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104話 罠分布推定法

 俺とミーシャはレナの提案する罠分布推定法というのに頼ることにした。


 といっても、やり方はいたって地味だ。まず、神殿の内側から罠の配置に特徴的な部分がないから調べていく。


 まず、ぐるっと、安全なエリアを二周して、廊下のタイルを確認していく。じっとしてても暇なので、俺とミーシャもレナの後ろをついて回った。


 レナは途中、「ふ~む」とか「ほうほう」とか、専門家めいた雰囲気の声を出していた。


「罠の数ですけど、どこもかしこも配置しているんで、過剰に罠があるエリアは見つかりませんね」

「それはミーシャが罠を起動させまくってたから、よくわかる」

 ほぼ全部分にわたって、矢や石が発生していた。でなければ、ミーシャも合間に温泉で休憩するだなんてことはしなかっただろう。いくら、すごいステータスがあっても、あれは気持ちも落ち着かないと思う。


「なので、罠で正解の場所に敵が来るのをとどめようって発想ではないと思います。となると、関係者の移動用に罠が少ない場所がないか調べていく流れになりますね」

「どこもかしこも配置してたってことは、少ない場所もない気がするんだけど」

「いや、相対的に少ない場所もあったんですぜ」


 レナは向かいの廊下側に移動した。

 そこにはたしかに○がけっこう集中している箇所があった。

 廊下は横に三枚のタイルが並んでいる。つまり、タイル三枚先に部屋の入り口や壁があるのだが、レナの前にある三×三の九枚のタイルのうち、罠は矢が飛んできた一か所だけだった。


「ここだけ、罠の密度が低いんですよ。たったの九分の一」

 九分の一でもけっこう嫌な頻度だが、周辺と比べればよほどマシだった。

「しかも、それだけじゃないんです。旦那と私はかなりあっちまで離れますから、姉御は罠のタイルを踏んでもらえますか?」


 ミーシャが言われたとおりに踏むと、矢が俺達とは直接関係ないところに飛んでいった。俺とレナはとことん離れていたせいで無害だった。


「ね? 特徴的でしょ?」

「もっとわかりやすく説明してくれないとわからん」

「姉御が踏んで罠が発動したけど、その罠は姉御のタイルは攻撃しなかったんですよ。それって、関係者が誤って踏んでも自分は傷つかないってことです。つまり、個人で移動する分には、この九枚のタイルはすべて安全ってことです」


 ミーシャがこくこくとうなずいていた。


「安全な空間、たしかに何かありそうね」


「一列だけなら間違ったところを踏んでえらい目に遭うかもしれませんが、三列も安全なら利用者の中でだけで何か目印でも決めておけば安全に利用できると思うんです。なので――この先の壁に何かある可能性はあるんじゃないですかね」


「冒険者の幽霊は壁を通り抜けられると言っていたしね。それとも符合するわ!」

 ミーシャもやる気になってきたらしい。さっきより明らかに声に張りがある。


「そうとわかれば、早速、壁を調べてみましょう!」

 ミーシャは元気に○のついているタイルを踏んで壁を右手でぎゅっと押した。

 壁が、ごく当たり前のようにミーシャを押し返した。


 酔っ払いがもたれかかっているような構図になっている。


「壁があるだけね……」

「見ればわかる」

 ミーシャは近くの壁もぺたぺた触ってみたが、触れているということはその先に通路があるわけじゃないということだ。


「何も起こらないんだけど」

「ですね……」

 レナはちょっと決まり悪そうだ。罠なんたら法が外れたようなものだからだ。


「あのさ、そもそも、ほぼ満遍なく壁を押してきただろ。そこもすでに押してると思うんだけど」

「ご主人様の言うとおりね。正解だけ偶然、スルーしていたというほうが不自然だわ」


 じゃあ、俺達の仮説は失敗だったということだ。仮説というのはそういうものだから、そんなにショックはないが――

「じゃあ、次はどうやって調べていこう……。レナ、ほかに正解を見つける方法ってないか?」


「う~ん。なにせ、高さのある建物ですからね……。もしかしたら、上のほうとかに何か答えがあるのかもしれませんけど……」

 人間の手が届く高さではないんじゃないか説か。それは、説としては納得できるが、調べるの絶望的に難しいな……。


「そんなの、飛行の魔法がないと調べられないわよ……。そういえば、飛行の魔法、覚えてなかったわね。魔道書はそんなに高くないから買えば覚えられるだろうけど」


「その可能性は低いと思うぞ。だって、ラクリ教の関係者が全員空を飛んでたって考えるのに無理があるし、だったら床に罠を配置するの、おかしいだろ。どうせ空飛ばない人間は接近もできないんだから」


「旦那の言うとおりですね……。床に罠があるんだから、床のあたりに何かないとおかしいです……」


 弱ったな。全然打開策が見つからないぞ……。


「はぁ……見つかったと期待した分、疲れちゃったわ……」

 ミーシャは壁際のタイルにぺたんとお尻をつけて座り込んだ。


「あれ? 何か感じるわ……」

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