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「大丈夫?少年。」
あまりに唐突に僕の視界に入ってきたそれが、僕を守った事を理解するのに三十四秒程かかった。
僕を、守った…?
「ほら、ぼーっとしてたら殺されちゃうよ、逃げよう!」
僕の意見も聞かず、その人は僕の手を掴み体力が尽きている僕を無理やり引っ張っていった。
この人は良い人のフリをしているのだろうか。
僕を助けたとでも言うのだろうか。
それとも獲物を横取りされないようにするために助けたのだろうか。
どうせ、この人も僕を殺そうとするんだ。
男性はこちらを向くと、歯をだしてニコリと笑って見せた。
「高島時人くんだよね?今有名の!」
興味しんしんな目でこちらを見てくる。
あまり…嬉しくはない。
「あ、僕の自己紹介がまだだったね、こうゆう時は自分から自己紹介をして物語が進むのが定番なのに…僕はなんていう失態を…」
ペラペラとしゃべるテンションについていけない。
「僕の名は赫羅魏 奏哉、君と同じ能力者さ!とりあえず僕の家のマンションに行こうか、そこに行けば仲間はいるし安全なはずさ!そういえば好きな食べ物は何?僕こう見えて意外と甘党なんだけd「ちょっ、ちょっと待ってください!」
今、この人はなんていったの?
僕の聞き間違いじゃなかったら能力者って…
「そう、僕は君と同じ能力者さ。」
自分でもわからないモヤモヤとそして何処かにあるであろう安心感が少し膨らんだ様に感じた。
アカラギは僕に手を差し伸べると不気味に笑って見せた。
「生き残る気はあるかい?」
マンションにつくと、エレベーターに乗った。
まぁ、当たり前だが。
ようやく訪れる、休息。
足はもう立つ事を拒み、ぱったりと畳まれている。
エレベーターに乗っているこの時間が幸せに感じた。
外の景色を横目に見るとどんどんと上に上がっている事に気づいた。
金持ちなのだろうか、エレベーターを降りる階の選択欄には十五階建てのうちの十四階のボタンが光っている。
「ついたよ」
赫羅魏と書かれた1401号室。
入るとそこには、疲れ切った表情をした人達がいた。
唖然とした。
仲間とは、この人達の事を言っているのだろうか。
一人の少年が僕に近づいてきた。
「くそが…!」
そして僕の胸ぐらをつかんできた。
その目は、怒りに満ちているのがよくわかった。
しかし、僕は何もした覚えがない。
「お前なんで能力を使っているとこなんか動画をあげたんだ!!!!!」
「…え?」
「どうせ金の為にあげたんだろ!?これで俺達がどれだけ死にかけたと思ってんだ!!!!!!」
「ま、待ってよ、僕だって動画なんかとってないし、そんな自分が死ぬような事しない!」
「うるせぇ嘘つきやがって!!!」
「悠斗!!」
横から女の子が強い目で見てきた。
あぁ、この少年は悠斗、というのか。
「その人は本当の事をいってるよ…」
「うるせぇお前だってひどい目にあっただろ!?こいつを庇う必要性なんて何処にあるんだ!」
「悠斗、私の能力忘れたの?」
「っ…!!!」
「茶番はもういいかな?」
アカラギが呑気な声で横から割り込んだ。
茶番…?
「とりあえず、五人とも無事でよかった、察しているとはとは思うが、ここにいるのは全員能力者だ。」
五人と言う言葉にひっかかった。
しかし部屋の隅に一人体育座りをしてうずくまっている子がいる事に気づいた。
「自己紹介でもして、仲を落ち着かせようじゃないか、僕達は命を狙われてる身なんだ、仲間でケンカしてどうする?」
アカラギのいう事は確かにあっていた。
悠斗の手は僕の胸ぐらから離れた。
「はぁ…」
「俺は悠斗、横田悠斗だ。」
「私は田中佳奈だよ、嘘を見抜く能力を使えるの。」
「僕は高島時人、時を止める能力、なんだ。」
みんなの目線が、隅の一人の人間に集まる。
しかしそんなのを無視してぼーっとしている。
顔をあげる気すらないだろう。
するとアカラギはその人の着ているパーカーの帽子部分をつまみ片手で持ち上げてみせた。
脱力状態以上のものである何かのように手足はぶらぶらとしている。
生きているのだろうか。
「まぁ、生きているから安心してね、ほらヒロくん?」
ヒロくんは反応がない、ただの屍のようだ。
「しょうがない子だなぁ、この子の名前は中沢弘樹、触れた物を石に変える能力さ、好きな食べ物は恐らくみかん、そしてクマとかぬいぐるみが好きな十四歳中二の男の子!いやぁ、確かに中二みたいな髪型だね、右目を隠してるのは邪眼があるからかな?それに」
「時人くん、もやっぱり殺されかけたの?すごく疲れてる表情してる。」
アカラギがぺらぺらと中沢くんの話をする中佳奈が話しかけてきた。
佳奈はストレートで長い黒髪だ。
多分悠斗と佳奈は僕の出身の中学校に通っているのだろう、制服が同じだ。
「うん、何度も殺されかけたし、何度も死んでしまおうと思ったよ。」
「そうだよね…私も悠斗がいなかったら今頃死んでた、悠斗はあぁ見えて良いやつなの、どうかさっきの事は許してあげて、私達クラスのみんなに裏切られたから今いろいろと頭のなかが整理できないの。」
やっぱり友達にも殺されかけたのか、と思うと胸が痛くなる。
「でも、私達と同じ人が死んでなくてよかった、このまま、明日まで終わればいいのに…」
「それは無理みたいだね。」
アカラギがようやく中沢の話を終えたのか、僕たちの会話に入った。
「…え?」
「さっきからエレベーターの音が聞こえるんだ、ここは結構高級なマンションなんだけどエレベーターの昇り降りの音が聞こえるのが難点でね、きっとそのエレベーターは僕の階にきて、凶器を構えてこちらにくるんじゃないかなと思うよ?」
「な、なんで…」
まさかもう場所がばれたっていうのか?
「もしかしたら時人くんをここに連れて行く時に見てた人がいるのかもね…」
「チッ…」
悠斗が舌打ちをした。
アカラギは横目で僕を見た。
佳奈は申し訳なさそうに目をそらしている。
あぁ、僕が来たせい…?
「大丈夫、僕達は能力者、だ。共闘と行こうではないか。」
手を左右に大きく広げ、にまりと笑ってみせた。
勝てるのだろうか、僕たちは、勝てるとでもいうのだろうか。