5
エレベーターは僕たちの気も知らずにどんどんあがってくる。
ゴウンゴウンと音をたてて上がってくるそれは僕たちの気持ちを早まらさせている様に感じる。
僕達はどうやって仲間になればいいのだろうか。
チンッと音がしたと思うとやっとアカラギが切り出した。
「で、どうするの?殺す?」
「こ、殺すの!?」
カナの顔が青ざめる。
当たり前だ。
僕たちは一般人。
人を殺す事も世界を征服できるわけがないんだ。
「あ、赫羅魏さん、他に方法は無いんですか?」
「ないね」
「あるとしたら…ここから階段で下まで逃げて、スタミナ切らして殺されるか、この窓から漫画の主人公みたいに飛び出して潰れたトマトみたいになるかかな。あ、それか」
どうやら僕たちには、あまり良い手段はないみたいだ。
戦うしか、ない。
ピンポーン、とインターホンがなった。
「どうすんだよ!!」
ユウトは壁をたたいた。
彼の能力だろうか、たたいた所が
凍っていた。
…
「ユウトくん、僕に考えがあるんだ。」
それは、あまりに残酷な方法。
「もし、できるならその、侵入者を凍らせるなんてことは…」
「お前本気で言ってんのかよ…!!それじゃあ殺すのと同じじゃねぇか!人を凍らせたら一生溶ける前に死んじまうに決まってんだろ!?」
「うん、でも僕は殺すしか方法がないならせめて血を流さずに終わりたい!!」
「それを俺にやれっていうのか!」
カチャッと玄関の方から音がきこえた。
鍵のあいた音だ。
「くそっ、くる!!」
三人の男女がリビングに入ってきた。
「見つけた。」
ニヤリと笑うと男女三人はパイプを取り出した。
「殺してやる!!」
ユウトはためらいの表情を浮かべている。
きっとまだ、まだ…。
「くそ!やってやる!」
ユウトの伸ばした右手は相手の首をつかんだ。
「ガッ!!!!」
一人の男性はゆうとの手に掴まれると、その手からドンドンと凍って行った。
ピキピキと音をたてながら。
「あ、あぁ…。」
ユウトは目の前に見える凍った何かをみると、崩れ去った。
誰も彼をせめる事なんてできない。
僕達が彼に殺させた。
しかし、そんな僕たちの気持ちをよそに敵はユウトの頭を狙いパイプを構えていた。
…守れない!!!!!!!
「ユッ…止まれ!!!!!!!」
時が、止まった。
その光景にぞっとした。
ユウトがもうパイプに殴られる直前だった。
「あぁ、怖い…。」
怖さに震えている時間はない。
体力が切れる前に終わらせなくては。
簡単だ。
「落とせばいい。」
「戻れ。」
「ユウト!危ない!!」
カナが叫んだ。
「えっ、えっ!?」
咄嗟にユウトが頭をさげる。
「…あれ?いない?」
「うん、落とした。」
みんなの目が僕を見る。
驚いた目。
「だから、ベランダから落としたんだよ。」
なんとなくその唖然とした目を見るのが面白い。
「そんな驚かないでよ、ユウトくんだって人を凍らせたじゃないか。」
「信じられない…。」
カナはぼそりとつぶやいた。
「なんにしろ僕たちは生き延びた、さぁ逃げよう。」
アカラギはこっちを見ずに言った。
下にはつぶれたトマトが二つある。
すぐに人は気づくであろう。
「もう夜だ。お腹も空いたしファストフード店で何か食べよう、あまり人が来ない場所を知っているんだ。」
僕たちはアカラギに誘導されるままマンションを脱出した。
「あぁ…どうすればいいのかな。」
能力者が一人、部屋の中で戸惑っていた。