された冒険者たちはこれぐらいのレベルだったよな。

「でも、おめでたいことは間違いないわ。ご主人様は立派な冒険者よ」

 すぐにフォローしてくるミーシャ。

 本当はミーシャも俺を甘やかして仕方ないのだ。


「回復してあげるわ。ちょっとじっとしてて」

 ミーシャの回復魔法で疲れもとれた。

次回は本日夜11時頃の更新予定です!

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