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さて、順調に種の繁栄に取り組んでくれているナメリゴケ達に不満はないのだが、彼等では戦力には勿論ならないし自衛の手段がまだ全くないのだ。次を考える必要がある。
自身の強化か護衛そのものか。そもそもどのぐらい信頼性があるのかだ。
現在、領内に関して曖昧かつ漠然としているが等価交換と質量保存の法則が頭をよぎる。
外部からの存在に対しての適用はさておき領内においては恐らく認識に問題はないと思われる。
意識を巡らせ次手を試みる。
広場の外で領土内にあると感じている大岩とナメリゴケ数匹を代償に創造を行おうとする。
しかしそれでは『足りない』のであろう出所の漠然とした渇望が腹の底から沸き上がってくる。
思わずならばと『それ』を差し出してしまう。
その甲斐があったのだろう。確かに大岩や一部のナメリゴケと共に失われ、形を作っていく。
まだ存分に陽のあたる最中にあっても、別段光輝くでもなく、全身鎧というには等身は低く、剣ではなく石の鈍器を手に納める彼は短い足を曲げて、膝をつき頭を下げて告げる。
「主ノ命ニヨリ参ジマシタ。コノ身賭ケテ主ノ命ヲ守リマショウ。」
『それ』は私にとっても貴重なものだった。
とはいえ、とあるゲームでの話だった。ある一人のプレイヤーと仲良くなる中で忠を誓った時の記憶、想いを代償としたのだ。
支払う前なら惜しさも沸くのであろうが、代償を支払った今はそこに何も感慨はなく、さながら絵本を読んで知っているような他人の経験のようであった。
「あぁ。よろしく頼む。」
石の騎士と呼ぶには小さく不様な『それ』は当時の私以上に私だったのかも知れない。
「ハッ!」
姿勢をそのままに了承をする彼にそう感じる事すら、もはや水に沈んだ石の形を水面の波を見て考える程度の曖昧さであった。
ーーー
名称:騎士
特徴:無機物にて構成された体を持つ。現状は3頭身の石の体であるが、素材の追加で体の構成を変化していく事が可能。
備考:彼の場合、核となっている魂(記憶、命令、想いなど)にそぐわない構成変化は行えない。また創造者の命を守っているのではなく、彼の魂に則り命に従っている。