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学校につき、一年四組に入るとみんなの視線が僕に集まる。
その目からは興味や恐怖、怒りを感じた。
なんだか気持ち悪い。
遅刻したことを怒っている…ではなさそうだ。
よく行動を共にしている友人、ユウキが僕に話しかけてくる。
「時人、これ本当なのか?」
動画が再生されると同時に僕は目を疑った。
強盗にカバンを盗まれた時の場所が写っている。
走って強盗を追いかけている僕が、写っている。
そして止まったと思うと、一瞬で画面のハジからハジに移動した。
「…!!!」
これは、恐らく僕が時を止めた瞬間の映像だ。
『この少年は、時を操る能力を持っています。』
『あなたも、欲しくはありませんか?』
『これは、ゲームです。』
『あなたがこの少年を殺せば、能力を手に入れることができます。』
『そして、このように能力を持った者は他に八人います。』
『八つの能力を手にした者には一つ、願いを叶えて差し上げます。』
『これは、ゲームです。』
機械的な声のアナウンスが流れた後、そう言い残しノイズ音が広がった。
ここで動画は終わる。
しばらく放心状態が続いた。
殺す…?
僕は殺されるの?
理由のわからない冷や汗が頬を伝う。
そう、今周りにはたくさんの『人』がいる。
その人達はもしかしたら「時人。」
ユウキが寂しそうな声をだす。
振り向けない。
いつの間にか足もカタカタと震えているのがわかった。
振り向かなきゃ。
「俺達、」
振り向かなきゃ。
「願い事があるんだ。」
「うあああああ!!!!」
叫びながら降り向くと、クラスメイト全員が僕に向けて凶器を構えていた。
ハサミ、カッター、文鎮、回転箒…どれも本気で当てにこれば重症は免れない。
殺される。
「っ…!!!」
襲いかかってくるみんなに向かって僕はとっさに机を蹴り反抗した。
ここから、逃げなきゃ。
すぐ後ろには窓がある。
ここは、二階。
二階から飛び降りたって骨は折れるし運が悪ければ死ぬだろう。
自分の頭から落ちる姿が目に浮かんだ。
「時人、死ね!!!」
思考に浸ってしまった僕の目の前にはユウキのカッターがきていた。
しかし、寸でで止まる。
あぁ、人なんて殺した事もないから勇気がないのか。
こんなにも、手が震えてる。
振り払い、前を向いた。
「僕はまだ、死にたくない。」
窓を開け身体を外に乗り出し僕は
落ちた。
身体の自由が重力に持って行かれ、内臓の上がる妙な浮遊感に襲われる。
しかし地面はすぐに近くにきていて足から着地すると同時に骨がピキリと音をだした。
「アッ…ァァァァッ!!!!!」
「痛いっ…!!!!痛い痛い痛い!!!!!」
上からは追え!と言う声が聞こえる。
下に来るのも時間の問題だろう。
あぁ、逃げなきゃ、逃げなきゃみんなが追ってくる。
歯を食いしばって立ち、足にがんばれ、と念じながら走りだした。
目頭が熱くなる中、ただただ願って走った、
嫌だ、死ぬのなんて嫌だよ。