15
目が覚めた私はこの世の絶望を見た。
目の前には首から上の無い何かが倒れていた。
声も何もでない。
目から出た雫が自然と頬を伝いぽたぽたと落ち始めた。
「わかりきっていた事なのに……」
前が見えなくなるくらいに涙がこぼれる。
時人も雪も動かない。
その近くには殺したであろうそいつもいた。
「何も、できなかった…」
結局事を酷くするだけだった。
ふと一人いない事に気づく。
「アカラギ!アカラギは…!!」
その時何かが動く気配がした。
もしかしたら雪か時人かもしれない。
「時…」
しかし、起きたのは雪でも時人でもなかった。
それから蒸気のような物があがりみるみると傷が治っていく。
完全に治ったかと思うとがばりと起きた。
「いてぇ。」
「ひっ!」
怖い。
そいつは私をただじっと見つめてきた。
「酷いよな。」
「…」
怖い。
恐らくユウトや時人、雪ちゃんを殺したのはこの人だ。
そう思うと自然と今まであった悲劇への怒りと悲しみが言葉に、態度にでた。
「人殺し…!!!!酷い!私達が何をしたって言うの!?ただ選ばれただけで他人の欲望のために殺されて!そんなことだけで……もう何人も、死んだのに…」
嗚咽を吐きながらも言葉がぽつりぽつりとでた。
「俺が殺したのはそいつだけだ。」
ユウトを指した。
「嘘つき!そうだとしても許さない!!」
「本当だっつってんだろ!」
ついその迫力に腰を抜かした。
そうだ、すっかり忘れていた、この人は人を殺したんだ。
はやく逃げなきゃ。
「アカラギを探さなきゃ…」
「待てよ」
ここで止まったら殺される。
私は走って道路に出ようとした。
しかしあと一歩で外に出れるとこまで来たはずなのに手を掴まれ引き戻された。
「いやっ!」
抵抗も何も出来ず口を手で塞がれる。
離れようとしようとしたところで横を何人かが通った。
「くそ!能力者は何処なんだ!」
「アカラギとか言う奴の情報通りならここら辺に長い黒髪の女と灰色の髪の男がいるはずだ!あきらめず探すぞ!」
「あぁ、見つけたらためらわず殺せ!あいつらは殺される運命なんだ!!!」
その会話にゾッとした。
今、私が道路にとびでていたら、公共の場に足を踏み出していたらどうなっていただろう。
想像して腰が抜けた。
「お前、能力者じゃないんだろ?なら殺される理由なんかねーじゃん。」
そう言って口に当てていた手を外してくれた。
助けて、くれた。
無能すぎる自分を殺したい。
「能力者…でした。」
「は?」
「詳しくはわからないけど、能力が使えなくなって、能力者じゃなくなったんです。」
「お前なんで死んでないんだよ」
「知らないです!!…アレ?」
さっきの会話を思い出す。
「なんで、アカラギ…?」
自分の身体から血の気が引いて行くのがわかった。
時人の言葉と、さっき聞いた言葉を思い出す。
「本当に時人と雪ちゃんを殺してないの…!?」
「ああ、殺したのは多分お前といたもう一人の奴だろうな。」
「そんな……」
カララッ…と奥の方で缶のようなものの転がる音が聞こえた。
「逃げるぞ。」
「えっ!?」
「はやくしろ!」
私は言われるがまま名前も知らない殺人鬼と共に逃げ出した。