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103話 階段を探せ

「地底人? 本当かしら……」

 ミーシャはちょっとノリが悪かった。でも、レナは「地底人!? そりゃ大発見ですな!」と食いついてくれたが。


「あれ、もっといい反応を期待してたのに……」

「だって、地底でそんな文明ができるって変じゃない? どうして、わざわざそんなところに住んでたのよ。圧倒的に効率が悪いでしょ」

「それは太陽の光を浴びるのが体に悪いとか……何かあったんだよ……」


「う~ん……素直に納得はできないわね……。こういうダンジョンがあるってことは、いつからか人の手が入ったわけでしょ。とことん遡ると、ただの土の底に人が住んでるわけないから、その人たちがいつからか地上から入っていったことになるわよね。話が出来すぎてるような……」


「きっと二千年前とかに地上から地下に潜った人間達がいるんだよ。ラクリ教っていうのはそういう文明の痕跡なんだ」


 素人学者同士の話だと真相に行き着くのも無理だな。ラクリ教の関係者がいればいいんだけど、陰も形もない。


「どっちにしろ、次の地下36階層へ降りる階段が見つかれば、答えがちょっとはっきりしますぜ。そこが門前町みたいになってたら、旦那の説が補強されますし、そこが土壁のダンジョンならふりだしに戻るってことになりますから」


 レナが中立的な立場で意見を言った。


「考古学っていうのは、掘って出てきたもので、これまでの定説が覆ることが珍しくないからな。たしかに、現物にぶつかるしかないな」

「じゃあ、明日はとことん、隠された階段を探してみようじゃない。それで白黒はっきりつけましょ」


 なぜかミーシャと対決するような流れになっているが、張り合いがないよりはいいかもしれないな。


 翌日からは35階層の小部屋や壁を調べる作業に移った。

 小部屋は場所によっては、たいていはがらんどうで、せいぜいがボロボロのテーブルがあるぐらいだった。あったとしても、ガラクタに分類されるものが放置されているだけとか、そんな有様だ。


「大事なものは上の倉庫に入れたんでしょうね。そもそも、ここは倉庫というより控え室って感じだわ」

「私もそう思います。間取りが寝泊りをすることを前提にしている気がするんです」

 そういう部屋の壁も一つ一つ触って、隠し階段を調べたが、すぐには見つからなかった。


「これ、すべての壁をチェックするって大変だな……」

 意外と時間がかかりそうなので、俺はげんなりした。

 といっても、やらないわけにもいかないので、しらみつぶしにやっていくしかないが。



 そして、全体の半分をチェックしても、階段が見つからなかったあたりで嫌な予感はしていたのだが――フロア全部を調べたはずなのに俺達は階段を見つけられなかった。


「どうする? 二周目プレイに入るか?」

 俺達は脱力して、また吹き抜けになってるフロアの中心部分でごろんと寝転がった。少なくとも、こうやって仰向けになっていると、天井が高いから解放感はある。


「やみくもに探すのは賛成しないわ。もうちょっと何かありそうなところからあたりをつけて探しましょう」

「その何かありそうなところっていうのはあるのか?」

「それを今から探すのよ」


 つまりヒントらしいヒントなんてどこにもないってことだ。これは思ったより煮詰まってきたぞ……。


「レナは何か手がかりは見つかってるか?」

 ここは盗賊に聞いてみるのがいいと思った。


「ここが怪しいってところはまだないですね……。ただ、何かあるのはほぼ確実だと思います。罠をここまで執拗に仕掛けてるってことは、探してほしくないからだとしか考えられませんからね」

 レナの言葉で少し勇気づけられた。


「罠を仕掛ける場所は大きく分けて二つあります。一つは敵を殲滅するために密閉空間に置くケース。たとえば、ミミックがいる宝箱は袋小路にある率が高いんです。そうすれば挟み撃ちにして相手を倒せますからね。ガスだって狭い場所のほうが効くからそういうところに置きます。これは敵を積極的に殺すことが目的のケースです」

 レナが手だけをあげて、ピースみたいな形を作る。二つ目を説明するぞということだ。


「二つ目は相手に来てほしくないから、罠で進行を諦めさせようとするケースです。今回はまさにそうだと思うんですよね。ここまで罠だらけの場所なんて聞いたことがありませんぜ」


「ありがとう。さっきよりはやる気が湧いてきた。休憩が終わったら、それっぽい場所を探していこう」


「ですね。これだけ罠があるなら、罠分布推定法が使えないこともないですね」


「盗賊の専門用語か、それ?」


 まったく聞いたことのない言葉だ。


「言葉のとおりですけどね。こういうのは正解が罠がやけに多いところか、逆に妙に少ないところにあるんです。前者は敵に来られたら困るからだし、後者は関係者が正解にたどりつけないと困るからです。もちろん、その逆をついてなんでもないところに正解を置くこともありますから、絶対とは言えないですがね」


「それでも試さないよりはマシだな」

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