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いない。
ユウトがなかなか見当たらない。
勘が悪い自分が悔しい。
戸惑っている途中、ユウトの声がまた聞こえた。
「アアアアアア!!!アアアアアア!!!!!!!!」
これ以上、こんな声ききたくない。
「ユウトくん!どこ!?!?どこなの!?!?こっち!?!?」
僕は聞こえた声の方へと急いで走った。
曲がり角を曲がったその先、僕は見たくも無いものを見てしまった。
「っ…!!!!」
床に散らばった、五本の指。
壁に吹き出した後のある血のあと。
そして、地面に転がった、誰かの頭。
声も出ない。
ただ、吐き気が襲ってきたのはわかった。
「うっ…!!」
慌てて口を抑えるも胃から逆流してきたものが口から吐き出される。
「ッハ…ハァッ…ハァッ…!!」
「お前も仲間?」
「え?」
「お前も能力者?」
その手には血で赤く染まりきった手とナイフがあった。
この人がユウトくんを…。
傷一つない。
ユウトくんは僕より能力が使えるハズなのに、なんで無傷なんだ。
「まぁ、殺せばいいや。」
今にも襲って来そうな気迫に僕は能力を使う事を決意した。
「止まギッ!!ガッ!!!!!」
喉に強い衝撃が走る。
数十メートル先にいたハズの男はいつの間にか僕の目の前に来ていていつの間にか手を僕の喉にめり込ませていた。
「ハッ…クハッ…ァアッ…!!」
声が、出ない。
声帯を抑えられてるのだろうか。
喉にいたみが走る。
声をだしたくない。
そのまま僕の喉に手をめり込ませたまま、男は僕を持ち上げた。
「能力出そうとしたし、能力者か。」
「あと、何人かな。」
その顔はこれ以上ないくらい笑顔だ。
そうか、コイツはゲームの勝者になろうとしてるんだ。
酷い、そんな事で殺すなんて。
僕だって人を殺した。
何も、言えないじゃないか。
「時人!!」
喉をつかんでいた手がはなされた。
みると男に剣が刺さっている。
後ろには雪ちゃんがいた。
(雪ちゃん!!!)
声はでない。
しかし男は腹部に刺さった剣を少し顔を歪ませながらも抜くと、剣を下においた。
傷口から蒸気がわき、ドンドン傷がなくなっていく。
あっという間に傷はなくなったかと思うと雪ちゃんの方を見た。
「こっちの方がめんどくさそう。」
床に一旦捨てた剣を手に取り雪ちゃんの方へと歩きはじめた。
雪ちゃんは怯えているのか、動かない。
くそっ、やめろっ、やめろっ!!!
喉がちぎれようとも関係ない。
最後の力を振り絞り一言叫んだ。
「止まれ!!!!!」
全てが、止まった。