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すぐに入り口から店を出るとすでに何人かが集まっていた。
薄々は勘付いてたがあの何人かの中に裏切り者がいるんじゃないだろうか。
考えたくもない事だけど…。
色々と考えながら曲がり角を曲がりに曲がりようやく追ってきた人をちらすと真正面から女の子が走ってきている事に気づいた。
嘘だろ、女の子にまで殺されるっていうのか…!?
しかし僕は走るのをやめて止まってしまった。
だって…
「あの子も、追いかけられている…?」
何人かが彼女を刃物や鈍器を持って追いかけてる事に気づいた。
「うわっ挟まれた…!!」
彼女はペンを取り出すと剣に変えてみせた。
能力者だ!
そしてその剣を僕の首へと切れるか切れないかくらいに押し当てた。
ん?僕に?
「う、動くな!!!」
ん?
「う、動いたらこいつを殺すぞ…!!」
ん!?
「ええええっ!?!?」
僕は人質にとられた。
「ちょ、ちょっと待ってよ僕は」
「うるさい動くな!」
「…」
こ、こわっ。
でもこんな人質で止まる訳がない。
「止まれ」
時が止まった。
剣を持つ手をどける。
「もどれ」
「あれ…?ってええっ!?」
「僕も能力者だよ、とりあえず逃げよう!!!」
「え、う、うん」
しかし振り向くとさっき僕を追ってきていた人達が走ってきていた。
挟み撃ち。
「ど、どうしよう」
「…あぁもう、持ってこれ。」
渡されたのはペン。
ピンク色のペン。
「気をつけてね。」
しかしペンは突如刀にかわった。
「おおっ!!」
「私が全員蹴散らす。それで頑張って。」
「え?」
女の子は木刀を構えると敵に立ち向かった。
「あ、危な一」
しかし僕の心配をよそに軽々と相手の武器を手元から落とし切りつけていく。
「よし、逃げよう!」
「う、うん…!」
立場が逆に変わったのは確かだ。
しばらく走り、ビルとビルの隙間で休憩をする事にした。
暗い。
「はぁっ、はぁっ…」
流石に息があがる。
少しではあるが食べた後だ、一気に吐き気が襲ってきた。
「あの、剣首にあててごめんなさい…同じ人だなんて知らなくて…」
申し訳なさそうに話しかけてくる。
「いや、全然傷もついてないし大丈夫だよ。それより、今まで一人だったの?」
「昼までは部屋にずっといたけど…。友達に裏切られちゃって。」
少し寂しそうな顔をした。
あぁ、僕と同じだ。
「ねぇ、他にも同じ人がいるんだ、一緒に来ないかな。」
「いいの?」
安堵の表情をすると声が明るくなった。
「うん、僕は時人。高島時人だよ。」
「私は坂道雪。その、よろしく。」
雪がだした手を僕は握った。
その手は暖かく、僕の不安を少しだけど取り除いてくれた気がした。