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124話 出発準備

「はい、どちら様でしょうか」

 

 すぐにヴェラドンナが出てきた。

 下着姿で。

 しかも、レナ以上にセクシーというか、下着自体がかなり透けていた……。


「また、これかよ!」


 ミーシャがまたすぐにドアを押して閉めた。


「ヴェラドンナ、体が見えない服に着替えなさい」

「それが夜着だと透けるようなものしか……」

「じゃあ、メイド服にしなさい! そんな格好でご主人様に会ったら許さないからね!」


 たしかにあれは刺激が強すぎる……。俺も勘弁してほしい。少なくともミーシャと同伴というのは困る……。


 しばらく後。

「はい、もう、問題はありません」

 ドアを開けたヴェラドンナはいつものメイド服に着替えていた。


「うん、これならいいわ」

 ミーシャも納得してくれたらしい。


 ただ、肝心なのはここから先だ。

 実のところ、ヴェラドンナが旅についてきてくれるかは怪しいところだった。


「――というわけなんだけど、もしよければヴェラドンナも来てほしいんだ」

「なるほど。魔王を倒す旅ですか。それ自体は興味深いのですが、この私では足手まといになりませんか?」


 たしかにヴェラドンナはSランク冒険者というわけではない。ちょっとした旅なら何も気にしなくてもいいだろうけど、長旅で、かつ目的が壮大なら自分の身に余るのではと心配するのも当然のことだ。


「それについてはレベルアップの手助けをするから大丈夫よ」

 ミーシャが太鼓判を押した。

「むしろ、あなたがケガをしたりしないように細心の注意を払うわ」


 ミーシャにとったら、誰か一人を守るぐらい、どうということはないんだろう。たいていの敵の攻撃に反応できるしな。

「わかりました。そうおっしゃるのであれば、私もお嬢様の目付け役ですし、その任を果たしたいと思います」

 ヴェラドンナはゆっくりと礼をする。

「冒険者としても、今後ともよろしくお願いいたします」



 翌朝。

 旅に出るという話をすると、マーセルさんとカタリナさんの夫妻はやっぱり驚いたような顔をしていた。

 ただ、口裏を合わせていたわけでもないのに、ヴェラドンナがこちらの加勢にまわってくれて、なんとか納得してもらうことができた。


 ヴェラドンナは貴族の扱いも上手かった。レナが魔王討伐を行えばこんな名誉なことはほかにないと言ったのだ。

「なるほどな……魔王を倒したとなればセルウッド家の名はこれまでにないほどに轟くということか……」

「そういうことでございます」


 マーセルさんの顔がちょっとゆるんだ。大半の貴族は名誉を気にする。交渉材料としては悪くない。


「それにSランク冒険者が武名をこれ以上上げるとなると、それぐらいしか道は残されていません。自分よりランクの低い冒険者と戦っても、勝って当然ということになってしまいますので」

「わかった……。レナの実力も見せてもらったわけであるし、素人が気に病んでもしょうがないな」

 これでレナの親およびヴェラドンナの雇い主の了解はもらえた。俺も直接、礼を言うことにする。


「ありがとうございます。ちょくちょくここには寄るようにはします」

「はい、どうか娘のこと、よろしくお願いいたします……」


 その日、レナは親子でゆっくりと語らったらしい。俺はミーシャと旅の準備をしていた。

「魔王は北方にいるという話よ。だから、ひたすら北に行けば、そのうち魔王と接触できるはず」

 猫に戻ったミーシャが地図の上を移動しながら言う。そういえば、猫って新聞とか広げてたら、その上にわざわざ来るよな。ノートパソコンのキーボードを打っててもその上にやってきて、妨害してくる。


「単純に考えれば王都から離れたところに行けば行くほど、魔王には近づけるな。いきなり魔王ってことはないだろうから、まずその部下と接触するだろうけど」

 魔王というぐらいだから、なんか軍事組織みたいなのも多分持っているんだろう。そんな知的なモンスターに会った記憶はほとんどないが。


「じゃあ、作戦会議はこれぐらいにしよっか」

「……まだ北に行くってことぐらいしか決めてないぞ」

「いいのよ。それに……この地図の上、やけにやすらぐし……」

 ミーシャが完全に地図の上に腰を降ろした。


 やっぱり、紙の上はリラックスするんだな……。


「ひとまず、北の……そうね、ミエントという町に行きましょう。ミエント近くの森はモンスターが支配していて、ほとんど入れないという話を聞くわ。そこからモンスターも侵攻してきたりはしてないから、あまり危機にはなってないみたいなんだけど」


 ミエントそばの森が襲われたという話は俺もどこかで聞いたことがあるが、それも三十年も前に起こったことらしく、ほぼ人が立ち入らない森が占拠されただけという話だ。

 そのまま、ほったらかしにされたまま時間だけが経っている。モンスター側もそれ以上の作戦は行わないため王国の人間も忘れかけている。


「けど、過去にモンスター討伐の依頼を受けて向かった冒険者の多くは戦死してる。それなりに強いモンスターがいる可能性は高いはずよ」


 Sランク冒険者の挑戦する場所としては悪くないな。

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