20
目が覚めて、びっくりした。
ハルトが目の前にいる。
寝ている。
それはちゃんと息をしていて、ちゃんと生きている。
そうだ、ゲームで殺されたひとは一応入院するんだった。
ん?なんでこんな近くに?
なんとなく恥ずかしくなる。
そんな気持ちを遮るようにカーテンがガラリとあいた。
「カナ…」
開けた本人を見て私は思わず抱きついた。
「ユウト!!!!!!!!」
「えっ!?えっ!?いや、ちょっと!!!えっ!?!?」
「良かった…本当に良かった…」
ユウトが生きている事がこんなにも嬉しい。
「カナ、もういいだろはなれろ!!はなれろ!!!」
「ユウト…本当に良かった…」
「お、おう…」
「みんなは?」
「生きてる、みんな生きてるよ。それよりカナ…そいつ…」
ユウトはハルトの方を指刺した。
「…許してあげて、くれないかな、その…この人も私と同じだから…」
「………それは俺が決める…。」
それだけ言ってユウトは私のベッドを後にした。
「ん…」
ギシッと音がした。
ハルトが起きた。
「ハルトさん!!!!」
思いっきり抱きつく。
「うわああああ!!!!!やめろ!!!!やめてくれ!!!!」
そう言って跳ね除けされた。
き、嫌われている…。
そりゃあ殺したもん…ね…
「ハルトさんらごめんなさい。私はハルトさんの願いを叶える事はできなかった…。」
「…いいよ、生きてるし。それに、生き返らそうとするなんて自分も馬鹿げていた。」
あぁ、何も言えない。
「ありがとう、ございました。」
頭を深く下げた。
涙を流してるのが見えないように。
「何泣いてんだよ…」
髪をくしゃくしゃされる。
急にきて心臓がびくっとする。
そのままベッドに顔をうずめた。
「ハルトさん…その…」
「何。」
「いや…なんでも、ないです。」
なんとなく、ドキドキしている。
「今度、お礼をさせてください。何か、何か…。」
「あー…うん…。」
最悪の時間が終わりを告げた気がした。
目が、覚めた。
「うわーっ!!!僕死んだー!!!!天国!?天国!?」
「違う。」
隣から声が聞こえた。
隣を見ると雪ちゃんがいた。
「うわー!!幽霊ー!!!!」
「騒がしい。」
首にチョップをくらった。
痛い。
「あれ?生きて…」
よく見るとベッドに寝ている事に気づいた。
え、なんで雪ちゃんが隣で寝てるの。
「まさか事後!?」
「聞こえてるよバカ!患者が多いからこうなってるだけだってば!!」
「な、なんだ…じゃなくて僕たち死んだよね!?」
「カナちゃんが…生き返らせてくれた。」
カナが…
力が抜ける。
「生きてる…」
生きてるんだ。
「生きてて、良かった…」
「時人…昨日までの事が夢…だったりしないかな。」
「悪い夢、だったりして。」
不安そうな顔をしている雪を安心させるために笑ってみせる。
「怖かった。」
自然と、口から言葉が出た。
本当に夢で終わって欲しいほどに怖い、怖い出来事だった。
「また、起こったりするのかな。」
「…」
「…」
「大丈夫だよ、僕たちがそう考えなければきっと。」
「そう…だね…。」
雪ちゃんの手が僕の上におかれる。
「あ、ごめん。」
どけようとするその手を握った。
「あの…時人…」
「雪ちゃんに会ったのもゲームがあったから、って思うと悔しいなって。」
「え…?」
手を離した。
「なんてね。」
長い二日間が終わった。
「じゃあ僕はちょっと行く場所があるから。」
「うん。」
「また、今度会おうね。」
「…うん。」
雪ちゃんは静かに微笑んでみせた。
ある一つのカーテンを開けた。
「やぁ。」
アカラギとヒロキがいた。
「アカラギ…」
「大丈夫、僕は今から死にに行くところさ。」
そう言って笑ってみせた。
「それは一番ダメだよ。」
「このまま生きるのは嫌なんだ大人の事情さわかってくれ。」
「わからない!ダメだ!!」
アカラギはニコリと笑うと窓を開けた。
「止まれ!」
……アレ?
時は止まらない。
「能力は全部消えたよ。」
「アカラギ!」
「少しの時間だけど楽しかった、また、何処かで。」
アカラギは身を乗り出すとあっという間に落ちた。
止めようとした僕をヒロキが遮った。
「ヒロキ…」
「ダメだよ」
何かが落ちる音だけが聞こえた。
「くそ…!!!!!」
空を見上げると青く、少しの雲がゆっくりと動いていた。
平和な日常がまた崩れるのは、まだもう少し先の事。
end...