プロローグ(0ー2)
「さてはて・・・」
後ろ手で玄関を閉じ、広場を見渡す。ぐるっと木々に囲まれており頭上からは陽射しが降り注ぐ。まさに森の広場だ。そしてぐるっと見渡した時に見かけた真後ろの光景に片手で頭を抱える。
「あー・・・洞窟の入り口?」
所謂、洞穴という程立派なものではなく寧ろ動物の巣穴だ。ぐるっと一周して見渡すが4つ足の生き物が潜り込むにはやや大きいか?程度の穴だった。
とはいえ、くぐれば部屋に戻れる事を私は『知っていた』。
とりあえず一旦部屋に戻ってみる。
まず戻って安堵した事は外の「当たり前」はきちんと持ち帰れていると言う点だ。
部屋の中からノートを1冊取り出し、列記出来る情報は列記しておこうと思ったのだ。
しかし何をわかっているのだろう?徐々に常識が混ざり合って違いを意識するのが困難になっていくのが理解出来る。
「これはまずいな・・・。」
このまずさもまた『知っていた』。
毎回の事ながらこの状況になって初めて思い出す事でもある。
人の基本事項でもある忘れるという事と
世界の「当たり前」を決める上での折衝の大枠は既に決まっているという事だ。
胡蝶の夢という話がある。
夢が現実で、現実が夢かもしれないが詰まる所どっちゃでもいい。どちらも真として存分に生きろって奴だ。
それが仮にではなく真であり、
夢で見る事が、人が思い出を語るように印象深い瞬間を切り出す物ならこんな初っぱなの細事は覚えてられなくて当然なのだ。
とはいえこちらもおいそれと折角の優位性を渡す訳にはいかない。
こちらからも積極的に意識をしていく。
例えばだ。
この部屋の事を、部屋に連なっていた世界の事を私はいずれ忘れてしまうかも知れないと危惧してしまった。
それ故に、その事は『忘れうる物』となってしまった。
同時に忘れるということは記憶された物ともなった。
また私はこの世界との折衝に関して
この形を随分前から「当たり前」としている。
その為だろう世界の代弁者や世界のシステムのようなものがあれば話が早いのに・・・と思っても、早いのに残念ながらない。と早期に決定されてしまうのだ。
世界との交渉は続く。