9 カナ視点
時人、アカラギさんとはなれた私はユウトと行動する事になった。
時人のあの言葉…つまり、時人は疑ってる…って事だよね…。
「カナ、行こう。」
「うん!」
何にせよ、こんな状況。
ユウトと一緒に行動できるのはとても頼りになった。
「ユウトは良いよね…」
「何だよ。」
「私の能力は本当に使えないんだもん、選ばれた意味がないよ。」
ユウトは足を止めてこちらを見た。
変わらない、人を逃げずにまっすぐと見てくれる。
「カナの能力が無ければ、」
「カナの能力がなかったら俺は時人を信用できてなかった。」
「ユウト…」
「行こう。」
とても頼もしい、私の友人。
「カナ、止まれ。」
ユウトが突然立ち止まり静かに、と人差し指を立てた。
その目は、恐怖に怯えている。
こんなユウトは見た事がない。
「ユウト、一体…」
私はユウトの見ているほうに目を凝らした。
「ひっ…!!!!!」
遠く、かなり遠くだ。
広がっていた。
赤い、血。
「い、いやっ!!!!!」
私はすぐに目を逸らそうとした。
しかし、目があってしまった。
すごく冷たい目。
私を殺そうとしているのがわかった。
それはきっと、赤い血を広げた人物なのだろう。
遠くからでわからないが返り血がねずみ色のTシャツにベッチョリとついている。
怖くなりユウトの手を握りしめる。
「カナ、逃げよう。」
「うん…逃げよう、はやく、はやく。」
だが目が離せない。
来る!
殺されると構えたが、それは違う方を向き走っていった。
私は麻痺していたかのように圧のかかっていた身体を地面に落とした。
「カナ、大丈夫か!?」
「怖かった…怖かったよ…」
身体が震えている。
あんな人、また会ったら終わりだ、殺される。
でもきっと会う。
私達はきっと殺される運命にあるんだ。
「カナ、大丈夫。」
ユウトが手を握りしめる。
不安は消えないまま私とユウトは待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所につくと深刻そうな顔でアカラギが待っていた。
「カナちゃん、ユウトくん、良かった…!!!!」
「アカラギさん、ただいま…!!」
私は自然と笑顔になる。
しかし一人足りない事に気づく。
「中沢くんは…!!!!」
アカラギは何も言わずに私から目を逸らした。
「何で…!!!!!!」
「俺だって助けたかった、でもあいつ俺と行くのを嫌がって俺を石にしたんだ。能力の効果が解けてすぐ探したけどその時にはもう…!!!!」
アカラギは悔しそうに拳を硬く握りしめた。
仲間の死が、こんなにもはやく来るなんて…。
たしかに話すことは少なかった、それでも仲間だった。
こんなこと、あと何回も起こるのかな。
私はふと、時人との約束を思い出した。
『アカラギが嘘をついてないか確かめて欲しい。』
こんなにも仲間の死を悔やんでいるアカラギ。
私はあまり、嘘をついているようには思えない。
むしろ疑いを始める時人の方が…
時人が、そんなことできるわけ…ないよね。
私はゆっくりと神経を集中させた。
「あ…れ…??」
私が持ってるはずの能力は作動しなかった。