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Run away!  作者: 貴幸
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「ハァッ、ハァッ、ハァッ…!」



必死に死から逃げようと、棒のようになった足を一生懸命に動かす。

アスファルトの地面は僕に味方をしてくれるはずもなく、足を勢い良く地につけるたび全身に衝撃が走った。

もう、何時間も走って逃げている気がする。

こんな事になるなら、能力なんていらなかった。



「いたぞ!殺せ!!!!」



たくさんの声が、僕を追って来ている。夢中で走っていると、目の前には行き止まりがきていた。



「…っ!!!!」



僕は、走っている。



逃げている。



殺されかけている。



一般人に。






Run away!







それは、今朝の出来事だった。


五月蝿い目覚ましのアラームを止めて起きた僕の手元には、見知らぬ手紙が落ちていた。

真っ白な封筒で高島時人様と書いてある。裏を見たが住所も何も書いてないようだ。

あまり信じ難いが夏だし、開けていた窓から手紙が入ったのだろう。

一応僕宛なのだ、他人宛ではない。

興味を持った僕は、手紙を開いた。



『高島 時人様

あなたは 時を操る 能力を手にいれました。

ゲームに生き残ったあかつきには一つ、願いを叶えさせていただきます。』


「時を…操る能力…?」


正直、信じれない。

能力やらゲームやら、非現実すぎて僕には受け止めれなかった。


「どうせイタズラだろ…」


呆れながらも時計を見ると8時15分。

学校には8時30分までにつかなくてはいけないはずだ。

僕の顔はそれまでの余裕を無くし一気に青ざめてゆく。

手紙の事などすっかり忘れ、僕は布団から飛び起きてリビングへと向かった。



「やばい、遅刻だ、普段遅刻なんて絶対しないのに…!!!」


ご飯を食べる余裕なんてない。

急いでワイシャツ、パーカーを着てズボンを履く。

チャックを閉めながら玄関へたどり着くと靴を履き、僕は外へと繋がるドアノブに手をかけた。


「…あ。」



「いってきます。」



振り向き、誰もいない家に笑顔で告げ、外へとかけだした。


「うう…ギリギリ間に合うかな…」


家から学校は近い。

ギリギリ間に合うだろう。

必死に走っていたら目の前から人が来ている事に気づいた。

寝起きの僕は反射神経が鈍っていたのか避けきれず、そのまま衝突する。


「いっ…!」


これが曲がり角で食パンを加えた女の子とぶつかったのならベタな展開に行くが、現実は甘くない。

僕が余所見をしていて必死に走って来たお兄さんとぶつかるなど、何一つ萌え要素がない。


「ご、ごめんなさっ…ってああああああ!!!!!!」


自分のカバンが手元ない。

さっきぶつかった男性の手元に僕のカバンがうつっていた。

これはまさか盗まれた!?


「ちょっ、待てよ!」


急いで追いかけようとするも、普段走ることがないもやしのような足は僕の言うとおりにはならずすぐに唸りをあげた。


「くそっ!」


「こんな時、追いつけたなら…」



ーそして、僕はさっきの手紙を思い出したー



『あなたは時を操る能力を手にいれました』



もしかして時を操れるなら、時を止める事だってできるのではないだろうか。


「いや、あんなのハッタリ…だろ…」



『時を操る』



どうせ変わらない未来なんだ、失敗したっていいじゃないか。


何か吹っ切れたように、僕の口からは一つの言葉がでた。





「…止まれ。」





一瞬にして、空気が、地球が凍りとどまったような気がした。


そして僕は、現実を見た。


止まっている。


横にいる黒猫も、木から落ちている枯葉も、強盗した男も。


全部、全部止まっている。


カチ、カチ、カチ、カチ、カチ…


無音の世界に僕以外の何かが音を出している。

…時計だ。

針の動く音だけは聞こえるのに、本体は動いていない。


「本当だった…んだ…」


あんな子供騙しな手紙は本当だった。

そう自覚すると何故か、足が震えだした。


人はあまりにも巨大な力を手に入れると、恐怖に震えると聞いた事があったが、今まさにその状態なのかもしれない。

耐えきれず僕は逃避の言葉を震えながら口に出した。


「も、戻れ…」


その言葉で、全てが動きだす。

何事もなかったかのように黒猫は歩き出し、枯葉は地面におち、男は走っていった。

時計を見るとまたいつも通り正確に時を刻んでいた。


「すご……ってああああ!!!!僕のカバン!!!!」


呆気に取られてカバンを返してもらうのを忘れてしまっていた。


ただ、もう一度その言葉を言う勇気はなく、僕は仕方なく授業道具なしで学校に行く事を決めた。


「どうせ行ったって勉強なんてしないし…」


突如手に入った時を操る力。

自分が特別な人間になったのかと思うと自然とドキドキしてきた。

もう学校まで走っても遅刻は確定だ、ゆっくり行って2時間目から授業を受けよう。

不思議と、その日は学校までの道のりがとても遠く感じたのだった。

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