10 一部カナ視点
休み休み、逃げながらも僕はやっと待ち合わせ場所についた。
そこにはカナちゃんとユウトくん、アカラギさんの姿があった。
安心と共に中沢君がいない事に気づく。
「中沢君は…!?」
僕はすぐにかけよる。
しかしアカラギさんが銃を構えこちらにむけた。
「…え?」
銃口と目があわない。
後ろにいる雪ちゃんに向けられている事がわかった。
「時人君、その子誰?」
後ろを見ると雪ちゃんが怯えた目でこちらを見ていた。
「アカラギさん、おろしてください彼女も能力者です。それに敵だったとしても女の子一人です、この子は僕を助けてくれました、優しい子に違いありません。」
僕はせいいっぱい殺されない言い訳をつくる。
正直、雪ちゃんが敵じゃないという根拠はない。
彼女が能力を得て願いを叶えたいと思っていない根拠もない。
「…」
「だよね〜」
アカラギは銃を白衣の中にしまうと笑ってみせた。
「一回こうゆうの、やってみたかっただけ。」
ふぅ、と一息ついた。
「雪ちゃ…」
僕のパーカーの腹あたりの裾を掴んでいる手が震えている。
「大丈夫、僕の仲間。」
その手を握って安心させようと思った。
「ありがと、もう大丈夫。」
自然と握ってはいるが恥ずかしくなり握っている手をはなした。
「…」
「…」
裾ははなさないのだろうか。
「時人。」
カナが不安そうな顔でこちらにきた。
腹部にむず痒い違和感を感じるが平然とした対応をするしかない。
「あ、カナちゃん、その…中沢君は。」
「聞かないで…」
死んだ、ととるのが正解なのだろうか。
「あと私、能力がつかえないみたいなの。」
「…え!?」
能力がつかえない…?
ふと、思い当たる事が頭によぎる。
カナは一度死んだ。
僕の目の前で。
アレはカウントされていたのかもしれない。
「それじゃあ僕が頼んだ事できなかった…のか。」
「うん…でもね、私アカラギは裏切ってないと思う。」
カナは僕の目をまっすぐ見た。
「根拠は。」
「根拠はないに決まってる…でも中沢君が死んだって話した時すごく悔しそうで、悲しそうだった。アレを嘘とは思えないくらいいつもとはアカラギ、違ったの。」
確かにアカラギはいつも笑うか真顔だ。
「それに…私たちはアカラギに救われた。」
「…そう、だよね。」
あの時救われてなかったら僕は今頃生きてなかった。
それはカナ達も同じだ。
「今仲間を疑う余裕なんてあるはずもないのに…カナちゃんありがとう、ごめんねこんなことして。」
「いいの、時人の気持ちわかる。」
カナは優しく微笑んでみせた。
「あ、私トイレいってくる。ユウトとかがどこ言ったか聞いてきたら言っておいて。」
「うん。」
そう言ってカナは僕たちのもとを後にした。
直後ユウトがきた。
「カナが見当たらない。」
カナはエスパーなのだろうか。
「トイレいったよ。」
「あ、そ、そう。」
…
「違う!心配したわけじゃない!!」
ユウトはその場を後にした。
「素直にいえばいいのになぁ。」
なんとなくユウトが可愛く見えた。
「あの…雪ちゃん。」
「え、な、なに!?」
急にふられたせいか肩をビクッとさせてこちらを見た。
「…手。」
「手…?ってああ!!!ご、ごめん!!!!違う!!!!気づかなくてその…!!!」
そういうとすぐに裾から手をはなした。
掴まれていた部分があつく感じるのは気のせい。
「さっきよりリラックスできてるみたいだ、良かった。」
「うん、まぁ…。優しそうな人だなって思った。」
このまま何も起こらなければあと三時間でゲームは終わる。
あと、三時間で。
その三時間がとても長く感じる事がありませんようにと昇る月に祈った。
〜カナ〜
絶対に、いた。
時人と話してる時チラリと見たその先に人影が見えた気がした。
追ってきてる人だとしたらはやく知らせなければならない。
私は暗くて狭いビルとビルの間を歩く。
「はは、ユウト連れてこれば良かったな。」
ここに一人できたのは、私が能力を持ってないかもしれないからだ。
なんらかの事があってきっと能力がきえた。
その理由を探すのも重要だが、私は能力をもっていないと言えば殺されない。
今出くわしても殺されない確率が高いのだ。
「きゃっ」
誰かにぶつかった。
…誰か?
私は睨まれている事に気づいた。
それも限りなく冷たい目で。
恐る恐る見上げたその先には
灰色の髪には似合わない赤く燃え上がるような目がこちらを見下ろしていた。