11 後半ユウト視点
「キャアアアアア!!!!!!!」
カナの悲鳴が響きわたる。
「カナちゃん!!!」
なんで!?なんで安心して終わる事を許してくれないんだ!!
ユウトがこっちにくるのがわかった。
「おい!!トイレに行ったんじゃねぇのかよ!!!」
「知らない!!それよりカナちゃんを助けに行かなきゃ!!!」
「くそ!!!お前はアカラギをよんでこい!アカラギは噴水のとこにいるはずだ!!!俺はカナを助けに行く!!」
ユウトはそういうと叫び声が聞こえた方に走って行った。
「ユウトくん、カナちゃんをお願い…!!!」
今はユウトに任せるしかない。
「雪ちゃん行こう…って雪ちゃんがいない!?!?」
振り返っても雪ちゃんがいなかった。
慌ててぼーっとしていた頃の記憶を思い出そうとする。
「はっ、そうだ雪ちゃんもトイレに行ったんだ!」
カナちゃんもいると思って安心していたが、これはヤバイかもしれない。
「…いや、今はアカラギさんを呼びに行かなきゃ!」
雪ちゃんはその後僕が助けに行く、すぐに。
噴水の場所についてもアカラギはいなかった。
ユウトの情報が間違えていたのだろうか。
「…見つからないんじゃしょうがない、雪ちゃんを探しに行こう。」
「アアアアア!!!!!ウアアアアアアア!!!!!!」
ユウトの声が聞こえた。
まるで死ぬよりも辛いと言っているかのような叫び。
「ユウトくん!!!!」
いやだ…いやだ…!!
僕はいろんな最悪のパターンを頭に浮かべながらも、叫び声の聞こえた方へ走り出した。
「ユウトくん、カナちゃんをお願い…!!!」
わかってる。
さっきから嫌な事しか頭の中をよぎらない。
考えないようにしてるのに。
「カナッ…!!」
俺はカナを置いて何をかてにして生きて行けばいいんだ。
なんで一人で言ったんだよ、意味わかんねぇ!!!
疲れ切った足はなかなかうまく走ってくれない。
それに一生懸命体は引き返したいと叫んでいる。
さっきからカナの声が聞こえない、一度きりしか聞こえなかった。
なんで、なんで俺はカナを一人にした。
「なんで…!!」
ビルとビルの間。
薄気味悪い。
なんでカナはこんな暗い場所を…。
さっき能力がつかえない、とぼそりと言っていた。
まさか自分なら殺されないとでも思ったのだろうか。
「言って信じてくれるとでも思ったのかよ、バカ…!」
曲がり角を曲がろうとした時、俺はすぐに身をかがめた。
殺気。
強い殺気を感じた。
息を殺しても恐怖で息があがる。
あの時みた、みてしまった殺気と似ている。
恐る恐る覗いたその先にはカナを抱えて立っている男がいた。
俺は思わず考えも無しに身体が動いてしまった。
「てめぇ…!!!!カナをはなせ!!!!!」
カナの表情はわからない、ましてや血を出してるかどうかもわからない。
俺は近づかずに手を前へと出した。
「凍れ…!!!凍れ…!!!!」
カナを持っていない方の男の右半分から氷が生える程に能力が作動した。
男は氷結し、その場で動かなくなる。
「カナ!!」
男からカナを取り返すと気絶しているだけとわかった。
「あぁ…良かった…」
安堵の息がもれる。
冷たい手が俺の左手を掴んだ事に気づくまでは。
「…え?」
恐怖で考える事も、息をする事も動く事もできなくなる。
頭が真っ白だ。
「なん…で…凍らせた…のに…」
「お前、能力者か。」
返事ができない。
「返事しろよ。」
返事ができない。
男は楽しそうにこう言った。
「この上なく楽しそうに笑って。」
「一本目。」
掴まれた左手の指に痛覚を感じた。
瞬間人差し指が何かの刃物によって切られた事に気づいた。
「アアアアア!!!!!ウアアアアアアア!!!!!!」
痛みにこれ以上ないくらいの声がでる。
「二本目。」
「アアアアアア!!!アアアアアア!!!!!!!!」
血が自分の手を伝って腕に流れているのを感じる。
楽しんでる、俺が苦しんでるのを楽しんでる。
いやだ、いやだ、なんで…なんで!!!!
「五本目」
自分の悲鳴がきこえる。
思考がうまく回らない、ただ痛みだけが俺を支配していた。
「次はどこを切ろうか。」
「ユウトくん!!どこ!?!?どこなの!?!?こっち!?!?」
時人の声がかすかに耳に入る。
時人、きちゃダメだって…
「なんだ、もう終わりか。」
つまんない、とでも言っているかのような声をだし俺をビルの壁に叩きつけ指を切りベットリと血がついた刃物を目の前にだした。
「サヨナラ。」
刃物は俺の視線よりも少し下を通過した。