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Run away!  作者: 貴幸
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目が覚めて、びっくりした。


ハルトが目の前にいる。


寝ている。


それはちゃんと息をしていて、ちゃんと生きている。



そうだ、ゲームで殺されたひとは一応入院するんだった。



ん?なんでこんな近くに?

なんとなく恥ずかしくなる。


そんな気持ちを遮るようにカーテンがガラリとあいた。


「カナ…」


開けた本人を見て私は思わず抱きついた。


「ユウト!!!!!!!!」


「えっ!?えっ!?いや、ちょっと!!!えっ!?!?」


「良かった…本当に良かった…」


ユウトが生きている事がこんなにも嬉しい。


「カナ、もういいだろはなれろ!!はなれろ!!!」


「ユウト…本当に良かった…」


「お、おう…」


「みんなは?」


「生きてる、みんな生きてるよ。それよりカナ…そいつ…」


ユウトはハルトの方を指刺した。


「…許してあげて、くれないかな、その…この人も私と同じだから…」


「………それは俺が決める…。」


それだけ言ってユウトは私のベッドを後にした。


「ん…」


ギシッと音がした。

ハルトが起きた。


「ハルトさん!!!!」


思いっきり抱きつく。


「うわああああ!!!!!やめろ!!!!やめてくれ!!!!」


そう言って跳ね除けされた。

き、嫌われている…。

そりゃあ殺したもん…ね…


「ハルトさんらごめんなさい。私はハルトさんの願いを叶える事はできなかった…。」


「…いいよ、生きてるし。それに、生き返らそうとするなんて自分も馬鹿げていた。」


あぁ、何も言えない。


「ありがとう、ございました。」


頭を深く下げた。

涙を流してるのが見えないように。


「何泣いてんだよ…」


髪をくしゃくしゃされる。

急にきて心臓がびくっとする。

そのままベッドに顔をうずめた。


「ハルトさん…その…」


「何。」


「いや…なんでも、ないです。」


なんとなく、ドキドキしている。


「今度、お礼をさせてください。何か、何か…。」


「あー…うん…。」


最悪の時間が終わりを告げた気がした。










目が、覚めた。


「うわーっ!!!僕死んだー!!!!天国!?天国!?」


「違う。」


隣から声が聞こえた。

隣を見ると雪ちゃんがいた。


「うわー!!幽霊ー!!!!」


「騒がしい。」


首にチョップをくらった。

痛い。


「あれ?生きて…」


よく見るとベッドに寝ている事に気づいた。


え、なんで雪ちゃんが隣で寝てるの。


「まさか事後!?」


「聞こえてるよバカ!患者が多いからこうなってるだけだってば!!」


「な、なんだ…じゃなくて僕たち死んだよね!?」


「カナちゃんが…生き返らせてくれた。」


カナが…


力が抜ける。


「生きてる…」


生きてるんだ。


「生きてて、良かった…」


「時人…昨日までの事が夢…だったりしないかな。」


「悪い夢、だったりして。」


不安そうな顔をしている雪を安心させるために笑ってみせる。


「怖かった。」


自然と、口から言葉が出た。


本当に夢で終わって欲しいほどに怖い、怖い出来事だった。


「また、起こったりするのかな。」


「…」


「…」


「大丈夫だよ、僕たちがそう考えなければきっと。」


「そう…だね…。」


雪ちゃんの手が僕の上におかれる。


「あ、ごめん。」


どけようとするその手を握った。


「あの…時人…」


「雪ちゃんに会ったのもゲームがあったから、って思うと悔しいなって。」


「え…?」


手を離した。


「なんてね。」


長い二日間が終わった。


「じゃあ僕はちょっと行く場所があるから。」


「うん。」


「また、今度会おうね。」


「…うん。」


雪ちゃんは静かに微笑んでみせた。




ある一つのカーテンを開けた。


「やぁ。」


アカラギとヒロキがいた。


「アカラギ…」


「大丈夫、僕は今から死にに行くところさ。」


そう言って笑ってみせた。


「それは一番ダメだよ。」


「このまま生きるのは嫌なんだ大人の事情さわかってくれ。」


「わからない!ダメだ!!」


アカラギはニコリと笑うと窓を開けた。


「止まれ!」


……アレ?


時は止まらない。


「能力は全部消えたよ。」


「アカラギ!」


「少しの時間だけど楽しかった、また、何処かで。」


アカラギは身を乗り出すとあっという間に落ちた。


止めようとした僕をヒロキが遮った。


「ヒロキ…」


「ダメだよ」


何かが落ちる音だけが聞こえた。



「くそ…!!!!!」



空を見上げると青く、少しの雲がゆっくりと動いていた。




平和な日常がまた崩れるのは、まだもう少し先の事。







end...




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